ベヴィス来い、剣を手に入れろ。木の薄板で作ったものでもよい。奴らは、もう二日も立ち上がっている。
ホランドならば、今は、よけいに眠る必要があるな。
ベヴィスいいか、毛織物屋のジャック・ケイドは、国を仕立て直すつもりだ。生地を裏返し、新しい毛羽を立てるのさ。
ホランドそうする必要があるな。もう、擦り切れている。だいたい、紳士どもが、のし上がってからというもの、イングランドが楽しい世の中だったためしはない。
ベヴィスああ、嘆かわしい時代だ! 職人の徳が、顧みられない。
ホランド貴族どもは、革の前掛けを着けるなんて、身分に合わぬと、馬鹿にする。
ベヴィスそれだけじゃない。国王の評議会には、腕のよい職人が一人もいない。
ホランドその通り。だが、「己の召された仕事に励め」と言うだろう。つまり、政務官も働く者であれ、ということだ。ゆえに、俺たちが政務官になるべきなのさ。
ベヴィス図星だ。勇ましい心の、一番確かな印は、硬い手のひらだからな。
ホランド見える! 見えるぞ! ウィンガムの皮なめし職人、ベストの息子がいる――
ベヴィス奴には、敵の皮を剥がせ。それで、犬革を作ればよい。
ホランド肉屋のディックもいる――
ベヴィスこれで、罪は、牛のように打ち倒され、不正の喉は、子牛のように切られる。
ホランド機織りのスミスも――
ベヴィス「アルゴ」、つまり、奴らの命の糸も、紡ぎ終わった。
ホランド来い、来い。俺たちも、合流しよう。
ケイドわれ、ジョン・ケイドは、父とされる男から、そう名づけられた――
ディック(傍白。)
ケイド国王と諸侯を打ち倒す、霊感を受けた、われらの前に、敵は倒れるのだ――
ディック静粛に!
ケイドわが父は、モーティマー家の者だった――
ディック(傍白。)
ケイドわが母は、プランタジネット家の者――
ディック(傍白。)
ケイドわが妻は、レイシー家の血を引く――
ディック(傍白。)
スミス(傍白。)
ケイドゆえに、私は、誉れ高い家の出だ。
ディック(傍白。)
ケイド私は、勇敢だ。
スミス(傍白。)
ケイド私は、多くの苦しみに耐えられる。
ディック(傍白。)
ケイド剣も、火も、恐れぬ。
スミス(傍白。)
ディック(傍白。)
ケイドならば、勇ましくあれ。そなたたちの隊長は勇ましく、世直しを誓う。イングランドでは、一ペニーで、半ペニーのパンを七つ、買えるようにする。三輪留めの酒壺には、十の輪をつける。薄いビールを飲むことは、重罪とする。王国すべてを共有にする。そして、チープサイドでは、わが乗馬を放牧する。私が国王となったときには、そして、私は国王となるが――
一同陛下、万歳!
ケイドありがとう、善き民よ。金銭をなくし、皆に、私のつけで、飲み食いさせよう。そして、皆に、同じ制服を着せる。兄弟のように仲よくし、君主たる私を、崇められるようにな。
ディック最初にすることは、法律家を皆殺しにしよう。
ケイドうむ、そのつもりだ。罪なき子羊の皮から、羊皮紙を作るとは、嘆かわしいことではないか? その羊皮紙に、何やら書きつければ、一人の男を破滅させられるとは? 蜂が刺すと言う者もいる。だが、私に言わせれば、刺すのは、蜜蜂の蝋だ。一度、ある書面に、封蝋で印を押しただけで、それからというもの、私は、自分の主人でなくなった。どうした! そこにいるのは、誰だ?
スミスチャタムの書記です。読み書きができ、勘定もできます。
ケイドおお、何という怪物!
スミス子供たちに、手本を写させているところを、捕らえました。
ケイドここに、悪党がいるぞ!
スミス懐に、赤い文字の入った本を持っています。
ケイドならば、魔法使いだ。
ディックしかも、証文を作り、裁判所の書体で書けます。
ケイド残念なことだ。名誉にかけて、この男は、見栄えのする男なのに。私が有罪と認めないかぎり、死なせはせぬ。こっちへ来い、貴様。私が、取り調べる。名は、何という?
書記エマニュエルです。
ディック手紙の頭に、よく書く言葉だ。お前には、厳しいことになるぞ。
ケイド私に任せろ。お前は、いつも、自分の名を書くのか? それとも、正直で、裏表のない男のように、自分だけの印をつけるのか?
書記閣下、神のおかげで、よく教育され、自分の名を書けます。
一同白状したぞ。連れていけ! 悪党だ、逆賊だ。
ケイド連れていけと言っている! ペンと、インク壺を首に掛け、絞首刑にせよ。
マイケルわれらの将軍は、どこだ?
ケイドここにいるぞ、この、一介の男め。
マイケル逃げろ、逃げろ、逃げろ! ハンフリー・スタフォード卿と、その弟が、国王軍とともに、すぐそこまで来ています。
ケイド止まれ、悪党、止まれ。さもなくば、打ち倒すぞ。あの男には、同格の男が、立ち向かう。ただの騎士なのだろう?
マイケルええ、騎士にすぎません。
ケイドあの男と肩を並べるため、今すぐ、自分を騎士にしよう。
ケイド立て、サー・ジョン・モーティマー。
ケイドさあ、かかってこい!
スタフォード反逆する田舎者、ケントの汚物、滓ども、
絞首台の印をつけられた者ども、武器を捨てよ。
小屋へ帰り、この下郎を見捨てろ。
反乱をやめ、忠義へ戻れば、国王は慈悲深い。
スタフォードの弟だが、このまま進むなら、
国王は怒り、憤り、血を流そうとなさる。
ゆえに、降伏せよ。さもなくば、死ね。
ケイドこの絹の上着を着た奴隷どもなど、気にも留めぬ。
私が話しかけるのは、善き民、そなたたちだ。
やがて、その上に、私が君臨することを望む者たち。
なぜなら、私こそ、王冠の正統な世継ぎだからだ。
スタフォード悪党、お前の父親は、壁塗り職人だった。
そして、お前自身は、毛織物を仕上げる刈り手ではないか?
ケイドアダムは、庭師だった。
スタフォードの弟それが、どうした?
ケイドこういうことだ。マーチ伯エドマンド・モーティマーは、
クラレンス公の娘と結婚した。そうだろう?
スタフォードそうだ。
ケイドその女との間に、双子をもうけた。
スタフォードの弟嘘だ。
ケイドそう、それが問題だ。だが、私は、真実だと言う。
双子の兄は、乳母へ預けられたとき、
物乞いの女に、盗み去られた。
自分の生まれも、血筋も知らぬまま、
成長すると、煉瓦職人になった。
私は、その息子だ。できるものなら、否定してみろ。
ディックいや、あまりにも真実だ。ゆえに、この方が、国王となる。
スミスその方は、私の父の家に、煙突を作りました。その煉瓦は、今も生きて、それを証言しています。ですから、否定してはなりません。
スタフォード何を話しているかも分からぬ、
この卑しい人足の言葉を、信じるのか?
一同もちろん、信じる。だから、さっさと行け。
スタフォードの弟ジャック・ケイド、ヨーク公が、お前に、これを教えたのだな。
ケイド(傍白。)
ケイドさあ、貴様、私から国王へ伝えよ。父君ヘンリー五世に免じ、陛下が治めることを、私は認める。その時代には、子供たちが、フランス王冠の金貨を弾いて、遊んだものだ。だが、陛下の上には、私が護国卿として立つ。
ディックそれから、メーヌ公領を売ったセイ卿の首を、いただこう。
ケイド当然だ。そのせいで、イングランドは、メーヌを失い、「メイムド」、手足を奪われて、杖が必要になった。わが剛力が、支えていなければな。ともに王たる者たちよ、言っておくが、あのセイ卿は、国家を去勢し、宦官にした。そのうえ、フランス語を話せる。ゆえに、逆賊だ。
スタフォードおお、何という、ひどく嘆かわしい無知!
ケイドいや、できるなら、答えてみろ。フランス人は、われらの敵だ。では、これだけ尋ねよう。敵の舌で話す者が、善き顧問官になれるか、なれぬか?
一同なれぬ、なれぬ。ゆえに、その首をもらう。
スタフォードの弟よし、穏やかな言葉が通じないのなら、
国王の軍勢で、奴らを攻めよ。
スタフォード伝令、行け。あらゆる町で、
ケイドとともに、立ち上がった者は、逆賊だと触れ回れ。
戦いが終わる前に、逃げた者も、
妻や子供の見ている前で、
見せしめとして、家の戸口に吊るされるように。
そして、国王の味方である者は、私に続け。
ケイドそして、民衆を愛する者は、私に続け。
今こそ、男であることを示せ。自由のためだ。
一人の領主も、一人の紳士も、残してはおかぬ。
継ぎ当ての靴を履く者だけは、助けよ。
倹約を知る、正直な者たちであり、
勇気さえあれば、われらの側につく者たちだからだ。
ディック奴らは皆、隊列を整え、こちらへ進んでくる。
ケイドだが、われらは、最も無秩序なときこそ、秩序が整っている。来い、前進だ。
