タイモン恵み深く万物を産ませる太陽よ、地から吸い上げろ、
腐った湿気を。おまえの妹、月の球の下で、
大気を毒せ。同じ腹に宿った双子の兄弟、
種を得た時も、宿った場所も、生まれた時も、
ほとんど違わぬ二人へ、別々の運を触れさせると、
栄えた方は劣る方を蔑む。あらゆる傷に
包囲される人の本性は、大きな運を担えない、
本性そのものを蔑まずには。
この乞食を引き上げ、あの貴族には運を拒め。
元老院議員は、蔑みを家柄として受け継ぎ、
乞食は、生まれながらの名誉を持つだろう。
牧草が雄牛の脇腹を脂で太らせ、
不足が痩せさせる。誰があえて、誰があえて、
人間としての純粋さを保ち、まっすぐ立って、
「この男はおべっか使いだ」と言える。一人がそうなら、
全員がそうだ。運命の階段は一段ごとに、
下にいる者が滑らかに磨く。学識ある頭が、
金を持つ愚か者へお辞儀する。すべてが斜めだ。
呪われた人の性に、水平なものは一つもない、
まっすぐな悪事を除いては。だから憎まれろ、
あらゆる宴、交わり、人間の群れ。
同類を、いや自分自身さえ、タイモンは嫌悪する。
破滅よ、人類へ牙を立てろ。大地よ、根をよこせ。
タイモンおまえから根より上等な物を求める奴には、その舌を味つけしろ、
最もよく効く毒で。これは何だ。
金。黄色く、きらめく、尊い金。違うぞ、神々、
俺は遊びで祈ったのではない。根だ、澄みきった天よ。
これだけの金があれば、黒は白に、醜は美に、
悪は正に、卑賤は高貴に、老いは若さに、臆病は勇気になる。
何だ、神々よ。なぜこれを。これは何だ、神々よ。そうか、こいつは
神官も召使いも、神々のそばから引きずり離し、
勇者の頭の下から枕を引き抜く。
この黄色い奴隷は、
宗教を結びつけ、また引き裂き、呪われた者を祝福し、
白く爛れた癩病を崇めさせ、盗人へ地位を与え、
肩書も、お辞儀も、賛同も授け、
元老院議員と同じ議席へ座らせる。これこそが、
萎れきった寡婦を、もう一度嫁がせる。
施療院も、膿んだ潰瘍も、吐き気を催して
追い払うような女を、こいつは香油と香辛料で包み、
四月の若さへ戻してしまう。来い、呪われた土よ、
人類共有の娼婦、国々の群れの間へ
争いを持ち込むものよ。おまえに
本来の仕事をさせてやる。
タイモン何だ、太鼓か。おまえは生きがいいな。
だが、やはり埋めてやる。強盗め、おまえは出て行くだろう、
痛風の番人たちが立つこともできなくなれば。
いや、手付けとして、少しだけ外へ残しておこう。
アルシバイアディーズそこにいるのは何者だ。答えろ。
タイモンおまえと同じ、獣だ。心を腐れ病に食われろ、
また人間の目を、俺に見せた罰だ。
アルシバイアディーズ名は何という。自分も人間でありながら、
それほど人間が憎いのか。
タイモン俺は人間嫌い、ミザントロポスだ。人類を憎む。
おまえについては、犬ならよかったと願っている、
少しは愛してやれただろうからな。
アルシバイアディーズおまえが誰かは、よく知っている。
だが、何が身に起きたのかは知らぬ、まるで初耳だ。
タイモン俺もおまえを知っている。だが、知っている以上のことは、
何一つ知りたくない。太鼓について行け。
地面を人間の血で塗れ、真紅に、真紅にな。
宗教の戒律も、市民の法律も残酷だ。
ならば戦争は、どれほど残酷であるべきか。おまえの連れの、この凶悪な売女は、
その剣より多くの破滅を、体の中に抱えている、
どれほど天使のような顔をしていてもな。
フリニアおまえの唇など腐り落ちろ。
タイモンおまえには口づけせぬ。ならば腐れ病は、
おまえ自身の唇へ戻るだけだ。
アルシバイアディーズ高貴なタイモンが、なぜこのように変わった。
タイモン月と同じだ、他者へ与える光を失ったからだ。
だが月と違い、俺は再び満ちることができなかった。
光を借りられる太陽が、一つもなかったからだ。
アルシバイアディーズ高貴なタイモンよ、
友として何ができる。
タイモン何もない、ただ一つ、
俺の考えが正しいと証明してくれ。
アルシバイアディーズどんな考えだ、タイモン。
タイモン友になると約束し、決して果たすな。約束しないなら、神々の疫病に罹れ、おまえは人間だからな。果たすなら、破滅しろ、おまえは人間だからな。
アルシバイアディーズおまえの災難については、いくらか聞いている。
タイモン俺が栄えていた時、おまえはその災難を見ていた。
アルシバイアディーズ今こそ災難が見える。あの頃は祝福された時だった。
タイモン今のおまえと同じだ、二人一組の売女を抱えている。
ティマンドラこいつが、世間からあれほど敬意を込めて
語られていた、アテネの寵児なの。
タイモンおまえはティマンドラか。
ティマンドラそうよ。
タイモンならば売女のままでいろ。おまえを使う男たちは、おまえを愛していない。
欲望を置いて行く男たちへ、病を持たせて帰せ。
塩辛く燃える時間を使え。奴らへ病を漬け込み、
薬湯の桶と発汗浴へ送り込め。薔薇色の頬をした若者を、
治療の桶と絶食と節制へ引きずり下ろせ。
ティマンドラ首を吊れ、この化け物。
アルシバイアディーズ許してやれ、優しいティマンドラ。こいつの正気は、
災難の中で溺れ、失われたのだ。
勇ましいタイモンよ、このところ俺には、わずかな金しかない。
その不足のため、貧しい兵たちは日ごとに
反乱を起こしかねぬ。俺は聞いた、そして悲しんだ、
呪われたアテネが、おまえの価値を心に留めず、
近隣の国々に踏みにじられようとした時のおまえの偉業を、
おまえの剣と運がなければ、そうなっていたことを忘れたと。
タイモン頼むから太鼓を鳴らし、立ち去ってくれ。
アルシバイアディーズ俺は友だ。大切なタイモン、おまえを哀れに思う。
タイモン俺を悩ませておきながら、どうして哀れめる。
俺は一人でいたい。
アルシバイアディーズならば、さらばだ。
ここに少し金がある。受け取れ。
タイモンしまっておけ。金は食えぬ。
アルシバイアディーズ高慢なアテネを瓦礫の山にした時には。
タイモンアテネと戦うのか。
アルシバイアディーズそうだ、タイモン。戦う理由もある。
タイモンおまえの征服で、神々が奴ら全員を滅ぼしますように。
そして征服したあと、おまえ自身も滅ぼしますように。
アルシバイアディーズなぜ俺まで、タイモン。
タイモン悪党どもを殺すことで、
おまえは俺の祖国を征服するため生まれたからだ。
金をしまえ。続けろ。ほら金だ。続けろ。
惑星がもたらす疫病となれ、ユピテルが
悪徳のそびえる都へ、その毒を垂らす時、
病んだ大気に疫病が満ちるように。剣に一人も飛び越させるな。
名誉ある老人も、白い髭だからと哀れむな。
そいつは高利貸しだ。貞淑を装う妻を斬れ。
正直なのは身に着けた服だけで、
本人は売春宿の遣り手だ。処女の頬に
鋭い剣を鈍らせるな。窓の格子越しに
男の目へ突き出していた、あの乳房は、
慈悲の帳面に記されてなどいない。
恐ろしい反逆者として書きつけろ。赤子も見逃すな、
えくぼの浮かぶ笑顔で、愚か者から慈悲を絞り取る赤子を。
そいつは私生児だと思え、神託が
いつかおまえの喉を切ると、曖昧ながら
告げた私生児だとな。悔やまず、細切れにしろ。見た目に惑わされぬと誓え。
耳と目に鎧を着せろ。
その鎧は、母親、乙女、赤子の泣き叫ぶ声にも、
聖衣を着た神官が血を流す姿にも、
ほんのわずかも貫かれぬものにしろ。兵を雇う金だ。
大いなる混乱を起こせ。そして怒りを使い果たしたら、
おまえ自身も滅茶苦茶になれ。何も言うな、行け。
アルシバイアディーズまだ金を持っていたのか。おまえがくれる金は受け取ろう、
だが助言のすべてを受け取る気はない。
タイモン受け取ろうと、受け取るまいと、天の呪いがおまえに降れ。
フリニアとティマンドラわたしたちにも金をちょうだい、優しいタイモン。まだあるの。
タイモン娼婦に商売を捨てると誓わせ、
遣り手婆には娼婦を作らせるだけある。さあ、売女ども、
上向きに前掛けを持ち上げろ。誓いを立てる資格などない、
もっとも、誓うだろうな、恐ろしい誓いを、
それを聞く不死の神々が激しく身震いし、
天の悪寒に襲われるほど。誓いは要らぬ。
おまえらの性根を信用する。売女のままでいろ。
敬虔な息で改心させようとする男が来たら、
売女の力を振り絞り、誘い込み、焼き尽くせ。
おまえらの内なる火で、奴の説教の煙を圧倒しろ。
寝返るな。だが半年もたてば、おまえらの苦痛が
まるで逆の教えを説くほどであれ。その薄い屋根を葺け、
死人の重荷で。絞首刑になった者の髪でも
構わぬ。かぶって、それでも男を騙せ。売女でいろ。
馬が顔の上で泥に脚を取られるほど、白粉を塗れ、
皺には梅毒を。
フリニアとティマンドラいいわ、もっと金を。それで次は。
信じて、金のためなら何だってする。
タイモン肺病の種を蒔け、
男たちの空洞になった骨へ。尖った向こう脛を打ち、
拍車を使えぬようにしろ。弁護士の声を割れさせ、
二度と偽りの権利を申し立てられず、
屁理屈を甲高く響かせられぬように。司祭を白く爛れさせろ、
肉の欲を声高に責めながら、
自分自身は信じてもいない奴を。鼻を落とせ、
根元まで平らに落とせ。鼻梁をすっかり奪え、
公の利益から、自分だけの利益を嗅ぎつけ、
先回りする奴の鼻を。巻き毛の乱暴者を禿げさせろ。
戦で傷一つ負わぬ法螺吹きどもにも、
おまえらから痛みを受け継がせろ。全員を病ませろ。
おまえらの励みが打ち負かし、鎮めるように、
あらゆる勃起の源を。ほら、もっと金だ。
おまえらは他人を地獄へ落とせ、この金にはおまえらを地獄へ落とさせろ。
最後は全員、溝を墓にしろ。
フリニアとティマンドラもっとお金をくれれば、もっと教えを聞くわ、気前のよいタイモン。
タイモンもっと売女になり、まずもっと害をなせ。手付けは渡した。
アルシバイアディーズアテネへ向け、太鼓を鳴らせ。さらばだ、タイモン。
うまくいけば、また会いに来よう。
タイモン望みどおりになるなら、二度とおまえには会わぬ。
アルシバイアディーズ俺は一度も、おまえを傷つけていない。
タイモンいや、おまえは俺を褒めた。
アルシバイアディーズそれを害と呼ぶのか。
タイモン人は毎日、それが害だったと知る。立ち去れ、
その猟犬どもも連れて行け。
アルシバイアディーズわれらは、ここにいるだけで不快にさせる。鳴らせ。
タイモン自然は人間の薄情さに病みながら、
それでも腹が減るとは。すべてに共通する母よ、おまえは。
タイモン測り知れぬ子宮と、尽きぬ乳房で、
すべてを産み、養う母よ。その同じ物質、
おまえの高慢な子、思い上がった人間を膨らませたものが、
黒い蟇、青い蝮、
金色の山椒魚、目のない毒虫を産み、
波打つ天蓋の下に生まれる、あらゆる忌まわしいものを、
ヒュペリオンの命を与える火が照らしている。
人間であるおまえの息子たちをすべて憎む、この俺へ、
その豊かな胸から、哀れな根を一本よこせ。
実り豊かに孕む、その子宮を焼き枯らし、
恩知らずな人間を、二度と産ませるな。
虎、竜、狼、熊を孕め。
新しい怪物を産め、おまえの上向きの顔から
はるか上、あの大理石の館へ、これまで一度も
見せたことのない怪物を。おお、根だ。ありがたい。
おまえの髄を、葡萄の木を、鋤に引き裂かれた野を枯らせ。
恩知らずな人間は、そこから取れた甘美な飲み物と
脂の滴る一口で、清らかな心を脂まみれにし、
そこから思慮のすべてを滑り落とすのだから。
タイモンまた人間か。疫病め、疫病め。
アペマンタスここへ来ればよいと教えられた。人の噂では、
おまえが俺の流儀を好み、真似しているそうだな。
タイモンそれは、おまえが犬を飼っていないからだろう、
犬なら真似してやったのに。肺病に罹れ。
アペマンタスおまえのこれは、病に冒された借り物の性根だ。
運が変わったせいで湧いた、哀れで男らしくない憂鬱にすぎぬ。
なぜ、その鋤だ。なぜ、この場所だ。
なぜ奴隷のような服、苦労を背負った顔をする。
おまえのおべっか使いどもは今も絹を着て、葡萄酒を飲み、柔らかな床で寝る。
病んだ香水の匂いを抱き締め、
タイモンなど初めからいなかったように忘れている。
難癖屋の技を身に着けて、森を辱めるな。
今こそおべっか使いになれ、栄えようと努めろ、
おまえを破滅させたものを使って。膝を蝶番にしろ、
仕えようと狙った相手の吐く息だけで、
帽子が吹き飛ぶほど深く頭を下げろ。そいつの最も卑しい癖を褒め、
素晴らしいと呼べ。おまえ自身が、そう言われてきたのだ。
おまえの耳は酒場の亭主のように、いらっしゃいと招き入れた、
悪党も、近づく者も、誰も彼も。
おまえが悪党へ変わるのは、まったく正しい。
もう一度富を持てば、また悪党どもへくれてやる。俺の姿を借りるな。
タイモンおまえに似ていたなら、俺は自分を投げ捨てる。
アペマンタスおまえは、おまえ自身に似たまま、自分を投げ捨てた。
長いこと狂人で、今は愚か者だ。何だ、おまえは、
荒涼たる大気という、乱暴な侍従が、
温めた肌着を着せてくれると思うのか。鷲より長く生きた、
苔むした木々が、従僕となって後ろにつき、
指さした方へ跳んで行くと思うのか。氷砂糖のように凍った冷たい小川が、
朝の口へ温かい滋養酒を飲ませ、
昨夜の食べすぎを治すと思うのか。生き物たちを呼んでみろ、
裸の性のまま、復讐する天の猛威にも負けず生き、
住まいも衣もない剥き出しの胴体を、
争い合う風雨へさらし、
自然そのものとして応じる生き物たちだ。おまえにお世辞を言えと命じろ。
ああ、そこで見つかるのは。
タイモンおまえという愚か者だ。立ち去れ。
アペマンタス今のおまえを、これまでより好きになった。
タイモン俺は前より、おまえが嫌いになった。
アペマンタスなぜだ。
タイモンおまえは不幸にまで、おべっかを使う。
アペマンタスおべっかではない。おまえは惨めな奴だと言っている。
タイモンなぜ俺を捜し出した。
アペマンタスおまえを苛立たせるためだ。
タイモンいつでも悪党か愚か者の仕事だ。
それで自分が楽しいのか。
アペマンタスああ。
タイモン何だ、悪党でもあるのか。
アペマンタスもし、その酸っぱく冷たい暮らしを身にまとったのが、
高慢を罰するためなら立派だった。だが、おまえは
無理やり、そうさせられただけだ。乞食でなければ、
もう一度、宮廷人になるだろう。自ら望んだ不幸は、
先の読めぬ栄華より長く続き、先に冠を得る。
栄華はいつも満たそうとし、決して満ちることがない。
自ら選ぶ不幸は、願いの頂にもういる。最良の境遇でも、満足がなければ、
心を引き裂かれ、最も惨めに生きることになり、
満足している最悪の境遇より、なお悪い。
それほど惨めなら、死にたいと願うべきだ。
タイモン俺より惨めな奴の息で、そう言われたくはない。
おまえは奴隷だ。運命の柔らかな腕に、
一度も優しく抱かれず、犬として育てられた。
もしおまえも俺たちと同じく、産着の頃から進んできたなら、
この短い世が差し出す、甘い階段を、
世のなすがままになる快楽を
好きに命じられる者たちへ差し出す階段を、おまえは自ら飛び込んだだろう、
世を挙げての放蕩へ。若さを溶かしただろう、
次々と違う情欲の寝床で。そして一度も学ばず、
節度という氷の教えを、目の前にある
砂糖まぶしの遊びを追っただろう。だが、この俺は、
世界を丸ごと菓子屋として持ち、
人々の口も、舌も、目も、心も、
使い道を考え切れぬほど、俺の務めに就かせていた。
数え切れぬ人間が、俺の体へ貼りついていた、
樫の木につく葉のように。だが冬のひと刷けで、
枝から落ち、俺をさらけ出し、裸にした、
吹きつけるあらゆる嵐の前へ。これに耐えることは、
よりよい暮らししか知らなかった俺には、相当な重荷だ。
おまえの性根は、苦しみの中で始まり、時が
苦しみに対して固くした。なぜ人間を憎む。
誰もおまえに、おべっかなど言わなかった。おまえは何を与えた。
呪うなら、おまえの父親、あの哀れなぼろ切れを
標的にしろ。腹いせに種を詰め込んだのだ、
どこかの女乞食へ。そして二人でおまえを調合した、
生まれながらの哀れな悪党を。消えろ、立ち去れ。
もし最悪の人間として生まれていなければ、
おまえも悪党か、おべっか使いになっていただろう。
アペマンタスまだ高慢なのか。
タイモンああ、おまえではないことを誇っている。
アペマンタス俺は、俺が
浪費家でなかったことを誇る。
タイモン俺は、今こそ浪費家であることを誇る。
今ある俺の富がすべて、おまえの腹に詰まっていたなら、
腹ごと吊るしてやってもよい。立ち去れ。
アテネの命すべてが、この根の中にあればよいのに。
こうして食い尽くしてやる。
アペマンタスほら、おまえの御馳走をましにしてやろう。
タイモンまず同席する者をましにしろ。おまえ自身を取り除け。
アペマンタスそうすれば、おまえがいなくなり、俺の同席者もましになる。
タイモンそれではましにならぬ、継ぎ当てしただけだ。
いや、ましになればよいのだが。
アペマンタスアテネを、どうしたい。
タイモンつむじ風で、おまえをアテネへ飛ばしたい。よければ、
向こうで、俺が金を持っていると伝えろ。見ろ、このとおりだ。
アペマンタスここでは金に使い道がない。
タイモン最良で、最も正しい使い道がある。
ここで金は眠り、金で雇われた害をなさぬ。
アペマンタスタイモン、夜はどこで寝る。
タイモン俺の上にあるものの下だ。
アペマンタス、おまえは昼、どこで食う。
アペマンタス腹が食い物を見つける所だ。いや、正しくは、俺がそれを食う所だ。
タイモン毒が従順で、俺の望みを分かってくれたなら。
アペマンタスどこへ毒を送る。
タイモンおまえの料理へ添えるソースにする。
アペマンタスおまえは人間の中ほどを一度も知らず、両端の極端だけを知った。金箔と香水に包まれていた時は、凝りすぎだと嘲られ、ぼろを着た今は何も知らず、正反対だからと蔑まれている。ほら、お節介者そっくりの西洋かりんだ、食え。
タイモン憎いものを食って、腹を満たしはせぬ。
アペマンタス西洋かりんが憎いのか。
タイモンああ、おまえに似てはいるがな。
アペマンタスもっと早く、お節介者どもを憎んでいれば、今の自分をもう少し愛せただろう。財産を使い果たしたあとも愛された浪費家を、一人でも知っているか。
タイモンおまえの言う財産もなしに愛された者を、おまえは一人でも知っているか。
アペマンタス俺自身だ。
タイモン分かった。犬を飼っておけるだけの財産はあったのだな。
アペマンタス世の中の何が、おまえのおべっか使いどもに一番近い。
タイモン一番近いのは女だ。だが男は、男こそ、そのものだ。アペマンタス、もし世界を思いどおりにできたら、どうする。
アペマンタス人間を始末するため、獣たちにくれてやる。
タイモンおまえ自身も人間の破滅に巻き込まれ、獣たちと一緒に獣として残りたいのか。
アペマンタスああ、タイモン。
タイモン何とも獣じみた野望だ。神々がおまえに叶えさせてくださるように。おまえが獅子なら狐に騙される。羊なら狐に食われる。狐なら、驢馬に訴えられただけで、獅子に疑われるだろう。驢馬なら自分の鈍さに苦しみ、それでも狼の朝飯として生きるだけだ。狼なら貪欲さに苦しめられ、夕食を得るため、たびたび命を危険にさらす。一角獣なら高慢と憤怒に滅ぼされ、自分の怒りに自分自身を征服させる。熊なら馬に殺される。馬なら豹に捕らえられる。豹なら獅子の近縁であり、血筋を示す斑点が、おまえの命を裁く陪審となる。安全は遠く離れることだけ、身を守る術は姿を消すことだけだ。どの獣なら、ほかの獣に支配されずに済む。そして獣へ変われば何を失うかも見えぬとは、今のおまえは何という獣だ。
アペマンタスおまえと話して喜べるとしたら、今の言葉は当たっていた。アテネ共和国は、獣の森になった。
タイモンならば、その驢馬はどうやって城壁を破り、おまえを町の外へ出した。
アペマンタス向こうから詩人と画家が来るぞ。人づきあいという疫病がおまえに降れ。俺は感染が怖いので道を譲る。ほかにすることが思いつかなくなったら、また会いに来よう。
タイモン生き物がおまえ一人になった時には、歓迎してやる。アペマンタスになるくらいなら、乞食の犬になる方がよい。
アペマンタスおまえは、生きている愚か者すべての頂点だ。
タイモンおまえが、唾を吐けるほど清潔ならよかったのに。
アペマンタス疫病に罹れ。おまえは呪うにも値しないほど悪い。
タイモンおまえの隣に立てば、どんな悪党も清らかに見える。
アペマンタス癩病なら、おまえが吐く言葉のほかにはない。
タイモン俺がおまえの名を口にすればな。
殴ってやる、だが俺の手が感染してしまう。
アペマンタス俺の舌が、その手を腐り落とせたなら。
タイモン消えろ、疥癬だらけの犬から生まれた奴。
おまえが生きていると思うだけで、怒りに殺されそうだ。
姿を見れば、気を失う。
アペマンタスおまえなど破裂してしまえ。
タイモン消えろ、
しつこい悪党。おまえのため、石を一つ
失うのが残念だ。
アペマンタス獣め。
タイモン奴隷め。
アペマンタス蟇め。
タイモン悪党、悪党、悪党。
この偽りの世界には、もううんざりだ。これから愛するのは、
この世で生きるため、どうしても要るものだけだ。
ならばタイモンよ、今すぐ自分の墓を用意しろ。
海の軽い泡が、毎日
墓石を打つ場所に横たわれ。墓碑銘を刻め、
俺の中の死が、他人どもの命を笑えるように。
タイモンおお、甘美なる王殺し、実の息子と父を
高くつく離縁へ追いやるもの。婚姻の神ヒュメンの
最も清らかな寝床を、まばゆく汚すもの。勇ましいマルスよ。
永遠に若く、瑞々しく、愛され、優美な求婚者、
その頬の赤みは、ダイアナの膝に積もる
聖なる雪さえ溶かす。目に見える神、
結びようのないものを、ぴたりと半田づけし、
口づけさせるもの。あらゆる舌を使い、
あらゆる望みのために語るもの。おお、心を試す試金石。
思い知れ、おまえの奴隷である人間が反乱した。おまえの力で、
奴らを互いに滅ぼす争いへ追い込み、獣たちが
世界を支配できるようにしろ。
アペマンタスそうなればよい。
だが、俺が死んだあとにな。おまえが金を持っていると触れ回ろう。
すぐに人が群がって来るぞ。
タイモン人が群がるだと。
アペマンタスああ。
タイモン頼む、その背中を見せてくれ。
アペマンタス生き延びて、自分の不幸を愛していろ。
タイモンそのまま長く生き、そのまま死ね。
タイモンこれで厄介払いだ。
また人間に似た物が来る。食え、タイモン、そして奴らを嫌悪しろ。
第一の盗賊あの男は、どこで金を手に入れたのだ。昔の財産の哀れな欠片、わずかな残りに違いない。金がすっかりなくなり、友人たちが離れたため、あんな憂鬱に陥ったのだ。
第二の盗賊大量の財宝を持っているという噂だ。
第三の盗賊ひとつ試してみよう。金に執着していなければ、簡単に都合してくれる。欲深く隠しているなら、どうやって手に入れる。
第二の盗賊確かに。持ち歩いてはいない、隠してある。
第一の盗賊あれが本人ではないか。
盗賊たちどこだ。
第二の盗賊聞いた人相と同じだ。
第三の盗賊あいつだ。俺は知っている。
盗賊たち達者か、タイモン。
タイモン何だ、盗人ども。
盗賊たち盗人ではない、兵士だ。
タイモンどちらでもある。それに女の息子でもある。
盗賊たちわれらは盗人ではない。多くの物が足りぬ人間だ。
タイモンおまえらに最も足りないのは、たっぷり食うための肉だ。
なぜ足りぬ。見ろ、大地には根がある。
ここから一里の内に、百もの泉が湧き、
樫はどんぐりを、茨は真っ赤な野薔薇の実をつける。
気前のよい主婦、自然は、すべての茂みに
山盛りの食事を並べている。足りぬだと。なぜ足りぬ。
第一の盗賊獣や鳥や魚のように、草や木の実や水だけでは、
人間は生きられぬ。
タイモン獣そのものも、鳥も、魚も食って生きられぬ。
おまえらは人間を食わねばならない。それでも礼は言おう、
盗賊を名乗り、盗賊らしく働き、
より神聖な姿を借りないことに。限られた職業の中には、
限りない盗みがある。卑しい盗人ども、
ほら金だ。行って、葡萄の狡猾な血を吸え、
高熱がおまえらの血を、泡立つまで煮立たせ、
首を吊られずに済むまでな。医者を信用するな。
奴の解毒剤は毒であり、医者が殺す人間は、
おまえらが奪う数より多い。財産と命を一緒に奪え。
悪事をなせ、やれ。やると公言しているのだから、
職人らしくな。盗みの手本を見せてやろう。
太陽は盗人だ、その強い引力で
広大な海から盗む。月は根っからの盗人、
青白い火を太陽から奪う。
海は盗人だ、その水のうねりで
月を塩辛い涙へ溶かす。大地も盗人だ、
あらゆる排泄物から盗んだ堆肥で
食い、子を産む。何もかも盗人だ。
おまえらの轡となり鞭となる法律は、その荒々しい権力で
自らの盗みを野放しにする。自分を愛するな。行け、
互いから奪え。もっと金だ。喉を切れ。
出会う者は全員、盗人だ。アテネへ行き、
店をこじ開けろ。おまえらが盗める物はすべて、
盗人が失う物だ。だが、それを理由に手を緩めるな。
金をやる。そして何をしようと、金に滅ぼされろ。
アーメン。
第三の盗賊盗賊を続けろと説得されて、危うく盗賊をやめさせられるところだった。
第一の盗賊人類への悪意から、ああ助言したのだ。われらの稼業を栄えさせるためではない。
第二の盗賊敵の言葉として信じよう。俺は稼業から足を洗う。
第一の盗賊まずアテネに平和が戻るか見よう。どれほど惨めな時代にも、正直に生きる道はある。
フレヴィアスおお、神々よ。
向こうにいる、蔑まれ、崩れ果てた人が、わが主人なのか。
衰えと破滅に満ちた、あの人が。おお、何という記念碑、
善行を悪しき者へ与えた、その驚くべき結末。
絶望的な貧しさが、名誉を
何という姿に変えたことか。
地上に、友人より卑しいものがあるだろうか、
最も高貴な心を、最も卑しい末路へ運ぶ友人より。
今の世相に、何と見事に合う教えだろう、
人は敵を愛せと願われた、あの教えは。
どうか、わたしがいつまでも愛し、むしろ求めますように、
害をなそうとする者を、すでに害をなす友よりも。
わたしに気づかれた。偽りのない悲しみを
御前に差し出そう。そして今もわが主人として、
この命で仕え続けよう。最愛の御主人。
タイモン消えろ。おまえは何者だ。
フレヴィアスわたしをお忘れですか、旦那様。
タイモンなぜそんなことを聞く。俺は人間を全員忘れた。
ならば、おまえが自分を人間だと認めるかぎり、おまえも忘れた。
フレヴィアスあなたに仕えた、貧しくも正直な使用人です。
タイモンならば、おまえなど知らぬ。
俺のそばに正直な人間など、一人もいなかった。俺が抱えていたのは、
悪党どもへ肉を運んで仕える、ろくでなしばかりだ。
フレヴィアス神々が証人です。
破滅した主人のため、これほど真実の悲しみを身にまとった家令は、
この哀れなわたしの目のほか、誰一人おりません。
タイモン何だ、泣いているのか。もっと近くへ来い。ならば、おまえを愛そう、
おまえは女であり、火打石のような
人類を捨てたからだ。奴らの目が涙を与えるのは、
情欲か笑いに溢れた時だけ。憐れみは眠っている。
奇妙な時代だ、悲しんで泣かず、笑って泣くとは。
フレヴィアスどうか、わたしを思い出してください、善き御主人。
この悲しみを受け入れ、わずかな財産が残るかぎり、
今も家令として、わたしをおそばに置いてください。
タイモン俺に家令がいたのか、
これほど誠実で、正しく、今これほど心を慰める者が。
危うい俺の性根が、もう少しで穏やかになりそうだ。
顔を見せてくれ。確かに、この男は
女から生まれたのだ。
すべてをひと括りにし、一人の例外も認めなかった性急さを許したまえ、
永遠に冷静なる神々よ。俺はここに宣言する、
正直な人間が一人いる。聞き違えるな、ただ一人だ。
これ以上は御免だ。そして、そいつは家令だ。
どれほど喜んで、人類すべてを憎みたかったことか。
おまえは自分だけを救った。だが、おまえを除く全員は、
俺の呪いで打ち倒す。
今のおまえは、賢いというより、正直すぎるように見える。
俺を踏みつけ、裏切っていれば、
もっと早く次の奉公口を得られただろう。
多くの者が、そうして二人目の主人へたどり着く、
最初の主人の首を踏み台にして。だが、本当のことを言え。
俺はどれほど確かでも、永遠に疑わずにはいられぬ。
おまえの親切は、巧妙な欲から出ているのではないか。
高利貸しの親切でないとしても、金持ちが贈り物をする時のように、
一を与え、二十の見返りを期待しているのではないか。
フレヴィアスいいえ、最も尊い御主人。あなたの胸に
疑いと不信が居場所を得たのは、ああ、遅すぎました。
宴を開いていた時こそ、偽りの時代を恐れるべきでした。
財産が最も乏しくなってから、疑いはいつもやって来ます。
天が御存じです、今お見せしているものは、ただ愛だけ、
比べるものなき、あなたの御心への義務と忠誠、
あなたの食事と暮らしを案ずる心です。どうか信じてください、
最も尊敬する御主人、
今すぐにせよ、先の望みにせよ、わたしへ向かう
どんな利益も、この一つの願いとなら、
すべて取り替えます。あなたがわたしへ報いる力と財産を持つこと、
すなわち、あなた御自身が再び豊かになることと。
タイモン見ろ、やはりそうだ。おまえ一人が正直な人間だ。
さあ、受け取れ。神々が俺の不幸の中から、
おまえへ宝を送ってくださった。行け、豊かに幸せに暮らせ。
ただし条件がある。人間から遠く離れて住め。
全員を憎み、全員を呪い、誰にも慈悲を見せるな。
飢えた肉が骨からずり落ちるまで、
乞食を助けるな。犬には与えろ、
人間には拒め。牢獄に奴らを呑み込ませ、
借金で何も残らぬまで枯らせ。人間を、雷に焼かれた森のようにしろ。
病に、偽りの血を舐め尽くさせろ。
では、さらばだ。栄えろ。
フレヴィアスああ、ここに残らせてください、
御主人、あなたをお慰めさせてください。
タイモン呪いが嫌いなら、
残るな。祝福され、自由であるうちに逃げろ。
二度と人間を見るな。そして俺にも、二度とおまえを見せるな。
