未亡人さあ、早く。あの軍勢が町まで来てしまったら、見物をすっかり見逃すよ。
ダイアナフランスの伯爵がたいそう立派な武功を立てたそうよ。
未亡人敵方のいちばん偉い将を捕らえ、ご自分の手で公爵の弟君を討ったそうだよ。
未亡人骨折り損だ。あちらは反対の道へ行ってしまった。ほら! 喇叭の音で分かるだろう。
マリアナさあ、戻りましょう、噂を聞くだけで我慢して。いいこと、ダイアナ、このフランスの伯爵には気をつけなさい。乙女の誉れはその名そのもの。貞節ほど豊かな遺産はないのよ。
未亡人この子が伯爵のお仲間の紳士に口説かれていることは、お隣にも話したよ。
マリアナあの悪党なら知ってる、縛り首よ! パローレスとかいう男。若い伯爵のためにそんな口入れをする、汚らしい士官よ。気をつけて、ダイアナ。あいつらの約束、甘い誘い、誓い、贈り物、色欲の仕掛けは、どれも名ばかりで中身は違う。大勢の娘がそれにたぶらかされた。情けないのは、乙女の操が難破した、あれほど恐ろしい実例を見ても、次に続く者を止められないこと。娘たちは、罠だと警告する小枝にさえ鳥もちで捕まるのよ。これ以上言い聞かせなくてもいいと思う。でも、失えばそれだけで危険だと分かる慎みの心が、今のままのあなたを守ってくれると信じてる。
ダイアナ私のことなら、ご心配なく。
未亡人そう願うよ。
未亡人ほら、巡礼の女が来たよ。きっとうちに泊まる。巡礼同士で次々うちを教えるからね。話を聞こう。神のご加護を、巡礼さん! どちらへおいでだい?
ヘレナ聖大ヤコブの御廟へ。
巡礼者の宿はどこでしょう、教えていただけますか?
未亡人この門のすぐそば、聖フランチェスコ修道院だよ。
ヘレナこちらの道ですか?
未亡人そうとも、間違いないよ。
未亡人お聞き、こっちへ来るよ!
お待ちになるなら、敬虔な巡礼さん、
軍勢が通り過ぎるまで、
泊まる所へご案内しよう。
なおさらね、そこの女主人なら、たぶん
私自身と同じくらい、よく知っているから。
ヘレナそれは、あなたご自身?
未亡人お望みならね、巡礼さん。
ヘレナありがとうございます。お手すきになるまで待ちます。
未亡人フランスから来なすったね?
ヘレナはい。
未亡人ここでお国の方を一人見られますよ、
立派な働きをしたお方を。
ヘレナお名前は?
ダイアナルシヨン伯爵。ご存じ?
ヘレナ噂でだけ。とても立派なお方だと耳にしています。
お顔は存じません。
ダイアナどんなお方にせよ、ここでは大変な人気よ。
フランスから逃げてきたそうね、
王様に、気の進まない相手と
無理やり結婚させられたから。そうだと思う?
ヘレナええ、確かに、紛れもない真実です。奥方を知っています。
ダイアナ伯爵に仕える紳士が一人いて、
奥方のことをずいぶん下品に話すの。
ヘレナ名は何と?
ダイアナパローレス殿。
ヘレナああ、その方の言うことなら信じます、
褒める話でも、大伯爵ご自身の
値打ちを論じる話でも、奥方は身分が低すぎて
名を口にする価値すらないのでしょう。取り柄はすべて、
胸にしまった貞節だけ、それも
詮議されたとは聞いていません。
ダイアナまあ、かわいそうな奥方!
自分を嫌う夫の妻になるなんて、
なんと辛い束縛でしょう。
未亡人きっと、かわいそうに、どこにいようと、
胸は悲しみで重いはず。この若い娘なら、奥方に
ひどい仕打ちもできるよ、その気になればね。
ヘレナどういうことです?
まさか、恋に狂った伯爵がこの娘に
道ならぬ望みを迫っているのですか。
未亡人そのとおり。
この手の口説きで娘の柔らかな誉れを
堕落させる、ありとあらゆる仲介を使ってね。
だが、この子は武装して、あの男を寄せつけず、
この上なく貞い守りを固めている。
マリアナそうでなくては、神々がお許しにならない!
未亡人さあ、来たよ。
未亡人あれがアントニオ、公爵の長男。
あちらがエスカラス。
ヘレナどの人がフランス人です?
ダイアナあの人。
羽根飾りの人。なんて勇ましいお方。
奥方を愛していればいいのに。もっと誠実なら、
ずっと素敵なのに。ねえ、見目のいい殿方でしょう?
ヘレナ好ましいお方ですね。
ダイアナ誠実でないのが惜しいわ。ほら、あっちに例の悪党、
伯爵をこんな場所へ引っぱってくる男。私が奥方なら、
あの卑劣なごろつきに毒を盛るわ。
ヘレナどの人です?
ダイアナ襷をじゃらじゃら巻いた、あの猿真似野郎。どうしてしょげてるの?
ヘレナ戦で傷を負ったのかもしれません。
パローレスわが軍の太鼓を奪われた! まったく。
マリアナ何かでひどく腹を立ててる。ほら、私たちを見つけたわ。
未亡人やれやれ、首でも吊りな!
マリアナご挨拶も結構、指輪運びの口入れ屋さん!
未亡人軍勢は通り過ぎた。さあ、巡礼さん、ご案内しよう、
お泊まりになる所へ。誓いを立てて贖罪の旅をする方が
四、五人、聖大ヤコブを目指して、
もううちに泊まっているよ。
ヘレナ心より感謝します。
こちらのご婦人と優しいお嬢さんにも、
今夜ご一緒に食事をしていただければ、お代もお礼も
私が引き受けます。さらにご恩に報いるため、
この乙女について、心得となることをいくつか
お話ししましょう、お耳に留める価値のあることを。
二人ありがたく、お言葉に甘えます。
