使者もし、卿! もし!
ヘイスティングズ(奥から)戸を叩くのは誰だ?
使者スタンリー卿からの使いでございます。
ヘイスティングズ今、何時だ?
使者四時を打つところでございます。
ヘイスティングズおまえの主人は、この長ったらしい夜々に眠れんのか?
使者これから申し上げることからしますと、そのようでございます。
まず、卿にくれぐれもよろしくとのことでございます。
ヘイスティングズそれから?
使者それから、こう言伝てを。
今夜、猪に兜を剃り落とされる夢をご覧になったそうで。
その上、評議が二手に分かれて開かれるが、
片方の評議で決まったことが、もう片方の評議で
あなた様とご自身を泣かせることになりかねぬ、と。
それゆえ、卿のご意向を伺って参れとのことでございます。
ただちにご主人様とともに馬に乗り、
全速力で北をさして落ちのびてはくださらぬか、
ご主人様の魂が予感している危険を逃れるために、と。
ヘイスティングズ帰れ、使いの者、帰れ、おまえの主人のもとへ。
二手に分かれた評議など恐れるなと伝えろ。
片方にはご主人とわたしがおり、
もう片方にはわたしの忠実なケイツビーがいる。
われらの身に関わることが持ち上がれば、
わたしの耳に入らぬはずはないのだ。
心配は根も葉もない浅慮と伝えろ。
それに夢のことだが、驚いたな、あの方ともあろうものが、
寝苦しい眠りのたわごとを真に受けるとは。
猪に追われもせぬうちから逃げ出せば、
かえって猪をけしかけて、追う気もなかったものを
追いかけさせるようなものだ。
行って、ご主人に伝えろ、起きてわたしのところへ来られよとな。
ふたりして、そろってロンドン塔へ参ろう。
猪がわれらを丁重に扱うのを、とくとご覧に入れるとも。
使者かしこまりました、そのようにお伝えいたします。
ケイツビー卿には、幾重にもおはようございます!
ヘイスティングズおはよう、ケイツビー。ずいぶんと早起きだな。
何か報せは、ないか、このぐらつくご時世に?
ケイツビーまことに、よろめく世の中でございますよ、卿。
そして思いますに、この世が真っ直ぐ立つことは、
リチャード様がこの王国の花冠を戴くまでありますまい。
ヘイスティングズ何だと! 花冠を戴くとは! 王冠のことを言っているのか?
ケイツビーさようでございます、卿。
ヘイスティングズこの首を肩から切り落とされるほうがましだ、
王冠がそんな汚らわしい置き場違いに置かれるのを見るくらいなら。
だが、あの方が王冠を狙っていると、おまえは察しているのか?
ケイツビーええ、命に懸けて。その上あの方は、その儲け仕事の
お味方に、あなた様が進んで加わってくださると期待しておられます。
それでこの吉報をお届けせよとのことで——
まさに本日、あなた様のご政敵、
王妃の身内どもが、ポンフレットで死ぬことになっております。
ヘイスティングズなるほど、その報せに喪服を着る気はないな、
連中は一貫してわたしの敵だったのだから。
だが、リチャードの側に票を投じて、
わが主君の正統な世継ぎたちを締め出すことは、
神もご照覧あれ、死んでもやらんぞ。
ケイツビー神が卿を、そのご立派なお心のままにお守りくださいますように!
ヘイスティングズそれにしても、一年経っても笑い草にできそうだ、
わたしを主君の憎しみに引き込んだ連中の
悲劇を、この目で見届けるまで生き延びたとはな。
いいか、ケイツビー——
ケイツビー何でございましょう、卿?
ヘイスティングズわたしがふた回りも歳を取らぬうちに、
まだ夢にも思っていない連中を、幾人か片づけて追い払ってやる。
ケイツビー死ぬというのは嫌なものでございますな、卿、
覚悟もなく、思ってもみないときには。
ヘイスティングズおお、まったくだ、まったくひどいものだ! そしてまさにそれが、
リヴァーズ、ヴォーン、グレイの身に降りかかる。この先、
ほかの誰かの身にも降りかかるだろうよ、おまえやわたしと同じくらい
安泰のつもりでいる連中のな。知ってのとおり、われらふたりは
気高いリチャードとバッキンガムのお気に入りだが。
ケイツビーお二方とも、あなた様を高く買っておいでです。
ケイツビー高く買って、その首を橋の上へ高く上げるおつもりだ。
ヘイスティングズ知っているとも。それだけの働きはしてきたのだ。
ヘイスティングズこれはこれは。猪狩りの槍はどうなさった?
猪が怖いというのに、そんな丸腰でお出かけか?
スタンリー卿、おはよう。おはよう、ケイツビー。
冗談はいくらでもどうぞ。だが、聖十字架に懸けて、
わたしはこの二手に分かれた評議が気に入らんのだ。
ヘイスティングズ卿、
わたしも命は惜しい、あなたと同じくらいにな。
それに誓って言うが、生まれてこのかた、
命が今ほど大切に思えたことはない。
考えてもみられよ、われらの安泰を確信していなければ、
わたしがこんなに意気揚々としていられるものか?
スタンリーポンフレットの卿たちも、ロンドンを馬で発ったときは
陽気なもので、わが身は安泰と思い込んでいた。
実際、疑う理由など何ひとつなかったのだ。
だがご覧のとおり、日はあっという間に搔き曇った。
この出し抜けの遺恨の一突きが、わたしは気がかりでな。
神に祈るよ、これがわたしの取り越し苦労で済みますように!
さて、ロンドン塔へ参りますか? 日も高くなった。
ヘイスティングズ参ろう、参ろう、ご一緒に。ときにご存じか、卿?
今日、あなたの言われた卿たちが打ち首になる。
スタンリーあの方々の忠義からすれば、首を頂いたままでいてよいのは、
訴えた連中が帽子を頂いているよりも、あの方々のほうだ。
まあ、参りましょう、卿。
ヘイスティングズ先に行っていてくれ。この男と話していく。
ヘイスティングズどうだ、おまえ! 景気はどうかね?
従吏卿にお尋ねいただけるとは、それだけで上向きでございます。
ヘイスティングズ教えてやろう、わたしの景気は今が一番だ、
この同じ場所でおまえに前に会ったときよりもな。
あのときのわたしは、囚人としてロンドン塔へ送られる道すがらだった、
王妃の一味の讒言でな。
だが今は、いいか——ここだけの話だぞ——
今日という日に、あの敵どもは死刑になり、
わたしの羽振りは、かつてないほど良いのだ。
従吏神様がその御運を、末永くお守りくださいますように!
ヘイスティングズありがとうよ。ほら、わたしの代わりに一杯やってくれ。
従吏神のご加護を、卿に!
司祭これは卿、お目にかかれて何よりでございます。
ヘイスティングズありがとう、サー・ジョン、心からありがとう。
この前のお勤めの借りが、まだ返せていないな。
次の安息日に来てくれ、必ず礼をするから。
バッキンガムおや、司祭とお話ですか、侍従長どの?
司祭が入り用なのは、ポンフレットのご友人たちのほう。
あなたはまだ、懺悔の用事など抱えておられぬでしょうに。
ヘイスティングズいや、まったく、この聖職の方に会ったとたん、
今おっしゃったあの人たちのことが、ふと頭に浮かびましてな。
ときに、ロンドン塔へお出でか?
バッキンガムええ、卿。ですが長居はしません。
あなたより先に、あちらを引き上げるでしょう。
ヘイスティングズおそらくそうでしょうな、わたしは昼食を頂いていくので。
バッキンガム(傍白)夕食もな、おまえはまだ知らんが。
さあ、参りましょうか?
ヘイスティングズお供しましょう、卿。
