魔女一どこへ行ってたんだい、姉さん。
魔女二豚を殺してた。
魔女三姉さん、あんたは。
魔女一船乗りの女房が、膝に栗をのっけてさ、
もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ食べてた。「おくれよ」とあたしが言うと、
「失せろ、魔女め」と、尻の肥えた瘡っかき女め、吠えやがった。
亭主はアレッポへ行ってる、タイガー号の船長さ。
だから、あたしは篩に乗って、あそこまで舟出して、
尻尾のない鼠になって、
やってやる、やってやる、やってやるのさ。
魔女二あたしは風をひとつあげよう。
魔女一やさしいねえ。
魔女三あたしももうひとつ。
魔女一残りの風は、みんなあたしのもの。
風の吹きつける港も、
船乗りの海図に載ってる方角という方角も、
残らずあたしの手の内さ。
干し草みたいに、干からびさせてやる。
夜も昼も、眠りひとつ、
あの男の庇のまぶたに掛からせない。
呪われ者として生きるがいい。
九の九倍の七日七晩、
やつれて、しなびて、細っていくがいい。
船は沈められないけれど、
嵐で揉みくちゃにしてやるさ。
ほら、ごらんよ、これ。
魔女二見せて、見せて。
魔女一水先案内の親指さ、
国へ帰る途中で難破したやつのだよ。
魔女三太鼓だよ、太鼓だよ。
マクベスのお出ましだ。
三人運命の姉妹は、手に手を取って、
海と陸との早飛脚、
くるりくるりと回っていくよ。
あんたに三度、あたしに三度、
もう三度足して、九つに。
静かに。まじないが、巻き上がった。
マクベスこれほど穢くて、きれいな日は見たことがない。
バンクォーフォレスまでは、あとどれほどだ。——おや、あれは何だ、
あんなに干からびて、あんな奇怪ななりをして。
この地上の住人には見えんが、
それでいて地上にいる。生き物か。それとも、
人が口をきいてよい相手なのか。言葉は通じるらしいな、
三人が三人とも、ひび割れた指を、
その痩せた唇に当てたところを見ると。女のようだが、
その髭のせいで、そうとも
言い切れん。
マクベス口がきけるなら、申せ。何者だ。
魔女一万歳、マクベス。万歳、グラームズの領主様。
魔女二万歳、マクベス。万歳、コーダーの領主様。
魔女三万歳、マクベス。やがて王となられるお方。
バンクォーどうされた、なぜ飛び上がる。これほど良い響きの言葉を、
恐れているように見えるが。——真実の名において問うぞ、
おまえたちは幻か、それとも、見かけどおりの
実体か。わが気高い相役には、
今ある誉れへの挨拶に加えて、
高い身分と王への望みの大予言まで並べ立て、
本人はすっかり心を奪われた様子。だが、俺には何も言わんのだな。
時の種子の中を覗き込んで、
どの粒が育ち、どの粒が育たぬか言えるのなら、
この俺にも言ってみろ。おまえたちの引き立ても、憎しみも、
乞いもせねば、恐れもせん男だ。
魔女一万歳。
魔女二万歳。
魔女三万歳。
魔女一マクベスより小さくて、そのくせ大きい。
魔女二マクベスほど幸せでなくて、そのくせずっと幸せだ。
魔女三あんたは王を生む、あんた自身は王でないのに。
だから、万歳、マクベスとバンクォー。
魔女一バンクォーとマクベス、万歳。
マクベス待て、その言い残しの多い口で、もっと聞かせろ。
シネルの死で、俺がグラームズの領主なのは分かっている。
だが、コーダーとはどういうことだ。コーダーの領主は生きているぞ、
羽振りのよい殿方としてな。それに、王になるなどとは、
コーダーになる話にも増して、
信じられる筋書きの外だ。言え、どこから
この奇怪な知らせを仕入れて来た。なぜ、
この吹きさらしの荒野で、そんな預言者めいた挨拶で、
われらの道を塞ぐのだ。申せ、命じるぞ。
バンクォー大地にも泡があるのだな、水と同じように。
あれはその泡だったのだ。どこへ消え失せた。
マクベス大気の中へ。体と見えたものが、溶けてしまった、
風に消える息のように。残っていてくれたらな。
バンクォー今語り合っているようなものが、本当にここにいたのか。
それとも、われらは、理性を虜にするという
あの狂い草の根でも食ったのか。
マクベスおまえの子供たちは、王になるそうだ。
バンクォーおまえ自身が王になるそうだ。
マクベスそれに、コーダーの領主にもな。そう言わなかったか。
バンクォーその節、その文句のとおりだ。——おや、誰か来るぞ。
ロスマクベス殿、王はあなたの勝利の知らせを、
喜んでお受け取りになった。そして、謀反人との戦での
あなた御自身の働きをお知りになると、
驚きと称賛が競い合って、
どちらをあなたに向け、どちらをご自分に留めるか、決めかねるご様子。
その言葉も出ぬまま、同じ日の残りの戦況を見ていかれると、
今度は、頑強なノルウェー勢のただ中にあなたを見出された——
ご自身の作り出した、死のむごたらしい絵姿の数々を、
少しも恐れぬあなたの姿をな。雹の降るように、
使いの者が次から次へと駆けつけて、そのひとりひとりが、
この王国を守り抜いたあなたへの称賛を担いで来ては、
王の御前に注ぎ落として行った。
アンガスわれらが遣わされたのは、
わが君に代わって、あなたに礼を伝えるため。
御前へご案内する先触れの役でしてな、
褒賞をお渡しする役ではござらん。
ロスそして、より大きな栄誉の手付けとして、
王よりの言いつけだ。あなたを、コーダーの領主と呼べ、と。
この新しい称号とともに、万歳、誰より立派な領主どの。
この称号は、あなたのものだ。
バンクォー何と。悪魔もまことを言うことがあるのか。
マクベスコーダーの領主は生きている。なぜ私に、
借り物の衣装を着せるのです。
アンガス領主だった男なら、まだ生きております。
だが、失って当然の命を、
重い裁きの下で長らえているだけのこと。ノルウェー勢と
結んでいたのか、人目を忍ぶ助けと便宜で
謀反人に裏打ちをしていたのか、それともその両方で、
祖国の破滅に精を出していたのか、私は存じません。
だが、死罪に当たる大逆は、本人が白状し、証拠も挙がって、
あの男は倒れたのです。
マクベス(傍白。)グラームズ、そしてコーダーの領主。
一番大きいものが、後に控えている。
マクベスご苦労をおかけした。
マクベスおまえの子供たちが王になる望みが出てきたとは思わんか。
俺にコーダーの領主をくれた者たちが、
おまえの子らには、それに劣らぬものを約束したのだからな。
バンクォーその言葉を鵜呑みにすれば、
コーダーの領主どころか、王冠までも
欲しくなりかねんぞ。だが、奇妙なことだ。
われらを破滅に釣り込むために、
闇の手先どもは、よくまことを言う。
正直なつまらぬ景品で心をつかんでおいて、
一番深いところで裏切るのだ。——
ご両所、少しお話が。
マクベス(傍白。)ふたつのまことが語られた。
帝王の主題へ膨れ上がっていく芝居の、
めでたい前口上として。——ご両所、かたじけない。
マクベスこの人知を超えたそそのかしは、
悪いものではありえん。良いものでもありえん。悪いものなら、
なぜ、まことから始めて、
成功の手付けをくれたのだ。俺は現にコーダーの領主だ。
良いものなら、なぜ俺は、あのささやきに屈している——
あの恐ろしい絵姿を思い浮かべるだけで、髪は逆立ち、
据わっているはずの心臓が、あばら骨を叩くのだ、
生まれつきの習いに逆らって。目の前にある恐怖など、
恐ろしい想像に比べれば、ものの数ではない。
俺の想い——人殺しなど、まだただの空想にすぎんのに——
それが、俺というひとつの国をこれほど揺さぶって、
働きという働きは憶測に窒息し、
ありもしないもののほかは、
何もなくなってしまった。
バンクォー見ろ、われらの相役は、心を奪われておるぞ。
マクベス(傍白。)運が俺を王にしたいのなら、そうか、運が勝手に冠をかぶせてくれよう、
俺が動かずともな。
バンクォー新しい栄誉というものは、あの男には、
着慣れぬ衣装と同じで、体に馴染まんのだ、
着込んでいくうちにしか。
マクベス(傍白。)来るなら来るがいい。
時と時刻は、どれほど荒れた日でも駆け抜けていく。
バンクォーマクベス殿、お支度を待っておりますぞ。
マクベスご容赦を。この鈍い頭が、
忘れごとをほじくり返しておりました。ご両所、その骨折りは、
帳面に記しておきます、毎日ページをめくって
読み返す帳面にな。さあ、王のもとへ参ろう。
マクベス今日起きたことを、考えておいてくれ。時を置いて、
そのあいだに互いに量ってから、
腹を割って話し合おう。
バンクォー喜んで。
マクベスそれまでは、この話はここまでだ。——さあ、ご一同。
