ヘレナですが昼夜を分かたぬこの強行軍では
お心も疲れ果てましょう。仕方のないことです
けれど昼も夜も一つにして、
私のためにその優しいお体をすり減らしてくださった以上、
どうか信じて、私の恩返しのうちにあなた方は深く根を張り、
何ものにも抜けぬほどになる。ちょうどよい時に——
ヘレナこの方なら王のお耳まで私を導いてくれるかもしれない、
お力を貸してくだされば。ごきげんよう。
紳士あなたも。
ヘレナあなたにはフランス宮廷でお目にかかったことがございます。
紳士ときおり参上しておりました。
ヘレナ失礼ながら、あなた様は今もなお
ご高潔との評判に違わぬお方と存じます。
ですから、容赦のない窮地に追い立てられ、
礼儀にこだわる余裕もなく、あなた様ご自身の
徳のお力にすがります。そのご恩には
いつまでも感謝いたします。
紳士ご用件は?
ヘレナどうかお願いでございます、
この哀れな嘆願書を王にお渡しくださり、
お持ちのお力の限り、私が
御前へ出られるようお助けください。
紳士王はここにはおられません。
ヘレナここにおられない?
紳士ええ、おられません。
昨夜ここを発たれました、いつになく
お急ぎで。
未亡人ああ、これまでの苦労が水の泡だよ!
ヘレナ終わりよければ、まだすべてよし、
時がこうも逆風で、手立てが悪くとも。
どうか教えてください、王はどちらへ?
紳士確か、ルシヨンへ向かわれたかと。
私もそちらへ参ります。
ヘレナお願いいたします、
私より先に王にお会いになるでしょうから、
この書状を尊い御手へお届けください。
きっとあなた様が咎められることはなく、
むしろお骨折りを感謝されるはずです。
あとを追います、私どもの旅の手立てで
出せるかぎりの速さを出して。
紳士お引き受けしましょう。
ヘレナこの先何が起ころうと、きっと十分な
礼を受けられます。また馬に乗らなくては。
さあ、さあ、支度を。
