大司教昨夜はノーサンプトンにお泊まりと聞いております。
今夜はストーニー・ストラットフォードにお着きで、
明日か明後日には、こちらへお見えでしょう。
公爵夫人皇太子に会うのが待ち遠しくてなりません。
最後に会ってから、ずいぶん大きくなったでしょうね。
エリザベス王妃ところが、そうでもないと聞きますよ。うちのヨークのほうが、
背丈ではもう追い越さんばかりだとか。
ヨークええ、母上。でも、ぼくはそうでないほうがよかった。
公爵夫人おや、坊や、大きくなるのは良いことですよ。
ヨークおばあ様、ある晩、夕食の席で、
リヴァーズの伯父様が、ぼくが兄上より
背が伸びると話したら、グロスターの叔父様が言ったんです、
「なるほど、小さな草には品がある、大きな雑草はよく伸びる」って。
それからぼくは、あまり早く伸びたくなくなりました。
きれいな花はゆっくり育ち、雑草は先を急ぐんだから。
公爵夫人まあ、まあ、その格言、それをおまえに向かって言った
当人には当てはまらなかったこと。
あれは小さい頃、それはそれは哀れっぽい子で、
育ちが遅くて、ゆっくりで——
その理屈が本当なら、今ごろさぞ品よくなっているはずですよ。
大司教いや、奥方様、間違いなく、そうなっておられますとも。
公爵夫人そうだといいのですけれど。まあ、母親には疑わせておいてください。
ヨーク本当に、あのとき思いついていれば、
叔父様の伸び方を当てこすって、やり返せたのに。
ぼくの伸び方を当てこすられたのより、もっと痛いところを。
公爵夫人どんなふうに、可愛いヨーク? ぜひ聞かせておくれ。
ヨークええとね、叔父様はあんまり育ちが早くて、
生まれて二時間でパンの皮を齧れたんですって。
ぼくは歯が一本生えるのに、まる二年かかりました。
おばあ様、これなら歯応えのある冗談になったでしょう。
公爵夫人これ、可愛いヨーク、誰がそんなことをおまえに?
ヨークおばあ様、叔父様の乳母です。
公爵夫人乳母ですって! あれはおまえの生まれる前に死にましたよ。
ヨーク乳母でないなら、誰から聞いたのか分かりません。
エリザベス王妃口の減らない子。おやめなさい、利口が過ぎますよ。
大司教王妃様、お子様をお叱りになりませんよう。
エリザベス王妃壁に耳あり、と申しますから。
大司教使者が参りました。報せは何か?
使者申し上げるのも心の痛む報せでございます。
エリザベス王妃皇太子はご無事か?
使者はい、王妃様、お健やかでございます。
公爵夫人では、何の報せです?
使者リヴァーズ卿とグレイ卿がポンフレットへ送られました。
サー・トマス・ヴォーンとともに、囚人として。
公爵夫人誰が捕らえさせたのです?
使者権勢並びなき両公爵、
グロスターとバッキンガムでございます。
エリザベス王妃何の罪で?
使者わたしの知るかぎりは、すべて申し上げました。
なぜ、何のかどで、あの方々が捕らえられたのかは、
一切存じません、王妃様。
エリザベス王妃ああ、わたしたちの家の没落が見える!
虎がついに、おとなしい雌鹿に飛びかかった。
おごり高ぶる暴虐が、守り手もない無垢な玉座に、
のさばり始めたのだ。
来るなら来るがいい、破滅も、死も、殺戮も!
絵図面を見るように、一切の終わりが見えます。
公爵夫人呪われた、休みなき争いの日々よ、
この目はおまえたちを、どれほど見てきたことか!
夫は王冠を得ようとして命を落とし、
息子たちは浮き沈みに翻弄され続け、
わたしはその得失に一喜一憂した。
やっと座が定まり、内輪の争いも
きれいに吹き払われたと思えば、勝った当人たちが、
身内に戦を仕掛け合う。血が血に、
肉親が肉親に牙をむく。ああ、道理も何もない
狂った暴虐よ、その忌まわしい癇癪を終わりにしろ。
でなければ、わたしを死なせておくれ、もう二度と死を見ずに済むように!
エリザベス王妃おいで、坊や。聖域へ参りましょう。
お義母様、ごきげんよう。
公爵夫人わたしも一緒に参ります。
エリザベス王妃あなたには、その訳がありません。
大司教王妃様、お行きなさいませ。
財宝もお持ち物も、あちらへお運びなさい。
わたしはと申せば、お預かりしている国璽を
あなた様にお返しいたします。あなた様とお身内を
大切にお守りするのと同じだけ、わたしの身にも幸いがありますように!
さあ、聖域までご案内いたしましょう。
