船長きらびやかで、何もかも言いふらし、情け深い昼は、
海の懐へ、忍び込んだ。
今や、声高く吠える狼どもが、駄馬を起こす、
悲劇をもたらす、憂鬱な夜を引く駄馬を。
夜は、眠たげに、ゆっくり垂れ下がる翼で、
死者の墓を包み、その霧深い顎から、
汚れた、病を運ぶ闇を、空気へ吐き出す。
ゆえに、戦利品の兵士たちを、引き出せ。
われらの小船が、ダウンズ沖に錨を下ろす間に、
ここ、この砂の上で、身代金を払わせる。
さもなくば、この色あせた岸を、その血で染めさせよう。
船主、この捕虜は、好きにしてよい、そなたに与える。
その副官の、お前は、こいつから利益を得ろ。
残る一人は、ウォルター・ウィットモア、お前の取り分だ。
第一の紳士私の身代金は、いくらだ、船主? 教えてくれ。
船主一千クラウン。さもなくば、首を差し出せ。
副官お前も、それだけ払え。さもなくば、その首が飛ぶ。
船長何だ、二千クラウンを払うことを、高いと思うのか?
紳士の名と、暮らしぶりを、誇っていながら。
二人の悪党の喉を切れ。お前たちは、死ぬのだ。
戦いで失った、われらの者たちの命が、
そのような、はした金と釣り合うものか!
第一の紳士払います。ですから、命をお助けください。
第二の紳士私も払います。すぐに、故郷へ書き送ります。
ウィットモアこの獲物の船へ乗り移るとき、俺は片目を失った。
ゆえに、その復讐として、お前には死んでもらう。
ウィットモア俺の思いどおりになるなら、こいつらも、そうしてやる。
船長早まるな。身代金を取り、生かしておけ。
サフォークこの聖ジョージ章を見ろ。私は、紳士だ。
望む値をつけよ。必ず支払われる。
ウィットモア俺も紳士だ。名は、ウォルター・ウィットモア。
どうした! なぜ、ぎくりとした? 死が怖いのか?
サフォークその名が、私を脅かす。その響きの内に、死がある。
占星術師が、私の生まれを算定し、
「ウォーター」、すなわち、水によって死ぬと告げたのだ。
だが、そのことで、血に飢えるな。
お前の名を正しく発音すれば、ゴーティエではないか。
ウィットモアゴーティエだろうと、ウォルターだろうと、知ったことか。
卑しい不名誉に、わが名を汚されたときは、いつでも、
剣をもって、その汚れを拭ってきた。
だから、商人のように、復讐を売り渡すようになったなら、
わが剣は折れ、紋章は引き裂かれ、汚されるがよい。
そして、私が臆病者だと、全世界へ触れ回られるがよい!
サフォーク待て、ウィットモア。お前の捕虜は、王族だぞ、
サフォーク公爵、ウィリアム・ド・ラ・ポールだ。
ウィットモアサフォーク公爵が、ぼろ布に、くるまっているだと!
サフォークそうだ。だが、このぼろ布は、公爵の一部ではない。
大神ジュピターも、時には変装した。ならば、私がして、なぜ悪い?
船長だが、ジュピターは、殺されたことがない。お前は、殺されるがな。
サフォーク名もなき、卑しい田舎者め。ヘンリー王の血、
高貴なランカスターの血を、
そのような、疲れ果てた下僕に、流させはせぬ。
お前は、この手に口づけし、私の鐙を支えたことはないのか?
帽子もかぶらず、飾り布を掛けた、わが騾馬のそばを、とぼとぼ歩き、
私が、うなずけば、幸福に思ったことは?
幾度、私の杯のそばで、給仕をし、
私の皿の残りを食べ、食卓の前で膝をついた?
私が、マーガレット王妃と、宴を催したときに。
それを思い出し、意気を挫かれよ。
そうだ、その出来損ないの高慢さを、鎮めるのだ。
客が退出する広間に立ち、
私が出てくるのを、欠かさず待っていたことも、忘れたか?
この手が、お前のために、口添えの手紙を書いたこともある。
ゆえに、この手が、乱暴な、その舌へ、魔法をかけるだろう。
ウィットモア船長、言ってくれ。この見捨てられた田舎者を、刺し殺してよいか?
船長まずは、こいつが私を刺したように、私の言葉で刺してやる。
サフォーク卑しい奴隷め、お前の言葉は鈍い。お前自身もな。
船長こいつを連れていけ。長艇の舷側で、
その首を、刎ねろ。
サフォーク自分の命が惜しければ、できぬはずだ。
船長できるとも、ポール。
サフォークポールだと!
船長いや、「プール」さ! サー・プール! ロード・プール!
そうとも、犬の溝、水溜まり、下水溜めだ。その汚物と泥が、
イングランドの飲む、銀の泉を濁らせる。
今こそ、この、ぽっかり開いた口を、堰き止めよう、
王国の宝を、呑み込んだ口を。
王妃に口づけした、その唇は、地面を掃くがよい。
善きハンフリー公の死に、微笑んだ、お前は、
感覚もない風に向かって、むなしく歯を見せろ。
風も、お前を蔑み、歯を剥いて、声を返すだろう。
そして、地獄の鬼婆どもと、夫婦になるがよい。
領民も、富も、王冠も持たぬ、
取るに足らぬ王の娘と、
偉大な君主を結婚させようと、よくも企てたな。
悪魔のような策略で、お前は、のし上がった。
野心に燃えるスッラのように、
血を流す母国の心臓を、肉塊にして、貪り食った。
お前によって、アンジューとメーヌは、フランスへ売られた。
お前のために、偽り、反乱したノルマン人は、
われらを、主君と呼ぶことを拒む。
ピカルディでは、総督たちが殺され、砦が奪われ、
ぼろをまとった負傷兵が、故国へ送り返された。
王者の風格を持つウォリックと、ネヴィル家の者たち、
その恐るべき剣が、むなしく抜かれたことのない者たちも、
お前を憎み、武器を取って、立ち上がろうとしている。
そして今、ヨーク家は、
罪なき国王を、恥ずべき殺人によって葬り、
高慢で尊大な暴政によって、王冠から押しのけられたため、
復讐の炎に燃えている。その希望に満ちた旗は、
輝こうとする、半面の太陽を掲げ、
その下には、「雲の妨げにもかかわらず」と記されている。
ここケントの民衆も、武器を取っている。
つまり、恥辱と貧困が、
わが国王の宮殿へ忍び込んだのだ。
すべて、お前のせいだ。行け! こいつを連れていけ。
サフォークああ、私が神であったなら、雷を放ち、
この、つまらぬ、卑屈で、卑しい人足どもを、打ち砕くものを!
小さなものが、卑しい男を高慢にする。この悪党は、
小船の船長になっただけで、
剛勇のイリュリア海賊、バルグルスよりも、ひどく人を脅す。
雄蜂は、鷲の血を吸わず、蜂の巣を襲うもの。
私が、お前のような卑しい家来の手で、
死ぬことなど、ありえない。
お前の言葉が、私に起こすのは、怒りであって、悔恨ではない。
私は、王妃の使者として、フランスへ行く。
海峡を越え、安全に送り届けよと命じる。
船長ウォルター――
ウィットモア来い、サフォーク。俺が、お前を死へ送り届けてやる。
サフォーク「凍る恐れが、手足を捉える」――私が恐れるのは、お前だ。
ウィットモア俺が、お前から離れるまでには、恐れる理由が、できているだろう。
何だ、今になって、怖じ気づいたか? 今こそ、頭を下げるのか?
第一の紳士慈悲深き閣下、あの男に頼み、穏やかに、お話しください。
サフォークサフォークの、皇帝のごとき舌は、厳しく、荒々しい。
命じることに慣れ、慈悲を乞うことは、教えられていない。
へりくだった願いによって、このような者たちを、
尊ぶなど、あってはならぬ。いや、むしろ、この頭を、
断頭台へ垂れよう。だが、この膝を曲げるのは、
天なる神と、わが国王に対してだけだ。
卑しい下僕の前で、帽子を脱いで立つくらいなら、
血まみれの杭の上で、踊る方が早い。
真の高貴さに、恐れはない。
お前が、あえて行えることより、私は多くを耐えられる。
船長引き立てろ。もう、話させるな。
サフォーク来い、兵士たち。できるかぎりの残酷さを、見せてみろ。
この私の死が、決して忘れられぬように!
偉大な者は、しばしば、卑賤な悪党の手で死ぬ。
ローマの剣士と、山賊の奴隷が、優しきトゥッリウスを殺し、
私生児ブルータスの手が、ユリウス・カエサルを刺した。
野蛮な島人たちが、ポンペイウス大王を殺した。
そして、サフォークは、海賊の手で死ぬ。
船長さて、身代金を定めた、この者たちについては、
われらの望みにより、一人を帰してやる。
ゆえに、お前は、われらと来い。もう一人は、行かせろ。
ウィットモア首も、命なき体も、そこに置いておけ。
情人の王妃が、埋葬するまでな。
第一の紳士おお、野蛮で、血まみれの光景!
この亡骸を、国王のもとへ運ぼう。
陛下が復讐なさらなくとも、友人たちがする。
生前、この者を愛した王妃も、そうするだろう。
