ガーディナー一時だな、少年、そうではないか?
少年今、鐘が打ちました。
ガーディナーこの時刻は、必要な用に当てるもの、
楽しみのためではない。心地よい眠りで
身体を立て直す時であり、われわれが
浪費する時ではない。遅くまでご苦労、トマス卿!
どちらへ、この夜更けに?
ラヴェル猊下は王のもとから来られたのですか?
ガーディナーそうだ、トマス卿。サフォーク公と
プリメロ札をしているところを辞してきた。
ラヴェル私も王のもとへ参らねば、
お休みになる前に。それでは失礼を。
ガーディナーまだだ、トマス・ラヴェル卿。何があった?
急いでいるようだな。重大な差し障りが
ないのなら、近ごろの用向きを少しだけでも
友に触れさせてくれ。真夜中に歩く用事には、
精霊もそうすると言うが、
昼間に片づけようとする仕事より
荒々しい性質が宿るものだ。
ラヴェル猊下、私はあなたをお慕いしています。
この用事よりはるかに重い秘密でも、
そのお耳へ委ねる勇気がある。王妃が産気づき、
ひどい難産だそうです。お産とともに
命も終わるのではと案じられています。
ガーディナーお腹に宿した果実のためなら、
心から祈ろう。よい時に生まれ、
生き延びるように。だが幹のほうは、トマス卿、
今こそ根こそぎにされればよい。
ラヴェル私もつい、
アーメンと言いそうです。それでも良心は告げる、
あの方は善い人、愛らしい貴婦人で、
もっと善い願いを受けるに値すると。
ガーディナーだが、待て、待て、
聞いてくれ、トマス卿。そなたは
私と同じ道を歩む紳士。賢く、信仰深いと知っている。
だから言おう、決して事はよくならぬ、
ならぬのだ、トマス・ラヴェル卿、私を信じよ、
クランマー、クロムウェル、王妃の両の手たる二人と王妃が、
墓に眠るまでは。
ラヴェル猊下が挙げた二人は、
今、王国で最も注目される者たちです。クロムウェルは、
宝物庫長官に加え、記録長官、
王の秘書官にも任じられた。さらに、
もっと多くの昇進が通る道に立ち、
時がそれを次々と背負わせるでしょう。大主教は
王の手であり舌。誰があの方に逆らって
一音でも口にできます?
ガーディナーできるとも、トマス卿、
あえて言う者はいる。私自身も危険を冒し、
あの男への考えを述べた。実は今日、
そなたには話してよかろう、枢密院の諸侯に
強く訴えたつもりだ。あの男は、
私がそうと知り、諸侯もそうと知るとおり、
異端の首魁、この国を感染させる
疫病そのものだと。動かされた諸侯は
王へこの件を持ち出した。王も
われらの訴えに耳を傾けてくださった。深い御慈悲と
君主としての配慮から、われらの論拠が示した
恐ろしい災いを見越され、
明朝、枢密院の席へ
あの男を召喚せよと命じられた。トマス卿、あれは生い茂った雑草、
根こそぎにせねばならぬ。そなたの用事を
長く妨げすぎたな。お休み、トマス卿。
ラヴェルどうぞよい夜を、猊下。私は変わらぬ僕です。
ヘンリー王チャールズ、今夜はもう札をせぬ。
心がここにない。そなたは手強すぎる。
サフォーク陛下、これまで一度も勝たせていただけませんでした。
ヘンリー王ほんのわずかだ、チャールズ。
私が札へ心を向けた時には、もう勝てまい。
さてラヴェル、王妃の様子は?
ラヴェル陛下から仰せつかった言葉を、王妃へ
直接お伝えできませんでしたが、侍女を通じて
御伝言を届けました。王妃はこの上なく謙虚に
感謝を返され、陛下に
心から祈っていただきたいと望まれました。
ヘンリー王何だと、もう一度言え?
祈ってほしい? 何だ、声を上げて苦しんでいるのか?
ラヴェル侍女はそう申しました。耐え忍んでおられますが、
陣痛の一つ一つが、ほとんど死ぬほどだと。
ヘンリー王ああ、可哀想に!
サフォーク神が王妃を無事に重荷から解き、
穏やかなお産によって、陛下を
世継ぎの誕生でお喜ばせくださいますように!
ヘンリー王もう真夜中だ、チャールズ。
どうか床へ。祈りの中で、
哀れな王妃の容体を覚えていてくれ。私を一人に。
連れがいては親しめぬ思いに、
向き合わねばならぬ。
サフォーク陛下に
安らかな夜を。善き王妃様を
祈りの中で覚えておきます。
ヘンリー王チャールズ、お休み。
ヘンリー王さて、その先はどうした?
デニー陛下、お命じのとおり、
大主教猊下をお連れしました。
ヘンリー王ほう! カンタベリーを?
デニーはい、陛下。
ヘンリー王そうだったな。どこにいる、デニー?
デニー陛下のお召しをお待ちです。
ヘンリー王ここへ通せ。
ラヴェル(傍白。)先ほど主教が話していた件だ。
運よくここへ来合わせた。
ヘンリー王廊下から人を下がらせよ。
ヘンリー王おい! 命じたはずだ。下がれ。
何をしている!
クランマー(傍白。)恐ろしい。なぜ、あれほど眉を曇らせておられる?
あれは恐怖を与える御顔。何かよくないことがある。
ヘンリー王どうした、大主教! 私がなぜ
そなたを呼んだか、知りたいのだろう。
クランマー(ひざまずく。)陛下の御心に
従うのが、私の務めです。
ヘンリー王どうか立ってくれ、
善良で慈悲深きカンタベリー卿。
さあ、私と二人で少し歩こう。
知らせたいことがある。さあ、さあ、手を貸してくれ。
ああ、善き大主教、これを語るのは心が痛む、
これから続くことを繰り返すのが、まことに辛い。
私は近ごろ、まったく不本意ながら、
そなたについて多くの重い、そう言うぞ、大主教、
重い訴えを耳にした。それを考慮し、
私と枢密院は、今朝、そなたを
われらの前へ出頭させることにした。その場では、分かっているが、
自由に身の潔白を証すことはできまい。
だが、答弁を要する告発について
さらに審理が進むまで、辛抱を身につけ、
よくよく納得して、そなたの館を
わがロンドン塔とせねばならぬ。そなたはわれらと同じ顧問官、
こう進めるのが適切だ。さもなければ、そなたに逆らう証人は
一人も出てこないだろう。
クランマー(ひざまずく。)謹んで陛下に感謝します。
そして、このよい機会を得たことを、心から喜びます。
私を隅々まで篩にかけ、籾殻と
穀粒を吹き分けられます。なぜなら、分かっています、
哀れな私ほど、数多くの中傷の舌に
さらされている者はいないと。
ヘンリー王立て、善きカンタベリー。
そなたの真実と誠実さは、友である
私の中に根を張っている。手を貸せ、立つのだ。
さあ、歩こう。聖母にかけて、
そなたは何という人間だ? 大主教、私はてっきり
そなたが嘆願書を差し出し、
私に骨を折らせて、そなたと告発者を
一堂に集め、そなたの言い分を聞き、
これ以上拘束しないよう求めると思っていた。
クランマー畏れ多き陛下、
私の立つ善き土台は、真実と誠実さです。
もしそれが崩れるなら、私も敵とともに
この身の敗北を喜びましょう。何とも思いません、
その二つの徳を欠いた身など。私への
どんな言い分も、恐れはしません。
ヘンリー王そなたは知らぬのか、
世間で、世のすべてに対して、どんな立場にあるか?
敵は多く、しかも弱くない。その策略も
同じだけ大きいと考えねばならぬ。そして常に、
問題の正義と真実が、評決に
正しい報いをもたらすとは限らない。堕落した心なら、いかに容易く
同じく堕落した悪党を用意し、
そなたに不利な偽証をさせられることか。実際にあったことだ。
そなたは強大な敵に狙われ、悪意も
同じだけ巨大だ。偽証する証人について、
そなたの主より幸運に恵まれると思うのか。
そなたが仕えるその方が、この邪悪な地上に
生きておられた時よりも? 考えよ、考えよ。
そなたは絶壁から飛ぶことを危険と思わず、
自らの破滅に求愛している。
クランマー神と陛下が
私の無実を守ってくださらなければ、
仕掛けられた罠へ落ちるほかありません!
ヘンリー王元気を出せ。
あの者たちは、私が許す以上には勝てぬ。
心を強く持て。そして今朝、必ず
彼らの前へ出頭せよ。もし彼らが、
何かを告発し、そなたを投獄しようとしたなら、
反対するために最善の説得を
必ず尽くせ。機会が教えるかぎりの
激しさをもってだ。もし嘆願しても
何の救いも得られぬなら、この指輪を
彼らに渡し、その場で私へ
上訴せよ。見よ、この善人が泣いている!
わが名誉にかけて、誠実な男だ。神の祝福されし御母よ!
真心の持ち主だと誓う。この王国に
これ以上善い魂はない。さあ、行け、
私が命じたとおりにせよ。
ヘンリー王涙に首を絞められ、
言葉が出なかったのだ。
紳士(奥から。)戻れ。何をするつもりだ?
老婦人戻りません。私が運ぶ知らせなら、
この大胆さを礼儀に変えてくれます。さあ、善き天使たちよ、
国王陛下の頭上を飛び、そのお身体を
祝福された翼の下で覆いたまえ!
ヘンリー王その顔つきで、
知らせの中身は読めた。王妃は産んだのか?
そうです、と言え。そして男児です、と。
老婦人はい、はい、陛下。
愛らしい男児を。天の神が
今も末永くも、お子を祝福しますように! 女児です、
いずれ男児を産むと約束してくれる。陛下、王妃様は
お見舞いに来て、この見知らぬ方と
お知り合いになってほしいと望まれています。この子は陛下に
さくらんぼがさくらんぼに似るほど、そっくりです。
ヘンリー王ラヴェル!
ラヴェル陛下?
ヘンリー王この女に百マルク与えよ。王妃のもとへ行く。
老婦人百マルク! この光にかけて、もっといただきます。
そんな礼なら、並の馬丁へのものです。
もっと取る、さもなければ王を罵って絞り出す。
この程度のために、姫が王に似ていると言ったのか?
もっと取る、でなければ今の言葉を取り消す。さあ、
話が熱いうちに、決着をつけてきます。
