タイタスお聞きください、尊き父老たち。気高き護民官たち、待ってください。
この老いを憐れんで。若い日々を
あなたがたが安らかに眠る間、危険な戦で費やした老いを。
ローマの大いなる戦いで流した、わが血のすべてに免じて。
凍える夜を、いく晩も見張り続けたことに免じて。
そして今、あなたがたの目に見える、この苦い涙に免じて。
老いた頬の皺を、涙が満たしている。
死を宣告された息子たちへ、どうか憐れみを。
思われているように、魂まで腐ってはいない。
二十二人の息子のため、わたしは一度も泣かなかった。
あの者たちは、名誉の高い床で死んだからだ。
タイタスこの二人のため、この二人のため、護民官たちよ、土の上へ記す。
わが心の深い苦しみと、魂の悲しい涙を。
わが涙よ、乾いた大地の渇きを止めてくれ。
息子たちの甘い血を飲めば、大地も恥じ、赤らむだろう。
ああ大地よ、この二つの老いた壺から滴る雨で、
若い四月が、すべての驟雨で潤すよりも、
もっと豊かに、おまえの友となろう。
夏の日照りにも、絶えずおまえへ涙を落とす。
冬には温かな涙で雪を溶かし、
おまえの顔に、永遠の春を保ってやる。
だから愛しい息子たちの血だけは、飲むのを拒んでくれ。
タイタスああ、尊き護民官たち。ああ、心優しき老人たち。
息子たちの縄を解き、死の判決を覆してください。
これまで泣いたことのなかったわたしに、言わせてください。
今こそ、この涙が人を動かす雄弁家なのだと。
ルーシアスああ、気高き父上、嘆いてもむだです。
護民官たちは聞いていない。ここには誰もいない。
父上は石へ向かい、悲しみを数え上げているのです。
タイタスああ、ルーシアス、兄弟たちのため、嘆願させてくれ。
尊き護民官たちよ、もう一度お願いいたします。
ルーシアス慈悲深き父上、話を聞く護民官はひとりもいません。
タイタスいや、かまわぬ。聞こえたところで、
わたしの言葉には耳を貸さぬ。耳を貸しても、
わたしを憐れみはせぬ。それでも嘆願せねばならない。
あの者たちには、何の役にも立たなくとも。
だから、この悲しみを石へ話すのだ。
石は、わが苦しみに答えられぬが、
それでも、ある意味では護民官よりましだ。
わたしの話を遮りはしないから。
わたしが泣けば、足もとで慎ましく
涙を受け止め、ともに泣くように見える。
これが厳かな喪服さえまとっていたなら、
ローマは、これほどの護民官をほかに持てまい。
石は蝋のように柔らかい。護民官は石より固い。
石は黙し、誰も害さぬ。
護民官は舌で、人を死へ定める。
タイタスだが、なぜ剣を抜いたまま、そこに立っている。
ルーシアス二人の兄弟を、死から救い出そうとしました。
その企てのため、裁判官はわたしへ
永久追放の判決を下しました。
タイタスああ、幸せな男だ。あの者たちは、おまえを助けてくれた。
愚かなルーシアス、なぜわからぬ。
ローマは、虎ばかりが住む荒野なのだ。
虎は獲物を求め、ローマが差し出す獲物は、
わたしと一族だけ。ならば、おまえはなんと幸せだ。
この貪る獣どもから、追放されたのだから。
だが、弟マーカスと一緒に来るのは誰だ。
マーカスタイタス、老いた目に、泣く覚悟をさせよ。
泣けぬなら、気高き心に、砕ける覚悟を。
あなたの老いへ、身を焼き尽くす悲しみを連れてきた。
タイタスわたしを焼き尽くすのか。ならば見せてくれ。
マーカスこれは、あなたの娘だった人だ。
タイタス何を言う、マーカス。今も娘だ。
ルーシアスああ、この姿が、わたしを殺す。
タイタス臆病な息子よ、立て。あの子を見よ。
話してくれ、ラヴィニア。どんな呪われた手が、
父の目の前で、おまえから手を奪った。
どんな愚か者が、海へ水を足したのだ。
燃え盛るトロイへ、薪を持ち込んだのだ。
おまえが来る前から、わが悲しみは頂へ達していた。
今やナイルのように、堤を侮って溢れている。
剣をくれ。わたしも両手を切り落とす。
この手はローマのため戦った。すべてむだだった。
命を養い、この悲しみを育ててきた。
むなしい祈りのため、天へ掲げられ、
何の実りもない用事へ、わたしを仕えさせた。
いま、この手に求める働きは、ただひとつ。
片方が、もう片方を切る手助けをすることだ。
ラヴィニア、おまえに手がないのは幸いだ。
ローマへ仕える手など、何の役にも立たぬ。
ルーシアス話してくれ、優しい妹よ。誰がおまえを責め殺した。
マーカスああ、思いを運ぶ、あの喜ばしい仕掛け。
心地よい雄弁で、思いを語り続けたものが、
あの愛らしい小さな籠から、引き裂かれた。
美しい声の鳥のように、そこで歌い、
甘く多彩な音で、聞く耳すべてを魅了した舌が。
ルーシアスああ、あの子に代わって話してください。誰の仕業です。
マーカスああ、公園をさまよっていた、この姿のまま見つけた。
身を隠す場所を求めていた。まるで
二度と治らぬ傷を受けた鹿のように。
タイタスわたしの雌鹿だった。あの子を傷つけた者は、
わたしを殺すより、ひどく傷つけた。
いまのわたしは、岩の上に立つ男。
まわりは果てしない海に囲まれ、
満ちる潮が、波ごとに育つのを見ながら、
いつ妬み深い大波が、塩辛い腹へ
自分を呑み込むかと、待ち続ける男だ。
哀れな息子たちは、こちらの道から死へ行った。
ここにはもう一人の息子、追放された男が立つ。
そして弟が、わが苦しみに泣いている。
だが、この魂を最も激しく蹴りつけるのは、
愛しいラヴィニア、魂より愛しい娘だ。
この姿を絵で見ただけでも、
わたしは狂っていただろう。生きた体がこうなった今、
わたしは、いったいどうすればよい。
おまえには、涙を拭う手がない。
誰に責め苦を受けたか、告げる舌もない。
夫は死んだ。その死のため、
兄たちは死刑を宣告され、今ごろはもう死んでいる。
見よ、マーカス。ああ、息子ルーシアス、あの子を見よ。
兄たちの名を口にしたとき、新しい涙が
頬へ浮かんだ。摘み取られ、萎れかけた百合に
甘い露が結ぶように。
マーカス兄たちが夫を殺したから、泣いているのかもしれぬ。
兄たちが無実だと知っているからかもしれぬ。
タイタス兄たちが夫を殺したのなら、喜びなさい。
法が、あの者たちへ復讐したのだから。
違う、違う。あの者たちは、そんな卑劣なことをしない。
妹が示す、この悲しみが証人だ。
優しいラヴィニア、その唇へ口づけさせてくれ。
それとも、どうすれば楽にできるか、何か合図を。
優しい叔父と、兄ルーシアスと、
おまえと、わたしで、泉を囲んで座ろうか。
皆で下を向き、自分たちの頬が
洪水のあと、まだ乾かぬ草地のように、
泥のぬかるみで汚れるのを見ようか。
その泉を、いつまでも見つめ続け、
清らかな水から、新鮮な味が消え、
苦い涙の塩水溜まりになるまで。
それとも、おまえのように、われらも手を切り落とすか。
舌を噛み切り、無言の身振りだけで、
憎むべき残りの日々を過ごそうか。
何をすればよい。舌のあるわれらは、
もっと深い苦しみを、何か企てよう。
後の世の人々まで、われらに驚くほどの苦しみを。
ルーシアス愛しい父上、涙を止めてください。その嘆きに、
哀れな妹が、どれほどすすり泣いているかをご覧ください。
マーカス耐えてくれ、愛しい姪よ。善きタイタス、涙を拭いて。
タイタスああ、マーカス、マーカス。弟よ、よくわかっている。
おまえの布では、わが涙を一滴も吸えぬ。
哀れなおまえが、自分の涙で水浸しにしたからだ。
ルーシアスああ、わがラヴィニア、わたしがおまえの頬を拭おう。
タイタス見よ、マーカス、見よ。娘の合図がわかる。
話す舌があれば、いま兄へ、
わたしがおまえへ言ったことを言うのだろう。
兄の布も、真実の涙にすっかり濡れ、
悲しむ頬の役には立たない、と。
ああ、なんという苦しみの共鳴だ。
救いからは、天国から遠いリンボほど隔たっている。
エアロンタイタス・アンドロニカス、皇帝陛下から
あなたへ言葉を預かってきた。息子を愛しているなら、
マーカス、ルーシアス、老いたタイタス自身、
あるいは、あなたがたの誰でもよい。片手を切り落とし、
皇帝へ送れ。その手と引き換えに、
二人の息子を、生きたままここへ返すとのことだ。
それを、二人の罪の身代金とする。
タイタスああ、慈悲深き皇帝。ああ、心優しきエアロン。
鴉が、これほど雲雀に似た声で歌ったことがあるか。
日が昇るという、甘い知らせを運ぶ雲雀に。
心のすべてを込め、皇帝へ
わが手を送ろう。
善きエアロン、切り落とすのを手伝ってくれるか。
ルーシアスお待ちください、父上。数多の敵を
打ち倒した、その気高き手を、
送ってはなりません。わたしの手で役目は足ります。
若いわたしなら、父上より血を失っても耐えられる。
だから、わたしの手が兄たちの命を救います。
マーカスあなたがたの、どちらの手がローマを守らなかった。
血に染まる戦斧を、高く掲げ、
敵の城へ、破滅の文字を書かなかった。
ああ、どの手も大いなる功績を持っている。
わたしの手だけは、何もせずにいた。この手を使おう。
二人の甥を、死から買い戻すために。
そうすれば、価値ある最後のため、手を残してきたことになる。
エアロンさあ、誰の手を持っていくか決めるのだ。
赦しが届く前に、二人が死んではならぬから。
マーカスわたしの手を持っていけ。
ルーシアス天にかけて、そうはさせぬ。
タイタス二人とも、もう争うな。こうして萎れた草こそ、
引き抜くにふさわしい。だから、わたしの手だ。
ルーシアス愛しい父上、わたしを息子と思ってくださるなら、
この手で、二人の兄を死から買い戻させてください。
マーカス父上のため、母上の慈しみのため、
いまこそ兄として、おまえへの愛を示させてくれ。
タイタス二人で決めよ。わたしは手を残しておこう。
ルーシアスでは斧を取ってきます。
マーカス斧を使うのは、わたしだ。
タイタスこちらへ来い、エアロン。二人とも騙してやろう。
そなたの手を貸せ。代わりに、わたしの手をやる。
エアロン(傍白。)それを騙すと言うのなら、わたしは正直者になろう。
生きているかぎり、二度とこんなふうに人を騙すまい。
だが、おまえは別のやり方で騙してやる。
半刻も経たぬうちに、おまえ自身がそう言うだろう。
タイタスもう争いをやめよ。なるべきことは、済んだ。
善きエアロン、わが手を陛下へ渡してくれ。
千の危険から陛下を守った手だと伝え、
葬ってくださるよう願ってくれ。
それだけの値打ちはある。その報いを受けさせてほしい。
息子たちについては、安い代価で買った
宝石のように大切に思っていると伝えてくれ。
だが、自分のものを買い戻したのだから、やはり高くついた。
エアロン行ってこよう、アンドロニカス。その手と引き換えに、
まもなく息子たちが、そなたのもとへ来ると思え。
エアロン首だけがな。ああ、この悪事は、
考えるだけで、わたしをまるまる太らせる。
愚か者には善行をさせ、美しい者には慈悲を乞わせておけ。
エアロンは、顔と同じく黒い魂を持つのだ。
タイタスああ、残ったこの片手を天へ掲げ、
この弱り果てた残骸を、大地へかがめよう。
哀れな涙を憐れむ力が、どこかにあるなら、
その力へ呼びかける。
タイタスどうした、おまえも一緒にひざまずくか。
そうしよう、愛しい子よ。天はわれらの祈りを聞くだろう。
さもなくば、ため息で大空を曇らせ、
霧で太陽を汚してやろう。雲がときおり、
溶ける胸へ太陽を抱きしめるときのように。
マーカスああ、兄上、起こりうることを話してください。
これほど深い極端へ、踏み抜いてはならない。
タイタスわが悲しみは、底がないほど深いのではないか。
ならば、この激情にも底などなくてよい。
マーカスそれでも理性に、嘆きを治めさせてください。
タイタスこの惨めさに理由があるなら、
悲しみを境の内へ縛ることもできよう。
天が泣けば、大地は溢れぬか。
風が荒れれば、海は狂い、
膨れ上がる顔で大空を脅さぬか。
それでも、この騒乱に理由を求めるのか。
わたしは海だ。聞け、あの子のため息が吹いている。
あの子は泣く大空、わたしは大地。
ならば、わが海は、あの子のため息に揺れねばならぬ。
わが大地は、あの子の絶え間ない涙で
洪水となり、溢れ、沈まねばならぬ。
なぜなら、この腹には、あの子の苦しみを隠せない。
酔いどれのように、吐き出さずにはいられないからだ。
だから許してくれ。失った者には、
苦い舌で腹の中を軽くする権利がある。
使者尊きアンドロニカス、皇帝へ送った善き手に、
なんとひどい報いが返されたことでしょう。
ここに、気高き二人の息子の首があります。
そして、あなたを嘲るため送り返された、その手も。
あなたの悲しみは奴らの遊び、決意は嘲笑われた。
あなたの苦しみを思うと、わたしには悲しくてならない。
父の死を思い出すときより、なお深く。
マーカスいまこそ、熱きエトナよ、シチリアで冷えよ。
わが心を、永遠に燃える地獄とせよ。
この苦しみは、耐えられる限度を越えた。
泣く者とともに泣けば、いくらかは楽になる。
だが悲しみまで嘲られるのは、二重の死だ。
ルーシアスああ、この光景が、これほど深い傷を作りながら、
忌まわしい命は、なぜ身を縮めて消えぬ。
命には息をする以外、何の権利も残っていないのに、
なぜ死は、命にその名を名乗らせ続ける。
マーカスああ、哀れな心よ。その口づけには慰めがない。
飢えた蛇へ与える、凍った水ほどにも。
タイタスこの恐ろしい眠りは、いつ終わるのだ。
マーカスもう自己欺瞞へ別れを告げよ。死ぬのだ、アンドロニカス。
眠ってなどいない。見よ、二人の息子の首を。
戦い抜いた手を。切り刻まれた娘を。
もう一人の追放された息子は、この愛しい光景に
血の気を失い、青ざめている。弟のわたしは、
石の像のように、冷たく感覚を失っている。
ああ、もう兄上の悲しみを止めはしない。
銀の髪を引きむしれ。残った手を
歯で噛みちぎれ。この陰惨な光景で、
われらの惨めな目を、最後に閉じてしまおう。
いまこそ嵐となるときだ。なぜ黙っている。
タイタスはっ、はっ、はっ。
マーカスなぜ笑う。この時に、笑いは似合わない。
タイタスもう流す涙が、一滴もないからだ。
それに、この悲しみは敵となり、
涙に濡れた目を奪い取り、
貢ぎの涙で、目を見えなくしようとしている。
それでは、どうやって復讐の洞窟を見つける。
この二つの首が、わたしへ語り、
こう脅しているように思えるのだ。
この悪事のすべてを、犯した者たちの
喉へそのまま返すまで、至福には来られぬぞ、と。
さあ、なすべき仕事を見定めよう。
重い悲しみを負う者たちよ、わたしを囲め。
ひとりずつ、皆の方へ向き、
魂に誓って、おまえたちの不正を正すために。
誓いは立てた。さあ弟よ、首をひとつ持て。
もうひとつは、この手にわたしが抱えよう。
ラヴィニア、おまえにも仕事がある。その腕で。
愛しい娘よ、わが手を歯の間にくわえて運べ。
おまえは、息子よ、わたしの前から去れ。
追放された身だ。ここに留まってはならぬ。
ゴート人のもとへ急ぎ、そこで軍を起こせ。
わたしを愛しているなら、そうだと信じているが、
口づけをして別れよう。なすべきことが多い。
ルーシアスさらば、アンドロニカス、気高き父上。
ローマに生きた、誰よりも悲しみに満ちた人。
さらば、高慢なローマ。ルーシアスが戻るまで、
命より愛しい人々を、ここへ人質として残してゆく。
さらば、ラヴィニア、気高き妹よ。
ああ、以前のおまえのままであったなら。
だが今、ルーシアスもラヴィニアも、生きてはいない。
忘却と、憎むべき悲しみの中にいるだけだ。
ルーシアスが生きれば、おまえたちの不正へ報いる。
高慢なサターナイナスと皇后を、
タルクィニウスとその王妃のように、門前で乞わせてやる。
いま、ゴート人のもとへ行き、軍勢を起こす。
ローマとサターナイナスへ復讐するために。
