レオンティーズおお、思慮深く善良なポーライナ、そなたには、
どれほど大きな慰めをもらってきたことか。
ポーライナ何を仰います、わが君。
行き届かぬことばかり、心だけは尽くして参りました。わたくしのお仕えには、
充分すぎるほど報いてくださいました。ですが、王冠を戴く御兄弟と、
御国の世継ぎと定まったこのお二方を連れて、
このみすぼらしい家をお訪ねくださるとは、
あり余るご恩寵。わたくしの命が尽きるまでかけても、
お返しのしようがございません。
レオンティーズおお、ポーライナ、
われらの訪問は、名誉どころか厄介のかけどおしだ。だが、今日は
わが妃の彫像を見に来たのだ。そなたの画廊は
ひととおり見せてもらい、数々の珍しい品を
大いに楽しませてもらった。だが、まだ見ていないのだ、
わが娘が何より見たいと願って来たもの——
母親の彫像を。
ポーライナ生前のあの方が並ぶ者のないお方でしたように、
亡きお姿を写したこの像も、きっと、
あなた様がこれまで御覧になったどんなものも、
人の手が生んだどんなものも、超えていると信じております。ですから、
人目に触れさせず、離して置いてあるのです。さあ、これでございます。ご覧じませ、
生き身の命を、これほどまことしやかに写した像を——
静かな眠りが死をまことしやかに演じるように。さあ、御覧になって、見事と仰ってくださいまし。
ポーライナその沈黙、結構でございます。それだけ驚きが
深いという証。ですが、お言葉もいただきましょう。まず、わが君から。
いくらか、似ておりましょうか。
レオンティーズまさに、あれの立ち姿そのままだ。
叱っておくれ、いとしい石よ。そうすれば言えるのだ、
おまえは本物のハーミオニだと。いや、むしろ、叱らずにいるからこそ、
おまえはあれそのものだ。あれは幼子か、
天の恵みのように優しい女だったのだから。だが、それにしても、ポーライナ、
ハーミオニには、これほど皺はなかったぞ。この像ほどには、
歳を取ってはいなかった。
ポリクシニーズおお、これほどでは、とても。
ポーライナだからこそ、彫り師の腕の冴えでございます。
十六年の歳月をやり過ごして、あの方が
今も生きておられたらというお姿に、仕立てたのですから。
レオンティーズ今も生きていてくれたなら——
その姿は、わしの心をどれほど深く慰めてくれたことか。ちょうど今、
この魂を刺し貫いているのと同じ深さでな。おお、あれはこうして立っていた、
今この像が冷たく立っているのと同じ、威厳に満ちた、温かい命そのままに、
わしが初めて言い寄ったあのときも。
恥ずかしいことだ。この石は、わしを咎めてはいないか、
この石よりも石でいたわしを。おお、王者の逸品よ、
おまえの威厳には魔力がある。その力が、
わしの犯した悪の数々を、記憶へ呼び出した。そして、
見とれるおまえの娘から魂を抜き取って、
おまえと並ぶ石の像に変えてしまった。
パーディタどうかお許しください。
迷信などと仰らないでください。
ひざまずいて、お母様の祝福をお願いするのです。妃殿下、
わたくしが生まれ出たそのときに、この世を去られたいとしいお母様、
その御手を、口づけさせてくださいまし。
ポーライナおお、お待ちを。
像は据えたばかりで、彩色がまだ乾いておりません。
カミローわが君、あなた様の悲しみは、あまりに重く積もりました。
十六度の冬にも吹き払えず、
十六度の夏にも乾かせぬほどに。どんな歓びも、
それほど長く生きたためしはございません。どんな悲しみも、
それよりずっと早く、自らを殺してしまうものです。
ポリクシニーズわが兄弟よ、
この悲しみの元を作ったこの身にこそ、
その悲しみを、おのれが引き受けられるだけ、
あなたから取り除く力を与えてもらいたい。
ポーライナまことのところ、わが君、
わたくしのつたない像を御覧に入れて、これほど
お心を乱すと分かっておりましたら——像はわたくしのものでございますから——
お見せはいたしませんでした。
レオンティーズ幕を引くな。
ポーライナこれ以上見つめてはなりません。気の迷いで、
今にも動くと思われてしまいますから。
レオンティーズ構わん、構わん。
死んでもいいのだ、ただ、どうやらもう——
これを作ったのは、どこの誰なのだ。ご覧なさい、あなた、
息をしていると思われませんか。あの血管には、
本当に血が通っているとは。
ポリクシニーズ見事な出来栄えだ。
唇の上には、命そのものの温もりが宿って見える。
レオンティーズじっと据わった目にも、動きがある。
芸術に、われらのほうが翻弄されているのだ。
ポーライナ幕を引かせていただきます。
わが君はもう心を奪われるあまり、今にも
生きているとお思いになりかねません。
レオンティーズおお、優しいポーライナ、
そう思わせておいてくれ、二十年でも続けてくれ。
世のどんな正気の分別も、この狂気の歓びには
かなわないのだ。そのままにしておけ。
ポーライナ申し訳ございません、ここまでお心を掻き立ててしまいました。ですが、
まだこの先まで、お苦しめすることもできますが。
レオンティーズやってくれ、ポーライナ。
この苦しみは、どんな気付けの薬にも劣らず、
甘い味がするのだから。それにしても、やはり、
あれから息の気配が漂ってくる気がする。どんな見事な鑿が、
息までも彫れたというのだ。誰も笑うな、
わしはあれに口づけをする。
ポーライナわが君、おやめください。
唇の紅は、まだ濡れております。
口づければ像は台無し、あなた様の唇にも
油絵の具の染みがつきます。幕を引きましょうか。
レオンティーズならん。この先二十年は引かせん。
パーディタそれだけの年月、わたくしも
そばに立って、見つめていられます。
ポーライナそれでは、お控えいただくか、
今すぐこの礼拝堂を出ていただくか。さもなくば、
さらなる驚きへのお覚悟を。お耐えになれるのでしたら、
この像を、本当に動かして御覧に入れましょう。台から降りて、
あなた様の手を取らせてみせます。ですがそのときは、きっと——
先に申し開きをしておきますが——わたくしが邪悪な力を
借りていると思われましょう。
レオンティーズそなたがあれにさせられることなら、何であれ、
喜んで見よう。あれに言わせられることなら、
喜んで聞こう。動かせるのなら、
喋らせるのも同じくらい易しかろうからな。
ポーライナ必要なのは、
皆様が信仰を呼び覚まされることです。では、みなさま、お静かに。
これより始めます。わたくしのすることを邪法とお思いの方は、
どうぞお立ち去りを。
レオンティーズ続けてくれ。
誰ひとり、足も動かさぬ。
ポーライナ音楽よ、この方を目覚めさせよ。奏で始めよ。
ポーライナ時が参りました。お降りなさい。もう石ではおやめなさい。お進みなさい。
見つめる人という人を、驚嘆で打ちなさい。さあ、おいでなさい、
あなたの墓は、わたくしが埋めておきましょう。お動きなさい。さあ、こちらへ。
そのこわばりは、死にお返しなさい。あなたは、いとしい命が、
死の手から請け出したのですから。——ほら、動かれましたでしょう。
ポーライナ驚いてはなりません。この方のなさることは神聖です、
わたくしの呪文が邪法でないのと同じことでございます。この方を避けてはなりません、
もう一度死なせて御覧になるまでは。そのときは、あなた様が
二度この方を殺すことになるのですから。さあ、御手をお出しなさい。
お若い頃は、あなた様が言い寄られた。歳を重ねた今は、
この方から言い寄られる番でございますか。
レオンティーズおお、温かい!
これが魔法だというのなら、魔法とは、物を食べるのと同じくらい
罪のない業ということにしてもらおう。
ポリクシニーズ妃が王を抱いておられる。
カミロー王の首にすがりついておられるぞ。
命あるお方なら、お言葉も聞かせていただきたい。
ポリクシニーズああ、そして明かしていただこう、これまでどこで生きてこられたのか、
それとも、どうやって死の国から抜け出されたのかを。
ポーライナこの方が生きておられます、と、
ただ言葉でお伝えしただけなら、昔語りのように
笑い飛ばされたことでしょう。ですが、生きておられることは、御覧のとおり。
まだお言葉はありませんが。しばし、お見守りを。
ポーライナどうぞ、あいだへお入りくださいまし、姫様。ひざまずいて、
お母様の祝福をお願いなさい。——お向きなさいまし、奥方様、
わたくしたちのパーディタが、見つかったのでございます。
ハーミオニ神々よ、見下ろしてください、
そして聖なる瓶から、恵みの数々を、
わたくしの娘の頭に注いでください。——教えておくれ、わたくしの娘、
おまえはどこで守られていたの。どこで生きていたの。どうやって
父上の宮廷を探し当てたの。おまえにも聞かせてあげましょう、わたくしは、
おまえが生きているという望みを神託が与えてくれたと、
ポーライナから知らされて、その結末を見届けるために、
この身を保ってきたのです。
ポーライナその話は、いくらでも後でできますこと。
でないと皆様が、この喜びの最中に、同じような身の上話で
水を差したがりましょうから。さあ、お行きなさいまし、
かけがえのないものを勝ち取られた皆様、ごいっしょに。その歓びを、
どなたにも分かち合って。わたくしは、老いた雉鳩、
どこか枯れ枝へ飛んで参りまして、そこで、
二度と見つかることのない連れ合いを、
この身が果てるまで、嘆きましょう。
レオンティーズおお、よさぬか、ポーライナ。
そなたは夫を持て、わしの同意でな、
わしがそなたの同意で妻を持つように。これは取り決めだ、
互いの誓いで結んだ取り決めだぞ。そなたはわしの妻を見つけてくれた。
どうやって見つけたかは、これから尋ねねばならんがな。わしはあれを、
死んだものと思い込んで見送り、あれの墓の前で、無駄な祈りを
幾度も捧げてきたのだから。遠くまで探しには及ばん——
あの男の心は、おおかた分かっておるのでな——そなたに
立派な夫を見つけてやるのに。さあ、カミロー、
この人の手を取ってやれ。その値打ちと誠実は、
誰もが知るところ、しかも今ここで、王がふたり揃って
保証したのだ。さあ、ここを出よう。
おお、そうだ。わが兄弟の顔を見てやってくれ。——おふたりとも、許してくれ、
おまえたちの聖なる眼差しのあいだへ、わしの邪な疑いを
差し挟んだことを。——これはそなたの婿殿、
王の息子だ。天の導きによって、
そなたの娘と婚約を交わした。——さあ、良きポーライナ、
ここから連れ出しておくれ。どこかゆっくりできる場所で、
互いに尋ね合い、語り合おうではないか、初めて引き裂かれてから、
この大きく開いた歳月の裂け目のあいだ、それぞれが演じてきた役どころを。
急いで、案内しておくれ。
