リオンティーズ夜も昼も休めぬ。この件をこのまま耐えるのは
弱さにすぎぬ。まったくの弱さだ。
原因そのもの、いや、その一部でも消えていれば。
姦婦であるあの女だ。売女の王は私の腕から
すっかり逃れ、頭の照準も射程も越え、企みに届かぬ。
だがあの女なら、この手に引き寄せられる。
女が消え、火にくべられたなら、
失った安らぎの半分は戻ってこよう。
誰かいるか。
第一の召使い陛下。
リオンティーズ王子の具合は。
第一の召使い昨夜はよくお休みになりました。
ご病気は去ったものと期待されております。
リオンティーズあの子の高貴さを見よ。
母の不名誉を察すると、たちまち衰え、うなだれ、
深く胸に刻み、その恥を自分のうちに固く結びつけ、
元気も、食欲も、眠りも捨て、
すっかり弱ってしまった。
一人にしてくれ。行って様子を見よ。
リオンティーズいや、いや、
あの男のことは考えるな。
あちらへ復讐しようとすれば、その思いは私へ跳ね返る。
あの男自身が強大すぎるうえ、味方も同盟国もいる。
時が来るまで放っておけ。
今すぐの復讐は、女に下そう。
カミロとポリクシニーズは私を笑い、
私の悲しみを慰みものにしている。
手が届くなら笑わせはしない。そしてこの手の内にいる
あの女にも、笑わせはせぬ。
第一の貴族入ってはなりません。
ポーライナいいえ、善き皆様、むしろ私を助けてください。
王妃の命より、あの方の暴君じみた激情を
恐れるのですか。王妃は慈悲深く無実な魂、
王が嫉妬深いよりも、さらに罪から遠い方です。
アンティゴナスもうよい。
第二の召使い奥方様、陛下は今夜お休みにならず、
誰も近づけるなと命じられました。
ポーライナそう熱くならないで、あなた。
私は王を眠らせに来たのです。影のようにそばを這い、
王が理由もなく身を震わせるたびにため息をつく、
あなたたちのような者こそ、王を眠らせぬ原因を
育てている。
私は薬と同じく効き、真実と同じく確かで、
どちらにも劣らず正直な言葉を携えてきました。
王を眠りから締め出す悪い体液を、流し去るために。
リオンティーズそこにいるのは誰だ。何の騒ぎだ。
ポーライナ騒ぎではありません、陛下。
ある産後の祝いについて、陛下に必要なお話をするだけです。
リオンティーズ何だと。
その厚かましい女を追い出せ。アンティゴナス、
この女を私に近づけるなと命じたはずだ。
来ると思っていたぞ。
アンティゴナスそう申しました、陛下。
陛下のお怒りと私の身にかけて、
お目通りしてはならぬと。
リオンティーズ何だ、妻一人を抑えられぬのか。
ポーライナ不正なことなら、夫はすべて私を抑えられます。
けれどこの件では、陛下と同じやり方を取り、
名誉を守った罪で私を投獄でもしないかぎり、
誓って、夫に抑えさせはしません。
アンティゴナスほら、お聞きのとおりです。
この女が手綱を取るときは、私は走るに任せます。
ですが、つまずく女ではありません。
ポーライナ慈悲深い陛下、参上いたしました。
どうかお聞きください。
私は陛下の忠実な臣下、医師、
最も従順な助言者だと申し上げます。
しかも陛下の味方らしく見える者たちほど、
陛下の悪を慰めて味方を装おうとはしません。
申し上げます。善き王妃から参りました。
リオンティーズ善き王妃だと。
ポーライナ善き王妃です、陛下。
善き王妃、と申しました。
私が男なら、陛下のそばで最も卑しい男を相手に、
決闘でその善を証してみせます。
リオンティーズ力ずくで追い出せ。
ポーライナ目など失っても惜しくない者が、最初に私へ手を掛けなさい。
私は自分から出ていきます。
ですが、まず使いを果たしましょう。善き王妃は、
善き方ですから、陛下に王女をお産みになりました。
このお子です。陛下の祝福を求めておられます。
リオンティーズ出ていけ。
男勝りの魔女め。女を戸外へ追い出せ。
裏事情に通じすぎた、とんでもない取り持ち婆だ。
ポーライナ違います。
そのようなことについて私は何も知りません。
陛下が私をそう呼ぶことに何の根拠もないのと同じです。
そして私は、陛下が狂っているのに劣らず正直です。
今の世で正直者として通るには、それで十分でしょう。
リオンティーズ反逆者ども。
なぜ女を押し出さぬ。あの私生児を持たせろ。
老いぼれめ。そなたは女に疲れ果て、
めん鶏婆に止まり木から追われたのだ。
私生児を抱き上げろ。抱けと言っている。そなたの婆に渡せ。
ポーライナ王が無理やり着せた卑しい汚名を受け入れて
王女を抱き上げるなら、
あなたの手は永久に
敬われることがありませんように。
リオンティーズこいつは妻を恐れている。
ポーライナ陛下にも妻を恐れていただきたい。
そうすれば、お子たちをご自分の子と呼ぶことを疑わずに済みましょう。
リオンティーズ反逆者の巣だ。
アンティゴナスこの明るい光にかけて、私は違います。
ポーライナ私もです。ここに反逆者はただ一人、
陛下ご自身です。
陛下は、ご自分と王妃、将来ある王子、赤ん坊の
神聖な名誉を中傷へ売り渡している。
中傷の針は剣より鋭いのです。
しかも陛下は、その思い込みの根を一本たりとも抜こうとしない。
今のありさまでは、そうするよう強いられないのが
呪わしいことです。その根は、樫や石が堅いのとは逆に、
腐りきっているというのに。
リオンティーズ際限なく舌を振るう売女め。
つい先ほど夫を打ち負かし、今度は私に食らいつく。
この餓鬼は私の子ではない。
ポリクシニーズの種だ。
これを連れていけ。母親と一緒に
火へ投げ込め。
ポーライナ陛下のお子です。
古い諺を陛下にも当てはめてよいなら、
あまりに似ているので、かえって不運なほど。
ご覧ください、皆様。刷りは小さくとも、
中身はすべて父親の写しです。
目、鼻、唇、
眉をしかめる癖、額、いえ、顎と頬の谷、
かわいらしいえくぼ、笑顔、
手、爪、指の形と作りそのものまで。
善き女神、自然よ。種を与えた父親にこれほど似せたのなら、
心の形もおまえが定めるのならば、
あらゆる色のなかで黄色だけは混ぜないで。
父親のように、自分の子を夫の子ではないと
疑う女にならぬように。
リオンティーズ下品な鬼婆め。
この役立たず、女の舌を止めぬそなたは
首を吊られて当然だ。
アンティゴナスそれができぬ夫を
みな吊るされるなら、
陛下の臣下はほとんど一人も残りますまい。
リオンティーズもう一度言う。女を連れていけ。
ポーライナこの上なく卑しく、情に背く主君にできることは、
それくらいでしょう。
リオンティーズそなたを焼き殺してやる。
ポーライナ構いません。
火を起こす者こそ異端者、
焼かれる者ではありません。
陛下を暴君とは呼びますまい。
ですが、ご自身の蝶番の緩んだ妄想のほかに
何の告発も示せぬまま、王妃に加えるこの残酷な仕打ちは、
いささか暴政の匂いがします。
陛下の名を卑しくし、世界の物笑いにするでしょう。
リオンティーズ忠誠にかけて命じる。女を部屋から出せ。
私が暴君なら、女の命は今どこにある。
私が暴君だと知っていれば、そう呼ぶ勇気もなかろう。
女を連れていけ。
ポーライナどうか押さないで。自分で出ていきます。
陛下、赤ん坊をお守りください。陛下のお子です。
大神がこの子に、もっと賢い導きの魂を授けますように。
なぜ何本もの手が必要です。
王の愚行にこれほど優しく気を配るあなたがたは、誰一人、王のためになりません。
さあ、さあ。ごきげんよう。もう参ります。
リオンティーズ反逆者め、そなたが妻をけしかけたのだ。
私の子だと。そんなものは捨てろ。
これにそこまで優しい心を寄せるそなたが連れていき、
ただちに火で焼き尽くせ。
そなただ。そなた以外の誰にもさせぬ。
すぐ抱き上げろ。
一時間以内に、実行したという確かな証言を持ち帰れ。
さもなければ、そなたの命と、そなたが自分のものと呼ぶ
すべてを奪う。
拒み、私の怒りと戦うつもりなら、そう言え。
私自身のこの手で、私生児の脳を叩き出してやる。
さあ、火へ運べ。そなたが妻をけしかけたのだからな。
アンティゴナスけしかけてはおりません、陛下。
この高貴な同輩の皆様が望まれるなら、
私の潔白を証してくださいます。
貴族たち証します、陛下。
この女が参上したことに、アンティゴナスの罪はありません。
リオンティーズおまえたちは皆、嘘つきだ。
第一の貴族陛下、どうかもう少しわれらを信じてください。
われらは常に忠実にお仕えしてきました。
そのようにお認めくださるようお願いします。
これまでと、これからの大切な奉仕への報いとして、
われらは膝をつき、このお考えを変えてくださるよう願います。
あまりに恐ろしく血なまぐさいこの企ては、
必ず忌まわしい結末へつながります。全員で跪きます。
リオンティーズ私は吹く風ごとに飛ばされる羽根なのか。
この私生児が跪き、私を父と呼ぶ姿を生きて見るのか。
そのとき呪うより、今焼くほうがよい。
だが、よい。生かしておけ。
いや、それもならぬ。そこの男、こちらへ来い。
あの私生児を救うため、産婆のマーガリー奥方に
かいがいしく優しさを尽くしたそなた。
これは私生児だ。
この顎髭が灰色なのと同じく確かだ。
この餓鬼の命を救うため、どこまで危険を冒す。
アンティゴナス私の力で耐えられ、高潔さが命じることなら、
何でもいたします、陛下。少なくとも、
残りわずかな血を質に入れ、
無実の子を救いましょう。
できることなら何でも。
リオンティーズできることだ。この剣にかけて、
私の命令を果たすと誓え。
アンティゴナス誓います、陛下。
リオンティーズよく聞いて、実行せよ。どの一点でもしくじれば、
そなた自身ばかりか、舌の淫らな妻も死ぬことになる。
今回は妻を許してやる。
わが臣下として命じる。
この女の私生児をここから連れ出し、
わが領土を遠く離れた、人里のない場所へ運べ。
そこで慈悲を一切かけず、その身を己の守りと
土地の気候の好意だけに委ね、置き去りにせよ。
奇妙な運命によってわれらのもとへ来た子だ。
ゆえに正義として命じる。魂を危険にさらし、
肉体を責め苦に遭わせたくなければ、
奇妙な土地へ子を委ね、偶然に育てられるか、
命を絶たれるかさせよ。
抱き上げろ。
アンティゴナス今ここで死なせるほうが慈悲深いと思いますが、
命令を果たすと誓います。さあ、哀れな赤ん坊よ。
力ある精霊が鳶と鴉を教え、
おまえの乳母にしてくれますように。
狼や熊も野性を捨て、同じ慈悲の務めを
果たしたことがあるという。陛下、
この行いが求める以上に栄えられますように。
そして、失われるよう宣告された哀れな子よ、
祝福がおまえの側に立ち、この残酷さと戦いますように。
リオンティーズいや、他人の子を
私が育てるものか。
召使い陛下、神託へ遣わされた方々からの
早馬が一時間前に参りました。
クレオミニーズとディオンは
デルフォイから無事に戻り、
上陸して、宮廷へ急いでおります。
第一の貴族陛下、この速さは
考えられぬほどでございます。
リオンティーズ留守にしたのは二十三日。
見事な速さだ。偉大なアポロが、
ただちにこの真実を現そうとしている兆しだ。
貴族たち、用意せよ。
法廷を召集し、最も不実な王妃を裁判にかける。
公然と告発されたからには、公正で開かれた裁きを
受けさせよう。あの女が生きるかぎり、
私の心は重荷となる。
皆、下がれ。
私の命令を心に留めよ。
