ステファノー何も言うな。樽が空になったら水を飲もう。それまでは一滴も飲まん。だから勇気を保ち、敵船へ乗り込め。召使い怪物、俺のために飲め。
トリンキュロー召使い怪物だって。この島の馬鹿らしさときたら。島には五人しかいないそうだ。そのうち三人が俺たち。残りの二人も俺たち並の頭なら、国家はぐらぐらだ。
ステファノー召使い怪物、命じたら飲め。両目が、もう頭の中へ沈みかけているぞ。
トリンキュローほかのどこに据えるんだ。尻尾に目がついていたら、そりゃ見事な怪物だろうけどな。
ステファノー俺の召使い怪物は、舌をサック酒で溺れさせた。だが俺は、海にも溺れさせられなかった。岸へたどり着くまで、合わせて三十五リーグは泳いだ。この光にかけて、怪物、お前を俺の副官、いや軍旗にしてやる。
トリンキュローお望みなら副官に。こいつは、まっすぐ立つ軍旗じゃない。
ステファノームッシュー怪物、我々は逃げないぞ。
トリンキュロー歩きもしないだろう。犬みたいに寝転がる。しかも何も言わずにな。
ステファノー月の子牛よ、よい月の子牛なら、生まれて一度くらい物を言え。
キャリバン閣下、ご機嫌はいかがです。靴を舐めさせてください。
あいつには仕えません。勇敢ではない。
トリンキュロー嘘をつけ、この上なく無知な怪物。俺は警吏にだって、体当たりできる具合だ。何だ、この堕落した魚め。今日、俺ほどサック酒を飲んだ臆病者が、今までに一人でもいたか。半分が魚、半分が怪物にすぎぬくせに、怪物じみた嘘をつくのか。
キャリバンほら、こいつが俺を嘲る。閣下、許しておくのですか。
トリンキュロー閣下だと。怪物が、これほど生まれつきの馬鹿とはな。
キャリバンほら、ほら、まただ。お願いです、噛み殺してください。
ステファノートリンキュロー、舌を行儀よく頭の中へ置け。反乱を起こすなら、次の木で吊るすぞ。哀れな怪物は俺の臣民だ。侮辱を受けさせぬ。
キャリバン気高き閣下、ありがとうございます。さきほどの願いを、もう一度お聞きくださいますか。
ステファノーもちろん聞こう。跪いて、もう一度言え。俺は立って聞く。トリンキュローも立っていろ。
キャリバン前にもお話ししたように、俺は暴君の奴隷です。魔法使いで、術を使い、俺から島を騙し取りました。
エアリエル嘘をつけ。
キャリバン嘘をつくのは、お前だ、このふざけた猿め。
勇敢なご主人様に、お前を殺してほしい。
俺は嘘をつかない。
ステファノートリンキュロー、こいつの話を、もう一度でも邪魔したら、この手にかけて、お前の歯を何本か、その場所から追い出してやる。
トリンキュロー何だ、俺は何も言ってないぞ。
ステファノーなら黙れ。それ以上言うな。続けろ。
キャリバン魔法を使い、奴はこの島を手に入れた。
俺から奪ったのです。閣下が、
奴へ復讐してくださるなら。閣下に勇気があることは知っています。
でも、こいつには勇気がない。
ステファノーそれは間違いない。
キャリバン閣下が島の王となり、俺はお仕えします。
ステファノーどうすれば、それを成し遂げられる。その男の所まで、俺を連れていけるか。
キャリバンはい、はい、閣下。眠っている奴を差し出します。
そこで頭へ釘を打ち込めます。
エアリエル嘘をつけ。お前にはできない。
キャリバン何だ、このまだら服の間抜け。この卑しい道化め。
閣下、お願いです。こいつを殴り、
瓶を取り上げてください。それがなくなれば、
こいつが飲めるのは塩水だけです。
俺は清らかな泉の場所を教えません。
ステファノートリンキュロー、これ以上、危険へ踏み込むな。もう一言でも怪物を遮ったら、この手にかけて、慈悲を戸の外へ追い出し、お前を干物にしてやる。
トリンキュロー何だ、俺が何をした。何もしていない。もっと離れていよう。
ステファノーこいつを嘘つきと言っただろう。
エアリエル嘘をつけ。
ステファノー俺が嘘つきだと。なら、これを食らえ。
ステファノーこれが気に入ったなら、今度も俺を嘘つきと呼べ。
トリンキュロー俺は嘘つきなんて言っていない。正気だけでなく、耳まで失ったのか。そんな瓶には疫病あれ。サック酒と飲みすぎが、こんなことをする。お前の怪物には家畜病を。お前の指は、悪魔に持っていかれろ。
キャリバンははは。
ステファノーさあ、話を続けろ。頼むから、お前はもっと離れていろ。
キャリバンもっと殴ってください。少したったら、
俺も殴ります。
ステファノーもっと離れろ。さあ、続けろ。
キャリバンお話ししたとおり、奴はいつも、
午後になると眠ります。そこで殺せます。
ただし、まず魔法の本を奪ってください。
それから薪で頭蓋を叩き割るか、
杭で腹を刺すか、短刀で喉を切る。
何より先に、本を手に入れるのを忘れないでください。
本がなければ、奴は俺と同じ馬鹿にすぎず、
命じられる精霊は一人もいない。
精霊たちは皆、俺と同じくらい、根の深いところから奴を憎んでいます。
本だけは焼いてください。
奴は立派な道具を持っています。
奴自身、そう呼んでいます。
いつか家を持ったら、それで飾るつもりです。
そして何より深く考えるべきなのは、
娘の美しさです。奴自身、並ぶ者がないと呼んでいます。
俺が見た女は、母シコラクスと、その娘だけ。
だが娘は、大きなものが小さなものを超えるほど、
シコラクスをはるかに超えています。
ステファノーそれほど立派な娘なのか。
キャリバンはい、閣下。請け合います。閣下の寝床にふさわしい。
立派な子を産むでしょう。
ステファノー怪物、俺はこの男を殺す。娘と俺が王と女王になる。我らが陛下をお守りあれ。トリンキュローとお前は、副王だ。この企ては気に入ったか、トリンキュロー。
トリンキュロー素晴らしい。
ステファノー手を出せ。殴ったことは悪かった。だが生きている間、舌を行儀よく頭の中へ置いておけ。
キャリバン半時間もすれば、奴は眠ります。
そのとき殺しますか。
ステファノーああ、名誉にかけて。
エアリエルこのことを主人へ知らせよう。
キャリバン閣下のおかげで、楽しくなりました。喜びでいっぱいです。
陽気にやりましょう。さっき教えてくださった
輪唱を歌いませんか。
ステファノー怪物、お前の願いなら道理を通そう。どんな旋律もな。さあ、トリンキュロー、一緒に歌うぞ。
ステファノー嘲り、追い払え。
追い払い、嘲れ。
思いは自由。
キャリバンその節ではありません。
ステファノーこれは何だ。
トリンキュロー俺たちの輪唱の節だ。姿のない誰かさんが演奏している。
ステファノー人間なら、姿を見せろ。悪魔なら、好きにしやがれ。
トリンキュローああ、俺の罪をお許しください。
ステファノー死ぬ者は借金を全部払う。お前など恐れぬ。どうかお慈悲を。
キャリバン怖いのですか。
ステファノーいいや、怪物、俺は怖くない。
キャリバン怖がらないでください。この島は音で満ちています。
響きと甘い調べ。喜びを与え、傷つけはしません。
ときには千の弦楽器が鳴り、
俺の耳の周りで低く響きます。ときには歌声が聞こえます。
長い眠りから目覚めたばかりでも、
その声を聞けば、また眠りへ誘われます。
そして夢の中では、雲が開き、
富が姿を見せ、今にも俺の上へ降り注ぐと思えます。
だから目覚めると、もう一度夢を見たいと泣くのです。
ステファノーこの国は、俺にとって素晴らしい王国になりそうだ。音楽を、ただで聞ける。
キャリバンプロスペローを殺したあとには。
ステファノーそれは、すぐだ。話は覚えている。
トリンキュロー音が遠ざかっていく。あとを追い、それから仕事をしよう。
ステファノー案内しろ、怪物。我々がついていく。この太鼓打ちの姿が見たい。見事に打ち鳴らす。
トリンキュロー来るか。俺もついていくぞ、ステファノー。
