魔女一ぶちの猫が、三度啼いた。
魔女二針鼠が、三度と一度、泣きよった。
魔女三ハーピアが叫んでる——「時が来た、時が来た」。
魔女一釜のまわりをぐるぐる回れ、
毒のはらわた、投げ込め。
冷たい石の下で、
三十一の昼と夜、
眠って毒気を煮詰めた蟇よ、
おまえが最初に茹だるのだ、まじないの鍋で。
三人倍に、倍にと、苦労も苦難も。
火よ燃えろ、釜よ煮え立て。
魔女二沼の蛇の切り身をひとつ、
釜の中で茹でて焼け。
井守の目玉に、蛙の指、
蝙蝠の毛に、犬の舌、
まむしの二叉舌に、盲蛇の針、
とかげの足に、梟の羽根、
強い災いのまじないに、
地獄の出汁で煮え立て、泡立て。
三人倍に、倍にと、苦労も苦難も。
火よ燃えろ、釜よ煮え立て。
魔女三竜のうろこに、狼の牙、
魔女のミイラに、貪り食らう
塩海の鮫の、胃袋と喉、
闇夜に掘った毒人参の根、
神を罵るユダヤ人の肝、
山羊の胆汁に、月食の夜に
削ぎ取ったいちいの小枝、
トルコ人の鼻に、タタール人の唇、
どぶで女郎が産み落として、
産声のまま絞められた赤子の指——
これで粥をどろりと煮詰めろ。
仕上げに虎のはらわたを加え、
われらが釜の材料に。
三人倍に、倍にと、苦労も苦難も。
火よ燃えろ、釜よ煮え立て。
魔女二狒々の血で冷ませば、
まじないは固まって、出来上がり。
ヘカテおお、よくやった。その骨折り、褒めてやろう。
儲けはみなで分けるがよい。
さあ、釜を囲んで歌うのだ、
妖精、小妖精の輪になって、
投げ込んだものすべてに、魔法をかけよ。
魔女二親指がちくちく疼くのは、
何か悪いものが、こちらへ来るしるし。
開け、錠前、
叩くのが誰であろうと。
マクベスどうした、人目を忍ぶ、黒い、真夜中の鬼婆ども。
何をしている。
三人名前のない仕業さ。
マクベスおまえたちに命じる、おまえたちの奉じるその術にかけて——
どうやって知るのかは知らんが——俺に答えろ。
たとえ、おまえたちが風どもを解き放ち、
教会に戦を仕掛けさせようとも。泡立つ波が、
船という船を打ち砕き、呑み込もうとも。
穂の出た麦が倒れ伏し、木々が吹き倒されようとも。
城が番人の頭の上に崩れ落ちようとも。
宮殿もピラミッドも、頭を土台まで
傾けようとも。自然の種子という宝が、
残らずごちゃ混ぜに転げ落ち、
破壊そのものが吐き気を催すまでになろうとも——答えろ、
俺の問うことに。
魔女一言え。
魔女二訊け。
魔女三答えてやろう。
魔女一言いな。われらの口から聞きたいか、
それとも、われらの主人たちの口からか。
マクベス呼べ。会わせてもらおう。
魔女一注ぎ込め、九匹のわが子を食らった
牝豚の血。人殺しの絞首台から
滴り落ちた脂を、
炎へ投げろ。
三人来たれ、高きも低きも。
その姿と役目を、鮮やかに示せ。
マクベス教えてくれ、名も知らぬ力よ——
魔女一おまえの心は、あちらがご存じ。
お言葉を聞くだけにして、口をきくな。
第一の幻影マクベス。マクベス。マクベス。マクダフに気をつけろ。
ファイフの領主に気をつけろ。もう帰してくれ。充分だ。
マクベス何者かは知らんが、良い忠告に、礼を言う。
俺の恐れの琴線を、見事に言い当てた。だが、もうひと言——
魔女一あの方は、命令を受けつけない。ほら、次のが来る、
最初のよりも、力の強いのが。
第二の幻影マクベス。マクベス。マクベス。
マクベス耳が三つあれば、三つで聞くものを。
第二の幻影血にまみれろ、大胆に、不敵になれ。人間の力など、
あざ笑ってやれ。女から生まれた者に、
マクベスを傷つけられる者はいないのだから。
マクベスなら生きていろ、マクダフ。おまえなど恐れるまでもない。
だが、念には念を入れて、
運命から証文を取っておこう。おまえには死んでもらう。
そうすれば、青ざめた心臓の恐怖に「嘘をつくな」と言ってやれる、
雷が鳴ろうと、眠っていられるのだ。
マクベスこれは何だ、
王の子のように立ち昇り、
その幼子の額に、王権の
丸い冠を戴いているのは。
三人聞くだけにして、話しかけるな。
第三の幻影獅子の心を持て、誇り高くあれ。気に病むな、
誰が苛立とうと、誰が怒ろうと、謀反人がどこにいようと。
マクベスは決して敗れはしない、
大いなるバーナムの森が、高きダンシネインの丘へ、
攻め上って来ない限りは。
マクベスそんなことは、決して起こらん。
誰に森を徴兵できる。誰が木に命じて、
大地に縛られた根を引き抜かせられる。甘い予言だ。上等だ。
謀反の首よ、バーナムの森が立ち上がるまで、
決して立ち上がるな。そうすれば、高みに座すこのマクベスは、
天寿の借用期限を生き抜いて、時と、死すべき定めの習わしに、
息を返すだけのことよ。だが、この胸が、
ただひとつ知りたくて疼いている。教えろ、おまえたちの術に
それだけの力があるのなら——バンクォーの子孫が、いつの日か、
この王国に君臨するのか。
三人それ以上、知ろうとするな。
マクベスどうしても聞かせてもらうぞ。これを拒んでみろ、
永遠の呪いがおまえたちに落ちるがいい。教えろ。
なぜ釜が沈んでいく。この楽の音は何だ。
魔女一見せよ。
魔女二見せよ。
魔女三見せよ。
三人あの男の目に見せて、心を嘆かせろ。
影のように来て、影のように去れ。
マクベスおまえはバンクォーの霊に似すぎている。消え失せろ。
その王冠が、俺の眼球を焼く。それにおまえの髪も——
金の輪をはめた、二人目の額よ——最初のやつと同じだ。
三人目も、前のやつらと同じ。汚らわしい鬼婆ども。
なぜこんなものを俺に見せる。四人目だと! 飛び出せ、目玉。
何だ、この血筋は、最後の審判の轟きまで続くつもりか。
まだ来るのか。七人目だ。もう見んぞ。
それでも八人目が現れる。手にした鏡には、
さらに大勢の王が映っている。中には、
二重の宝珠と、三重の王笏を持つ者まで見える。
恐ろしい眺めだ。ああ、これで分かった、本当なのだ。
血で髪を固めたバンクォーが、俺に笑いかけて、
あれらはわが子孫と、指さしているのだから。
マクベス何だと、これはまことか。
魔女一ああ、旦那、みんなまことさ。だが、なぜ
マクベスは、そんなに呆けて突っ立っている。
おいで、姉妹たち、この方の気分を晴らして、
われらのとっておきの楽しみをお見せしよう。
わたしが大気に呪文をかけて、音を出させるから、
おまえたちは、おどけた輪舞を踊っておくれ。
この偉い王様が、優しくこう言ってくださるように——
われらの務めが、ちゃんと歓迎の礼を尽くした、とね。
マクベスどこへ行った。消えたのか。この忌まわしい時間よ、
暦の上で、永遠に呪われてあれ。
入って来い、外の者。
レノックス御用でございますか。
マクベス運命の姉妹たちを見たか。
レノックスいいえ、陛下。
マクベスおまえのそばを通らなかったか。
レノックス確かに、通っておりません、陛下。
マクベスあいつらの乗って行く大気は、腐ってしまえ。
あいつらを信じる者は、みな地獄へ堕ちろ。——馬の駆ける音を
聞いたが、誰か来たのか。
レノックス二、三人の者が、お知らせに参りました。
マクダフがイングランドへ逃れましてございます。
マクベスイングランドへ逃げただと。
レノックスはい、陛下。
マクベス時よ、おまえは俺の恐ろしい仕事の先回りをする。
逃げ足の速い企ては、行いが伴わなければ、
決して追いつけないのだ。今この瞬間からは、
心に生まれた最初のものを、そのまま
この手の最初の仕事にしてやる。今この場でも、
思いに行いの冠をかぶせるのだ。思ったら、やってしまえ——
マクダフの城を急襲する。
ファイフを奪い取る。剣の刃にかけてやるのだ、
やつの妻を、子供らを、やつの血筋に連なる
不運な魂を残らず。阿呆のような大口は叩かん。
この決意が冷めぬうちに、この仕事はやってのける。
だが、幻影はもうたくさんだ。——その知らせの者たちはどこにいる。
さあ、そこへ案内しろ。
