グロスターどうだ、従兄弟どの、おまえは震えて、顔色を変え、
言葉の途中で息を殺し、
また言いかけては、また止まる、そんな芸当ができるか、
恐怖で取り乱し、気も狂わんばかりの男のようにな?
バッキンガムお安いご用、悲劇役者の名優ぶりを真似てご覧に入れましょう。
喋りながら振り返り、四方八方に目を配り、
藁しべ一本の揺れにも、びくりと震えて跳び上がる、
深い疑心暗鬼の体でね。亡霊でも見たような顔つきなら、
作り笑いと同様、いつでも取り揃えてございます。
どちらも持ち場について、いつ何時でも、
わたしの計略に箔をつける手はずです。
ときに、ケイツビーは行きましたか?
グロスター行った。それ見ろ、市長を連れて戻ってきた。
バッキンガム市長どの——
グロスターそこの跳ね橋に気をつけろ!
バッキンガム聞こえるか! 太鼓の音だ。
グロスターケイツビー、城壁の外を見張れ。
バッキンガム市長どの、お呼びしたわけは——
グロスターうしろを見ろ、防げ、敵だ!
バッキンガム神とわれらの潔白が、われらを守り給わんことを!
グロスター落ち着け、味方だ。ラトクリフとラヴェルだ。
ラヴェルこれなるは、卑劣な裏切り者の首、
疑いもかけられなかった危険人物、ヘイスティングズの首でございます。
グロスター心から愛していた男だ、涙を流さずにはいられん。
この地上に息をするキリスト者の中で、
一番裏表のない、無害な人間だと思っていた。
わたしの帳面代わりにして、魂の秘密の思いの数々を、
残らず書き込んで預けていたほどだ。
美徳の見せかけで、じつに滑らかに悪徳を塗り隠すものだから、
誰の目にも明らかな、あの罪ひとつを別にすれば——
つまり、ショアの女房との付き合いのことだが——
疑いの汚点ひとつ受けずに生きてきたのだ。
バッキンガムまったく、あの男は、この世に生きたかぎりで
一番うまく隠れおおせた裏切り者でした。
想像がつきますか、いや、信じられますか——
天のご加護もあらたかに、われらが生き延びて
こうしてお話ししているのでなければ——あの腹黒い裏切り者が、
今日という今日、評議の席で、わたしとグロスター公を
殺す企てを巡らせていたなどとは?
市長なんと、あの男がそのようなことを?
グロスター何です、われらをトルコ人か異教徒とお思いか?
法の手続きに背いてまで、
こうも性急に悪党の死を執り行うと?
事態の危険が極まって、
イングランドの平和と、われら自身の身の安全のために、
やむにやまれず処刑に踏み切ったのでなければ、ですぞ?
市長これはご無事で何より! あの男は死んで当然。
ご両所とも、じつにご立派なご処置でした、
不忠の裏切り者どもへの、何よりの見せしめです。
わたしも、あの男にはろくな期待をしておりませんでした、
ショア夫人と関わり合いになってからというもの。
グロスターとはいえ、本来は、市長どのが処刑の場に
お立ち会いになるまで、死なせぬつもりでいたのです。
それを、ここにいる友人たちが、忠義の一心から先走り、
われらの意向に、いささか反してしまった。
と申すのも、市長どの、あなたに聞いていただきたかったのです、
あの裏切り者が自分の口から、怯えながら、
謀反の手口と狙いを白状するところを。
そうすればあなたから、その旨を市民たちに
よくよく伝えていただけたはずですからな。市民たちは事によると、
われらの処置を誤解して、あの男の死を悼みかねません。
市長なんの、閣下、あなた様のお言葉があれば、
この目で見、この耳で白状を聞いたも同然。
ご案じなさいますな、気高いご両所とも、
忠義なわが市民たちには、この一件の
正当なご処置の一部始終、わたしから申し聞かせますので。
グロスターそのためにこそ、ご足労願ったのです、
口さがない世間の非難を避けるためにな。
バッキンガムとはいえ、われらの当初のもくろみには間に合わなかったのですから、
せめて、お聞きになったとおり、われらの意図だけでもご証言を。
それでは市長どの、ごきげんよう。
グロスター追え、追うのだ、従兄弟のバッキンガム。
市長は大急ぎでギルドホールへ向かう。
あちらで、頃合いを一番よく見計らって、
エドワードの子供たちは私生児だと吹き込め。
連中に話してやれ、エドワードが市民をひとり死刑にした話を。
罪状はただ、自分の息子を「王冠」の世継ぎにすると
言っただけのこと。実際は、王冠の看板を出していたので
そう呼ばれていた自分の家のことだったのだがな。
その上で、あの男の憎むべき漁色をあげつらえ、
相手構わず取り替える、獣じみた情欲をな。
その毒牙は市民たちの召使いにも、娘にも、女房にも及んだ、
好色の目と野蛮な心が、見境もなく
獲物と狙いを定めた先なら、どこへでも、とな。
いや、必要とあらば、わたしの身辺まで踏み込んでかまわん。
言ってやれ——母上があの飽くことを知らぬエドワードを
身ごもっていたころ、わたしの気高い父君ヨークは
フランスで戦の最中だった。
日数を正しく数え合わせてみて、
父はその子が自分の胤でないと悟った。
それは顔立ちにもはっきり現れていた、
気高い父上とは、似ても似つかなかったのだからな。
だがこの件は控えめに、遠回しに触れるだけにしろ。
知ってのとおり、母上はまだ存命だからな。
バッキンガムお任せあれ、閣下。雄弁家を演じてご覧に入れましょう、
この弁論で勝ち取る黄金の報酬が、
わたし自身のものであるかのようにね。では閣下、ごめん。
グロスター首尾よくいったら、連中をベイナード城へ連れて来い。
わたしはそこで、恭しい神父たちや学識豊かな主教たちに
囲まれているのが、見られるだろうよ。
バッキンガム参ります。三時か四時ごろには、
ギルドホールの首尾の報せをお待ちください。
グロスター行け、ラヴェル、大急ぎでショー博士のところへ。
グロスターおまえはペンカー修道士のところだ。ふたりとも、
一時間のうちにベイナード城でわたしに会うよう伝えろ。
グロスターさて、わたしは中へ入って、内々の指図をしておこう、
クラレンスの小倅どもを人目から遠ざける手配と、
それから、どんな人間もいっさい、
あの王子たちに近づけるなというお達しをな。
