フランス王女愛しい皆さん、帰る前に、わたしたちは大金持ちね、
市の贈り物が、こんなに豊かに届くなら。
ダイヤモンドの城壁に囲まれた貴婦人よ。
恋する王から届いたものを、御覧なさい。
ロザライン王女様、それと一緒に、ほかには何も。
フランス王女これだけ。いえ、紙一枚へ、ぎゅうぎゅうに
詰め込めるほどの恋が、韻に乗って来たわ。
表も裏も、余白まで、びっしり書き尽くし、
仕方なく、キューピッドの名前の上へ封蝋を押してあった。
ロザラインそれなら、あの神様も蝋で育つでしょう、
五千年もの間、ずっと少年なのですから。
キャサリンええ、それに手強く、たちの悪い、絞首台行きの悪童よ。
ロザラインあなたは、あの子と決して仲よくなれない。お姉様を殺したもの。
キャサリンあの子が姉を、憂鬱で、悲しく、重苦しくした。
それで姉は死んだの。あなたのように軽ければ、
陽気で、身軽で、いつも動き回る心なら、
死ぬ前に、お祖母さんになれたでしょう。
あなたもなれるわ。軽い心は長生きするから。
ロザラインその軽い言葉に隠した、暗い意味は何、ねずみちゃん。
キャサリン暗い美人の、軽い性分という意味。
ロザラインあなたの意味を見つけるには、もっと明かりが必要ね。
キャサリン鼻息を荒くして吸えば、その灯を消してしまう。
だから暗いまま、この議論を終えましょう。
ロザラインほら、何をするにも、いつも暗がりなのね。
キャサリンあなたは違うわ、軽い女ですもの。
ロザライン本当に、あなたには重みを置かない。だから、あなたは軽い。
キャサリンわたしに重みを置かない。ああ、わたしを思ってくれないのね。
ロザラインもっともな理由よ。「治しようがなければ、思うこともない」。
フランス王女二人とも、見事な打ち合い。機知の一勝負だったわ。
でもロザライン、あなたにも恋の印があるでしょう。
誰から。何をもらったの。
ロザライン王女様にも、分かっていただきたいわ。
わたしの顔が王女様ほど美しかったなら、
わたしの印も同じほど立派でしょう。これが証人。
いえ、詩もあります。ビローンには感謝しなくては。
詩の音数は正しい。その数え上げまで正しいなら、
わたしは地上で最も美しい女神です。
二万もの美女が、わたし一人へ比べられている。
おお、あの人、手紙の中へ、わたしの肖像を描いたのね。
フランス王女似ているところは。
ロザライン文字の黒さは、よく似ています。褒め言葉は、まるで似ていません。
フランス王女インクのように美しい。よい結論ね。
キャサリン手習い帳の、大きなBの字のように色白よ。
ロザライン絵筆に御用心。借りを残して死にたくはないわ、
わが赤い日曜文字さん、わが黄金文字さん。
ああ、その顔が、Oの字だらけでなければ。
キャサリンその冗談には、疱瘡あれ。口の悪い女は、みんな呪われろ。
フランス王女でもキャサリン、美しいデュメインから、何が届いたの。
キャサリン王女様、この手袋です。
フランス王女二つ一組では、送らなかったの。
キャサリンええ、王女様、二つ。それに加えて、
誠実な恋人を歌う詩が、何千行か。
偽善を膨大に翻訳した代物、
ひどい出来で、底知れぬ単純さです。
マライアロンガヴィルから、これはわたしへ、それに、この真珠。
手紙は、半マイルも長すぎます。
フランス王女でしょうね。でも心の中では、願っていない。
首飾りはもっと長く、手紙は短ければ、と。
マライア願っていますとも。違うなら、この両手が二度と離れませんように。
フランス王女恋する男たちを、こうして笑うとは、わたしたちも賢い娘ね。
ロザライン笑われるものを買い込む、あの人たちは、もっと愚かです。
あのビローンを、帰る前に苦しめてやる。
あの人が、ほんの一週でも、確かに恋の檻へ入ったと分かれば。
どれほど、へつらわせ、請わせ、探し求めさせ、
頃合いを待たせ、時機をうかがわせ、
溢れる機知を、実らぬ韻へ費やさせ、
務めのすべてを、わたしの命令どおりにさせ、
人を笑うわたしを高慢にできることを、誇らせてやるでしょう。
あれほど高飛車に、あの人の身の上を支配し、
あの人を、わたしの道化に、わたしを、あの人の運命にしてやる。
フランス王女機知が愚か者へ変わった時ほど、
捕らえられて、固く捕らわれるものはない。知恵から孵る愚行には、
知恵の保証と、学問の助けがあり、
機知自身の優雅さが、学ある愚か者を飾るから。
ロザライン若い血も、あれほど激しく燃えはしない、
厳粛さが反乱を起こし、放埒へ走る時ほどには。
マライア愚か者の愚行も、これほど強い印を残しません、
賢者が機知にのぼせ、その身を愚かにする時ほどには。
機知の力をすべて注ぎ込んで、
単純さにも価値があると、機知で証明してしまうから。
フランス王女ボイエットが来る。顔に笑いを浮かべて。
ボイエットおお、笑いに刺し貫かれました。王女様は、どちらに。
フランス王女知らせは何、ボイエット。
ボイエット御用意を、王女様、御用意を。
武装せよ、娘たち、武装せよ。平和を狙う一隊が
馬を進めています。恋が変装し、近づいて来る、
口上で武装して。不意を突かれますよ。
機知を召集し、立って、みずからを守るか、
臆病者のように頭を隠し、ここから逃げるかです。
フランス王女聖ドニよ、聖キューピッドへ向かえ。何者たちが
息を武器に、こちらへ突撃するの。言いなさい、斥候、言いなさい。
ボイエット涼しい楓の木陰で、
半時間ほど、目を閉じようと思いました。
すると、何と、目論んだ休息を邪魔しようと、
あの木陰へ向かって来るのが見えたのです、
王と、その仲間たちが。用心深く、
わたしは隣の茂みへ、そっと忍び込み、
これから皆様がお聞きになることを、聞き取りました。
間もなく、あの方々は変装し、ここへ来ます。
先触れは、可愛く、いたずら者の小姓、
口上を、すっかり暗記していました。
あの場で、動作も抑揚も教えられ、
「こう話せ」「こう体を構えろ」と。
そして何度も何度も、心配していました、
堂々たる御前では、あの子が台詞を失うのでは、と。
「なぜなら」と王が言いました、「天使を見るのだから。
だが恐れるな、大胆に話せ。」
少年は答えました、「天使は邪悪ではありません。
悪魔なら、怖がったでしょうけれど。」
すると皆が笑い、少年の肩を叩き、
褒め言葉で、大胆な悪童を、さらに大胆にしました。
一人は、こう肘をこすり、にやついて誓いました、
これほど見事な口上は、かつてなかった、と。
もう一人は、人差し指と親指を合わせ、
叫びました、「ウィア。何が来ようと、やり遂げる。」
三人目は跳びはね、「万事順調」と叫び、
四人目は爪先で回り、そのまま転びました。
すると、皆そろって地面へ転がり、
あまりに熱烈で、あまりに深い笑いだったので、
この滑稽な癇癪の中、厳かな涙まで現れ、
あの方々の愚かさを、たしなめておりました。
フランス王女でも、何のため。何のため、わたしたちを訪ねて来るの。
ボイエットそうです、そうです。身なりは、こうです、
わたしの見たところ、モスクワ人か、ロシア人のよう。
目的は、談じ、口説き、踊ること。
一人ずつ、自分の恋の妙技を披露します、
それぞれの恋人へ。誰が誰かは、
自分たちの贈った、別々の印で見分けるつもりです。
フランス王女そうするつもり。ならば、勇士たちへ難題を課しましょう。
皆さん、わたしたちも一人ずつ仮面を着けます。
あの男たちは、一人として恵まれません、
どれほど求めても、貴婦人の顔を見ることには。
さあ、ロザライン、あなたは、この印を着けて。
そうすれば、王が、愛しい人と思って、あなたを口説く。
ほら、愛しい人、これを取って、あなたの印を、わたしへ。
そうすれば、ビローンは、わたしをロザラインと思う。
あなたたちも印を取り替えて。そうすれば恋人たちは、
この入れ替えに欺かれ、あべこべの相手を口説くわ。
ロザラインでは、始めましょう。印は、一番目立つ所へ着けて。
キャサリンでも、この入れ替えで、何をなさるおつもりです。
フランス王女わたしの狙いは、あの人たちの狙いを、くじくこと。
あの人たちは、ふざけた楽しみで、これをするだけ。
だから、ふざけには、ふざけを返す。それだけよ。
一人ずつ胸に秘めたことを、打ち明けるでしょう、
取り違えた恋人へ。そして次に会う時、
仮面を外した顔で、語り、挨拶しながら、
その打ち明け話を使い、笑ってやるの。
ロザラインでも、あの人たちが望んだら、踊りますか。
フランス王女いいえ、死んでも、一歩も動かない。
書いてきた口上へも、まったく愛想を見せない。
話している間、一人ずつ顔を背けましょう。
ボイエットそんな侮りを受ければ、話す者の心は死に、
覚えた台詞も、頭から、すっかり離縁します。
フランス王女だから、するのよ。先触れが台詞を失えば、
残りは決して登場できない。間違いないわ。
余興で余興を打ち倒すほど、面白い余興はない。
あの人たちのものを、わたしたちのものにし、わたしたちのものは、わたしたちだけのものにする。
こうして、企てられた芝居を笑いながら、わたしたちは居残り、
あの人たちは、存分に笑われ、恥じて立ち去る。
ボイエットトランペットです。仮面を。仮面の一行が来ます。
モス御機嫌よう、地上で最も豊かな美女の皆様。
ボイエット豪華なタフタより、豊かではない美女たちだ。
モス最も美しい貴婦人たちの、神聖なる一団、
モスかつて人の目へ、その背を向けた中で、最も美しい。
ビローン(モスへ傍白。)瞳だ、悪党、瞳と言え。
モスかつて人の目へ、その瞳を向けた中で、最も美しい。
外れた。
ボイエットそのとおり。まさしく外れた。
モス御好意の外から、天なる精霊の皆様、どうか
御覧にならず。
ビローン(モスへ傍白。)「一度、御覧ください」だ、悪党。
モス一度、御覧ください、太陽という息子の光を宿す瞳で、
太陽という息子の光を宿す瞳で。
ボイエットその形容には、あの方々も返事をしませんよ。
「娘の光を宿す瞳」と呼ぶのがよい。
モス誰も、わたしを目印にしない。おかげで台詞から外れます。
ビローンこれが完璧な出来か。消えろ、悪党。
ロザラインこの異国人たちは、何を望むの。心の内を聞いて、ボイエット。
こちらの言葉を話すなら、飾りのない男に
目的を語ってもらうのが、わたしたちの望み。
何が欲しいのか、聞いて。
ボイエット王女様へ、何をお望みです。
ビローン平和と、穏やかな訪問のほかには何も。
ロザライン何を望むと、あの人たちは言っているの。
ボイエット平和と、穏やかな訪問のほかには何も。
ロザラインまあ、それなら、もう手に入れた。そう言って帰して。
ボイエットもう手に入れたから、帰ってよいとのことです。
ナヴァール王こう伝えよ。われらは何マイルも測って来た、
この芝の上で、あの人と舞の歩みを測るために。
ボイエットこの方々は、何マイルもの距離を測って来たそうです、
この芝の上で、あなたと舞の歩みを測るために。
ロザラインそれは違うわ。一マイルには何インチあるか聞いて。
何マイルも測って来たなら、
一マイルの目盛りくらい、すぐ言えるでしょう。
ボイエットここへ来るため、何マイルもの距離を、
本当に測ったのなら、一マイルを満たすのは
何インチか、王女様が答えよとおっしゃっています。
ビローン疲れた足取りで測った、と伝えよ。
ボイエット御本人が聞いておられます。
ロザライン何マイルもの疲れる道を越えた、その足取りは、
一マイルの旅の中に、
いくつ数えられます。
ビローンあなたのため費やすものを、われらは何一つ数えません。
われらの務めは、あまりに豊かで、あまりに果てしなく、
いつまでも、勘定なしで果たせます。
どうか、御顔の陽光をお見せください、
われら野なる民が、それを崇められるように。
ロザラインわたしの顔は月にすぎず、そのうえ雲に隠れています。
ナヴァール王そのように働ける雲ならば、祝福されている。
どうか、明るい月よ、そして月に従う星々よ、
その雲を払い、われらの濡れた瞳へ輝いてくれ。
ロザラインおお、むなしい願い人。もっと大きなものを願いなさい。
今、願っているのは、水に映る月影だけよ。
ナヴァール王ならば、われらの舞で、ただ一度、型を変えてください。
願えと言われたのだ。こう願うのも、おかしくはない。
ロザラインでは、音楽を。さあ、早くしなくては。
ロザラインまだよ。踊らない。こうして月のように心変わりするの。
ナヴァール王踊らないのですか。なぜ、そこまで心が離れた。
ロザライン満月を捕まえたと思ったでしょう。でも、もう月は変わったの。
ナヴァール王それでも月は月、わたしは月の男。
音楽が鳴っている。どうか、それに合わせて動いてください。
ロザライン耳なら、喜んで動かします。
ナヴァール王だが、動かすべきは脚です。
ロザライン異国の方々が、たまたま、ここへ来たのですから、
つれなくはしません。手を取りましょう。踊りはしません。
ナヴァール王それなら、なぜ手を取るのです。
ロザライン友として別れるためだけ。
お辞儀を、愛しい皆さん。これで舞の型は終わり。
ナヴァール王この舞を、もっとたくさん。つれなくしないで。
ロザラインこの値段では、これ以上、差し上げられません。
ナヴァール王御自分に値をつけてください。何を払えば、御一緒できます。
ロザラインあなたが、いなくなることだけ。
ナヴァール王それだけは、決してできない。
ロザラインならば、わたしたちは買えません。これで、さようなら。
あなたの仮面へ二度、あなたへは半度だけ。
ナヴァール王踊りを拒むなら、もう少し話をしましょう。
ロザラインそれなら、二人だけで。
ナヴァール王それが何より嬉しい。
ビローン白い手の御婦人よ、甘い言葉を一つ、あなたと交わしたい。
フランス王女蜂蜜、牛乳、砂糖。これで三つ。
ビローンでは、三の目が二つ。そこまで、つれなくするなら、
蜂蜜酒、麦汁、マルムジー酒。よく転がった、賽ころよ。
これで甘いものが、半ダース。
フランス王女七つ目の甘い言葉は、さようなら。
賽ころへ細工する人とは、もう遊びません。
ビローン秘密の言葉を一つ。
フランス王女甘くないものにして。
ビローンあなたは、わが胆汁を悲しませる。
フランス王女胆汁。それは苦い。
ビローンならば、ちょうどよい。
デュメインわたしと言葉を一つ、取り替えていただけますか。
マライアその言葉を、どうぞ。
デュメイン美しい御婦人。
マライアそう、おっしゃるの。なら、美しい殿方。
あなたの「美しい御婦人」へ、これをお返しします。
デュメインよろしければ、
同じだけ二人で話を。それから、さようならを言います。
キャサリン何です、あなたの仮面は、舌なしで作られたの。
ロンガヴィルなぜ、そう尋ねるのか、理由は分かっています、御婦人。
キャサリンおお、その理由を。早く、殿方。待ちきれません。
ロンガヴィルあなたは仮面の中に、舌を二枚持っている。
一枚を、わが口を利けぬ仮面へ、分けてくださるのでしょう。
キャサリン「ヴェール」と、オランダ人は言う。「ヴェール」は仔牛肉でしょう。
ロンガヴィル仔牛です、美しい御婦人。
キャサリンいいえ、美しい殿方の仔牛よ。
ロンガヴィルその言葉を、二人で分けましょう。
キャサリンいいえ、あなたの半分にはなりません。
全部どうぞ。乳離れさせれば、雄牛になるかもしれない。
ロンガヴィル鋭い嘲りで、御自分から角を突き出している。
貞淑な御婦人が、わたしへ角を生やすのですか。おやめください。
キャサリンならば、角が生える前に、仔牛のまま死になさい。
ロンガヴィル死ぬ前に、二人だけで、一言お話を。
キャサリンでは、小さく鳴きなさい。肉屋が、あなたの声を聞いている。
ボイエット人を笑う娘たちの舌は、鋭い、
目にも見えぬ剃刀の刃ほどに。
見えるより細い毛さえ切り、
感覚の感覚を越える。これほど鋭く
あの人たちの会話は響く。着想には翼があり、
矢、弾丸、風、思い、どんな速いものより速い。
ロザラインもう一言もいらない、皆さん。打ち切り、打ち切り。
ビローン天にかけて、純粋な嘲りで、血も出ぬほど打ちのめされた。
ナヴァール王さらば、気の触れた娘たち。単純な機知の持ち主だ。
フランス王女二十回のさようならを、凍りついたモスクワ人たちへ。
フランス王女あれが、あれほど世に驚嘆される、機知の一族なの。
ボイエット蝋燭です。皆様の甘い息に吹かれ、消えました。
ロザラインよく肥えた機知でした。太い、太い。脂肪たっぷり。
フランス王女おお、機知の貧しさ。王様らしく貧しい、あざけりね。
今夜、あの人たち、首を吊らないと思う。
これから、仮面なしで、顔を見せられるかしら。
生意気なビローンも、すっかり面目を失っていた。
ロザラインおお、皆、嘆かわしい仮面の中でした。
王は、優しい一言を求めて、今にも泣きそう。
フランス王女ビローンは、誓いを並べすぎて、求婚する余地をなくしたわ。
マライアデュメインは、剣と一緒に、わたしへお仕えしました。
「切っ先がない」と言ったら、わが従者は、たちまち黙りました。
キャサリンロンガヴィル殿は、わたしが胸を襲ったと言いました。
あの人が、わたしを何と呼んだと思います。
フランス王女胸のむかつき、かしら。
キャサリンええ、本当に。
フランス王女行きなさい、この病気め。
ロザラインまあ、もっと機知ある者でも、法令どおりの粗末な帽子をかぶりました。
でも、お聞きになる。王は、わたしを恋人と誓ったのです。
フランス王女そして素早いビローンは、わたしへ真心を誓った。
キャサリンロンガヴィルは、わたしへ仕えるため生まれたそうです。
マライアデュメインは、木に樹皮がつくほど確かに、わたしのもの。
ボイエット王女様、愛らしい御婦人方、お聞きください。
あの方々は、すぐに再び、ここへ来ます、
今度は本来の姿で。この手厳しい侮辱を
呑み込めるはずがありません。
フランス王女戻って来るの。
ボイエット戻ります、戻ります、神も御存じ。
打撃で脚を痛めても、喜び勇んで跳ねて来る。
だから、恋の印を元へ戻してください。あの方々が来たら、
夏の空気に咲く、甘い薔薇のように咲きましょう。
フランス王女どう咲くの。どう咲くの。分かるように話して。
ボイエット仮面を着けた美しい御婦人は、蕾の薔薇。
仮面を外し、甘い紅白の混ざりを見せれば、
雲を脱ぐ天使、あるいは開いた薔薇です。
フランス王女消えなさい、ややこしさ。どうしましょう、
あの人たちが本来の姿で、また口説きに来たら。
ロザライン善き王女様、わたしの忠告をお聞きくださるなら、
変装でも、正体が分かっていても、まだ笑ってやりましょう。
ここへ、どんな愚か者たちが来たか、あの人たちへ訴えるのです、
形も定かでない衣装で、モスクワ人に変装して。
あれは何者で、何のためだったのか、不思議がりましょう。
浅薄な見世物、ひどい書きようの口上、
あれほど粗野で、滑稽な振る舞いを、
なぜ、わたしたちの天幕で見せたのか、と。
ボイエット御婦人方、お下がりを。勇士たちが、すぐそこです。
フランス王女鹿が野を駆けるように、天幕へ急ぎましょう。
ナヴァール王麗しき方、神の御加護を。王女は、どちらに。
ボイエット天幕へ戻られました。陛下が御命じになるなら、
何か御用を、あちらへお伝えしましょうか。
ナヴァール王一言のため、わたしへ会っていただきたいと。
ボイエット承知しました。王女様も承知なさるはずです、陛下。
ビローンあの男、鳩が豆をついばむように、機知を拾い上げ、
神の思し召す時に、また口から吐き出す。
機知の行商人、商品を小売りする、
縁日、酒宴、寄り合い、市場、祭りで。
卸売りをするわれらは、主も御存じ、
あれほど見事に機知を飾る、恵みを持たない。
あの伊達男は、娘たちを袖へ留めて歩く。
アダムだったなら、イヴを誘惑しただろう。
肉を切り分け、舌足らずに話すこともできる。そう、あいつだ、
礼儀の挨拶で、手へ口づけしては投げてしまう。
作法をまねる猿、気取り屋ムッシュー、
盤双六をすれば、賽ころを
高貴な言葉で叱りつける。いや、歌えば、
中声部を、これ以上なく下手に歌う。先導役では、
誰にも直せない。御婦人たちは、あの人を甘いと呼ぶ。
階段も、踏まれるたび、あの足へ口づける。
誰へでも微笑みかける、この一輪の花、
鯨の骨ほど白い歯を、見せるために。
借りを残して死にたくない良心なら、
蜜舌のボイエットへ、受けるべき報酬を払う。
ナヴァール王あの甘い舌へ、心から水ぶくれを。
アーマードの小姓から、役の台詞を追い出した舌へ。
ビローン見ろ、あれが来る。作法よ、おまえは何者だった、
この狂人が、おまえを見せるまで。そして今、何者になった。
ナヴァール王御機嫌よう、愛しい王女。美しい時の御挨拶を。
フランス王女「御機嫌よう」の中の「美しい」は、ひどい言葉に聞こえます。
ナヴァール王できるなら、わたしの言葉を、もっとよく解してください。
フランス王女ならば、もっとよいことを願ってください。許します。
ナヴァール王われらは、あなたを訪ね、これから
宮廷へ御案内したい。どうか、お受けください。
フランス王女この野が、わたしを留めます。陛下も誓いを留めてください。
神も、わたしも、誓いを破る男を喜びません。
ナヴァール王あなたが誘い起こしたことで、わたしを責めないでください。
あなたの瞳の徳が、わが誓いを破らせた。
フランス王女「徳」と呼ぶのは間違い。「悪徳」と言うべきです。
徳の務めが、男の誠を破ることなどない。
今、乙女の名誉にかけて。それは今も清い、
汚れなき百合のように。わたしは誓います、
たとえ、ありとある苦しみに耐えようとも、
陛下の館の客となることへ、屈しはしない。
それほど憎いのです。誠実に天へ立てた誓いを
破る原因に、この身がなることを。
ナヴァール王おお、あなたは、ここ荒野に置かれ、
誰にも会わず、訪ねられずにいた。われらの恥です。
フランス王女いいえ、陛下、違います。誓って、違います。
ここで余興も、楽しい遊びもありました。
つい先ほど、ロシア人の一組が帰ったところ。
ナヴァール王何です、王女。ロシア人が。
フランス王女ええ、本当です、陛下。
身なりよい勇士たちで、求愛と威厳に満ちていました。
ロザライン王女様、本当のことを。そうではありません、陛下。
王女様は、今どきの流儀に従い、
礼儀として、値しない称賛を与えたのです。
確かに、わたしたち四人は、四人と向かい合いました、
ロシア風の衣装を着た者たちと。ここに一時間いて、
勢いよく話しました。でも、その一時間に、陛下、
幸せな言葉を一つも、わたしたちへ授けなかった。
愚か者とは、あえて呼びません。でも、こう思います、
喉が渇いたなら、愚か者だって、喜んで飲むだろうと。
ビローンこの冗談は、わたしには乾きすぎる。美しく、優しく、甘い人よ、
あなたの機知は、賢いものを愚かに見せる。最もよく見える目で、
天の燃える瞳、太陽を迎えれば、
光のため、光を失うように。あなたの器は
あまりに広大な蓄えを持つ性質ゆえ、
賢いものも愚かに、豊かなものも貧しく見える。
ロザラインそれなら、あなたは賢く、豊かだと証明されます、わたしの目には。
ビローンわたしは愚か者で、貧しさに満ちている。
ロザラインでも、御自分に属するものを、すぐ取ったのですから、
わたしの舌から言葉をさらっても、責められません。
ビローンおお、わたしはあなたのもの、持っているものも、すべて。
ロザライン愚か者を、丸ごといただけるの。
ビローンそれより少なくは、差し上げられない。
ロザラインあなたが着けていたのは、どの仮面でした。
ビローンどこで。いつ。何の仮面。なぜ、そんなことを聞く。
ロザラインあそこで、あの時、あの仮面。余計な覆い、
悪い顔を隠し、ましな顔を見せていたもの。
ナヴァール王見破られた。今度こそ、真っ向から笑われる。
デュメイン認めて、冗談へ変えましょう。
フランス王女驚かれました、陛下。なぜ悲しそうなお顔を。
ロザライン助けて、眉を押さえて。気を失うわ。なぜ青ざめているの。
モスクワから来たので、船酔いでしょう。
ビローンこうして星々は、誓い破りへ災いを降らせる。
真鍮の面の皮でも、これ以上は耐えられぬ。
ここに立とう。御婦人よ、技の矢を、わたしへ放て。
侮りで打ちのめし、嘲りで混乱させろ。
鋭い機知を、わが無知へ、まっすぐ突き通せ。
冴えた着想で、わたしを切り刻め。
そうすれば、二度と踊ってくれなどと願わず、
ロシアの衣装で、二度と人を待たない。
もう、書かれた口上を信じず、
小学生の舌が動くのも信じず、
仮面を着けて、恋人のもとへ来ることもなく、
盲目の竪琴弾きの歌のように、韻で口説くこともない。
タフタの美辞、絹のように精密な言葉、
三重織りの誇張、洒落た気取り、
衒学者めいた比喩。こうした夏の蠅が、
わたしの中へ卵を産み、見せかけの蛆でいっぱいにした。
すべて捨てる。ここに誓う、
この白い手袋にかけて。その中の手が白いかは、神のみぞ知る。
これから、わが求愛の心は、
あかがね色の「はい」と、毛織りの正直な「いいえ」で表す。
まずは、娘よ。神よ、お助けを、さあ。
わたしの恋は健全だ。ひびも、傷も、サン、まったくない。
ロザラインサンも、なしでお願いします。
ビローンそれでも、昔の熱病の癖が、
まだ一つ残っている。大目に見てくれ、病気なのだ。
少しずつ手放そう。待て、見てみよう。
あの三人へ、「主よ、われらを憐れみたまえ」と書け。
感染している。病は、あの胸の中。
疫病にかかり、あなたたちの瞳から、うつされた。
この殿方たちには、訪れの印がある。あなたたちも自由ではない。
主の病の印が、その身に見えるから。
フランス王女いいえ、この印を、わたしたちへ贈った人たちは、もう自由です。
ビローンわれらの身は没収された。救い戻そうとしないでくれ。
ロザライン違うでしょう。どうして没収されるの、
訴え出ている側なのに。
ビローン静かに。もう、あなたとは関わりたくない。
ロザラインわたしの思いどおりにするなら、関わることはありません。
ビローン皆、自分で話せ。わたしの機知は、もう尽きた。
ナヴァール王愛しい王女、われらの無作法な過ちへ、
何か美しい弁明を教えてください。
フランス王女最も美しいのは、告白です。
つい先ほど、変装して、ここにいらしたのでは。
ナヴァール王王女、そのとおりです。
フランス王女よく承知したうえで、なさったのですか。
ナヴァール王そのとおりです、美しい王女。
フランス王女では、ここにいらした時、
御自分の御婦人の耳へ、何を囁きました。
ナヴァール王全世界よりも、あの人を大切に思う、と。
フランス王女あの人が、その言葉を求めても、陛下は退けるでしょう。
ナヴァール王わが名誉にかけて、退けません。
フランス王女もうよい、もうよい。お控えください。
一度、誓いを破ったのです。もう偽りの誓いも恐れないでしょう。
ナヴァール王この誓いを破った時は、わたしを軽蔑してください。
フランス王女そうします。だから、守ってください。ロザライン、
あのロシア人は、あなたの耳へ、何を囁いたの。
ロザライン王女様、あの方は誓いました。わたしを大切に思う、
かけがえのない視力と同じほど。そして、わたしの価値を
この世界より上に置く、と。さらに付け加え、
わたしと結婚する。さもなくば、恋人のまま死ぬ、と。
フランス王女あの方と、幸せにね。高貴な殿方は、
実に名誉高く、御自分の言葉を持たずにいるわ。
ナヴァール王どういう意味です、王女。命と、誠にかけて、
わたしは、この御婦人へ、その誓いを立てていない。
ロザライン天にかけて、立てました。その証しとして、
これを、わたしへくださった。でも、殿方、お返しします。
ナヴァール王わが誠と、この宝石は、王女へ差し上げた。
袖の、この宝石で、王女だと分かったのだ。
フランス王女お許しを、陛下。この宝石を着けたのは、ロザライン。
そしてビローン殿には感謝します、わたしが愛しい人だそうです。
さあ、わたしと、あなたの真珠、どちらを取り戻します。
ビローンどちらの、どちらもいりません。二つとも手放します。
仕掛けが見えた。ここには共謀があった、
われらの余興を、あらかじめ知り、
クリスマスの喜劇のように、ぶち壊そうと。
告げ口屋、御機嫌取り、取るに足らぬ道化、
知らせをもぐもぐ話す食卓の騎士、どこぞの男が、
何年も頬へ笑い皺を刻み、奥方が望む時に
笑わせる術を心得た男が、
われらの企てを、先に話した。それを知った
御婦人たちは、恋の印を取り替えた。そして、われらは
印に従い、本人ではなく、その印だけを口説いた。
今や、誓い破りへ、さらに恐ろしさを加え、
思いによっても、間違いによっても、また誓いを破った。
話は、ほぼ、こういうことだ。そして、そこのおまえが。
ビローンわれらを偽り者にするため、余興を先回りしたのではないか。
定規で測ったように、わが恋人の足を知り、
瞳の林檎へ向かって、笑いかけ、
あの人の背中と火の間へ立ち、
皿を持って、陽気に冗談を言うのではないか。
おまえが、われらの小姓を黙らせた。よし、公認の道化だ。
いつ死んでも、女の肌着が、おまえの死装束になる。
わたしを横目で見るのか。その視線は、
鉛の剣のように、人を傷つける。
ボイエット実に陽気に、
この勇ましい馬さばき、この疾走は、駆け抜けました。
ビローンほら、早速、槍を構えて来た。静かに。わたしは終わりだ。
ビローンようこそ、純粋なる機知よ。見事な争いを、引き分けにしてくれる。
コスタードおお、旦那様、あの方々が知りたがっています、
三人の偉人が、登場するのか、しないのか。
ビローン何、三人しかいないのか。
コスタードいいえ、旦那様。でも、そりゃ、たいそう見事です、
一人ずつ、三人を、お見せしますから。
ビローン三を三倍すれば、九だ。
コスタード違います、旦那様。失礼ながら。違うはずです。
わしらを馬鹿扱いはできませんよ、旦那様、保証します。知ることは知っています。
旦那様、三を三倍すれば、旦那様。
ビローン九ではない、と。
コスタード失礼ながら、旦那様、いくつに達するかは、分かっております。
ビローンジュピターにかけて、わたしは今まで、三が三つで九だと思っていた。
コスタードおお、旦那様、数を数えて暮らしを立てることになれば、お気の毒です。
ビローンでは、いくつだ。
コスタードおお、旦那様、その当人たち、役者たちが、いくつに達するか、お見せします。わし自身は、世間で言うところの、たった一人の貧しい男で、一人をパーフェクトにするだけ、ポンピオン大王です、旦那様。
ビローンおまえも偉人の一人なのか。
コスタード皆さんは、わしをポンピオン大王に値すると思ってくださった。わし自身は、偉人の位など知りませんが、あの人の代わりに立つ役目です。
ビローン行って、支度するよう言え。
コスタード見事に切り抜けます、旦那様。少しは気をつけます。
ナヴァール王ビローン、あの者たちは、われらへ恥をかかせる。近づけるな。
ビローンわれらは、もう恥を通さぬ体です、陛下。それに王と御一行より
ひどい見世物を一つ出すのも、いくらか策というもの。
ナヴァール王あの者たちは、来させない。
フランス王女いいえ、善き陛下、今は、わたしに決めさせてください。
やり方を最も知らない余興が、最も人を喜ばせます。
熱意が、人を満足させようと懸命になり、内容そのものは、
見せようとする、その熱意の中で死んでしまう。
形の崩れこそ、笑いへ最も豊かな形を与える、
大いなるものが難産の末、生まれる前に死ぬ時に。
ビローンわれらの余興を、そのまま描いています、陛下。
アーマード油を注がれし王よ、二つの言葉を発するだけ、王の甘美なる息を費やしていただきたい。
フランス王女この人も、神に造られた人間なの。
ビローンなぜ、お尋ねに。
フランス王女神が造った人のようには、話さないから。
アーマードすべて一つのことです、わが美しく、甘く、蜜なる君主よ。誓って申せば、校長先生は極端に空想的、あまりに、あまりに虚栄的、あまりに、あまりに虚栄的。しかし、世に言うフォルトゥーナ・デ・ラ・ゲラ、戦の運へ任せましょう。最も王らしき一対よ、心の平安を祈ります。
ナヴァール王どうやら、立派な偉人たちが登場する。あの男はトロイアのヘクトール。田舎者はポンペイウス大王。教区牧師はアレクサンドロス。アーマードの小姓はヘラクレス。衒学者はユダ・マカベウス。
この四偉人が、最初の見世物で成功すれば、
この四人が衣装を替え、残る五人を演じるそうだ。
ビローン最初の見世物に、五人います。
ナヴァール王おまえの勘違いだ。そうではない。
ビローン衒学者、法螺吹き、垣根の牧師、道化、小僧。
ノヴム、九の賽ころ勝負で、一投を差し引いても、もう一度、世界中を探して、
それぞれの持ち味で、これほどの五人は選び出せない。
ナヴァール王船は帆を張った。ほら、まっしぐらに来る。
コスタードわれこそは、ポンペイウス。
ボイエット嘘をつけ。おまえは違う。
コスタードわれこそは、ポンペイウス。
ボイエット膝には、豹の頭。
ビローンうまいぞ、年季の入った人笑わせ。おまえとは、どうしても友になろう。
コスタードわれこそは、ポンペイウス、またの名をビッグ、大きい者。
デュメイングレート、大王だ。
コスタード「グレート」です、旦那様。
またの名を、ポンペイウス大王。
戦場では、丸盾と大盾を手に、幾度も敵へ汗をかかせた。
この海岸に沿って旅をするうち、たまたま、ここへ来て、
この愛しいフランス娘の脚の前へ、武器を置く。
王女様が、「ありがとう、ポンペイウス」と言ってくだされば、終わりです。
フランス王女大いに、ありがとう、大王ポンペイウス。
コスタードそんなに感謝されるほどじゃありません。でも、完璧にできたと思います。「グレート」で、ちょっと間違えました。
ビローン帽子と半ペニーを賭ける。ポンペイウスが、最高の偉人になる。
ナサニエルこの世に生きた時、われは世界の支配者。
東西南北へ、征服の力を広げた。
わが紋章が明らかに語る、われこそアリサンドロス。
ボイエットあなたの鼻は、ノー、違うと言う。真っ直ぐ立ちすぎている。
ビローンその鼻が、この中の「ノー」を嗅ぎつけたな、最も匂いに敏い騎士よ。
フランス王女征服者が、うろたえています。続けて、善きアレクサンドロス。
ナサニエルこの世に生きた時、われは世界の支配者。
ボイエットまさしく本当、真っ直ぐだ。そうでしたとも、アリサンドロス。
ビローンポンペイウス大王。
コスタードお仕えします、コスタードとしても。
ビローンこの征服者を連れて行け。アリサンドロスを連れて行け。
コスタードおお、先生、征服者アリサンドロスを、みずから打ち倒しましたね。このせいで、絵布から削り取られますよ。便器へ座って戦斧を持つ、あなたの獅子は、アイアース、つまり便所へ譲られる。あいつが九人目の偉人だ。征服者が、怖くて話せない。恥を知って逃げろ、アリサンドロス。
コスタードあちらです、よろしければ。愚かしく、穏やかな人。正直な人です、本当に。それで、すぐ、うろたえる。誓って、驚くほど善き隣人で、玉転がしも、とても上手。でも、アリサンドロスには、ああ、御覧のとおり、役が少し大きすぎた。けれど、これから来る偉人たちは、別のやり方で、思うことを話しますよ。
フランス王女脇へ控えて、善きポンペイウス。
ホロファニーズ大いなるヘラクレスは、この小鬼が演じます。
その棍棒が、三つ頭のカニス、犬ケルベロスを殺した。
そして、まだ赤子、幼児、小海老だった時、
こうして、マヌス、両手で、蛇を絞め殺した。
クオニアム、この者は少数者、つまり未成年に見える。
エルゴー、ゆえに、わたしが、この釈明口上を述べる。
威厳を保って退場し、消えなさい。
ホロファニーズわれこそは、ユダ。
デュメインユダだと。
ホロファニーズイスカリオテではありません、先生。
われはユダ、イクレペド、マカベウスと呼ばれる者。
デュメインユダ・マカベウスを切り詰めれば、ただのユダ。
ビローン口づけする裏切り者だ。何をもって、ユダと証明する。
ホロファニーズわれこそは、ユダ。
デュメインならば、なおさら恥じろ、ユダ。
ホロファニーズどういう意味です、先生。
ボイエットユダに、首を吊らせようという意味。
ホロファニーズ始めなさい、先生。あなたは、わたしよりエルダー、年長者です。
ビローンよく続けた。ユダは、エルダー、ニワトコの木で首を吊った。
ホロファニーズわたしは、面目を失わされはしません。
ビローンおまえには、失う顔がないからな。
ホロファニーズでは、これは何です。
ボイエットシターンという弦楽器の頭。
デュメインかんざしの頭。
ビローン指輪に刻んだ、死神の顔。
ロンガヴィルほとんど見えない、古代ローマ貨の顔。
ボイエットカエサルの曲刀の、柄頭。
デュメイン酒瓶についた、骨彫りの顔。
ビローンブローチに刻んだ、聖ジョージの半顔。
デュメインそう、しかも鉛のブローチに。
ビローンそう、歯抜き師の帽子へ着けるものだ。
さあ、続きを。われらが、おまえへ顔を与えてやった。
ホロファニーズあなたたちは、わたしの面目を失わせた。
ビローン違う。いくつも顔を与えたではないか。
ホロファニーズだが、あなたたちの厚顔が、すべての顔を打ち負かした。
ビローンおまえが獅子でも、同じように顔で打ち負かす。
ボイエットだから、この男は驢馬なのだし、行かせよう。
さらば、愛しいジュード。いや、なぜ残る。
デュメイン名前の尻が足りないから。
ビローンジュードへアス、驢馬の尻をつけてやれ。ジュード・アス、ユダよ、行け。
ホロファニーズこれは高潔でない、優しくない、謙虚でない。
ボイエットムッシュー・ユダへ、明かりを。暗くなって、つまずくぞ。
フランス王女ああ、哀れなマカベウス。何と、なぶられたこと。
ビローン頭を隠せ、アキレウス。武装したヘクトールが来る。
デュメイン嘲りが、わが身へ返って来ようと、今は楽しもう。
ナヴァール王これに比べれば、ヘクトールも、ただのトロイア人だ。
ボイエットでも、これがヘクトールですか。
ナヴァール王ヘクトールは、これほど不格好な材木ではなかったと思う。
ロンガヴィルあの脚は、ヘクトールにしては太すぎる。
デュメイン確かに、ふくらはぎというより仔牛だ。
ボイエットいや、あの男は、細いところにこそ、よく恵まれている。
ビローンこれがヘクトールのはずはない。
デュメイン神か、絵描きだろう。いろいろな顔を作っている。
アーマード槍を統べる全能、腕力無双のマルスが、
ヘクトールへ贈ったものは。
デュメイン金箔を貼った肉荳蔲。
ビローン檸檬だ。
ロンガヴィル丁子を刺した。
デュメインいや、二つに裂けた。
アーマード静かに。
槍を統べる全能、腕力無双のマルスが、
イリオンの世継ぎ、ヘクトールへ贈り物を与えた。
あれほど息の鍛えられた男、必ず戦った。しかり、
朝から夜まで、天幕の外で。
われこそは、その花。
デュメインその薄荷。
ロンガヴィルその苧環。
アーマード愛しいロンガヴィル殿、舌の手綱を引かれよ。
ロンガヴィルむしろ手綱を放さねば。ヘクトールへ向かい、駆けてゆくから。
デュメインそうとも、ヘクトールは猟犬だ。
アーマード愛すべき戦士は死に、朽ちた。愛しい雛たちよ、埋められた者の骨を打つな。息をした時、あれは男だった。しかし、わたしは趣向を先へ進めよう。
アーマード甘美なる王族よ、わたしへ聴覚を、お授けください。
フランス王女話して、勇ましいヘクトール。大いに楽しんでいます。
アーマード甘美なる王女の、上履きを崇拝いたします。
ボイエット一フット、足の長さだけ、あの人を愛している。
デュメイン(ボイエットへ傍白。)一ヤードでは、愛せないのだろう。
アーマードこのヘクトールは、ハンニバルを遥かに越えた。
コスタード相手は、もう行っちまったぞ、ヘクトール殿、もう行った。二か月も道を進んでいる。
アーマード何を言う。
コスタード誓って、あんたが正直なトロイア人を演じなけりゃ、哀れな娘は身を滅ぼす。腹には命がある。子供が、もう腹の中で自慢している。あんたの子だ。
アーマード権力者たちの前で、わたしをインファモナイズ、汚名にまみれさせるのか。おまえは死ぬ。
コスタードなら、ヘクトールは、自分が命を宿らせたジャクネッタのため鞭打たれ、自分が殺したポンペイウスのため首を吊られるわけだ。
デュメイン世にも稀なるポンペイウス。
ボイエット名高きポンペイウス。
ビローン大王より大いなる、大いなる、大いなる、大いなるポンペイウス。巨大ポンペイウス。
デュメインヘクトールが震えている。
ビローンポンペイウスが動いた。もっとアテを、争いの女神を。けしかけろ、けしかけろ。
デュメインヘクトールが、決闘を申し込むぞ。
ビローンああ、腹の中の男の血が、蚤の一飲み分より少なくなければな。
アーマード北極にかけて、おまえへ決闘を申し込む。
コスタード北国人みたいに、棒で戦いはしない。斬る。剣でやる。お願いだ、置いた武器を、もう一度、貸してくれ。
デュメイン怒れる偉人たちへ、場所を空けよ。
コスタード肌着一枚で、やってやる。
デュメイン何と覚悟の固いポンペイウス。
モス御主人、ボタン穴一つ分、下へ引かせてください。ポンペイウスが、決闘のため服を脱いでいるのが見えませんか。何をなさる。評判を失いますよ。
アーマード紳士、兵士の皆様、お許しを。わたしは肌着一枚で戦いません。
デュメイン断れない。ポンペイウスが決闘を申し込んだ。
アーマード愛しい若き血潮たちよ、断ることもできるし、断るつもりだ。
ビローンその理由は何だ。
アーマード裸の真実を言えば、肌着を持っていない。苦行のため、素肌へ毛織物を着ている。
ボイエット本当です。ローマで、麻布を持たぬ罰として命じられた。それ以来、誓って、ジャクネッタの皿拭き以外、身に着けたことがない。それも恋の印として、心臓のすぐそばへ着けています。
マーケイド神が、王女様をお守りくださいますように。
フランス王女よく来ました、マーケイド。
ただ、わたしたちの楽しみを中断するのですね。
マーケイド申し訳ありません、王女様。お伝えする知らせが
この舌に重いのです。王女様の父王が。
フランス王女亡くなった。命にかけて。
マーケイドそのとおりです。わたしの話は、終わりました。
ビローン偉人たちよ、去れ。舞台に雲がかかり始めた。
アーマードわたし自身は、自由な息を吐く。分別の小さな穴を通し、不正の日を見た。兵士らしく、みずからを正そう。
ナヴァール王王女、御気分は。
フランス王女ボイエット、支度を。今夜、発ちます。
ナヴァール王王女、なりません。どうか、とどまってください。
フランス王女支度を、と言いました。慈悲深き殿方、感謝します、
すべての麗しい御尽力に。そして、お願いします、
たった今、悲しみを得た魂から。豊かな知恵をもって、
どうか、お許しになり、覆い隠してください、
わたしたちの心が、のびのびと言い返したことを、
言葉を交わす中、あまりに大胆に振る舞ったのなら。
あなた方の優しさが、そうさせた罪を負います。
さようなら、立派な殿方。
重い心に、身軽な舌は持てません。
そう思い、お許しください。大切な願いを、これほど容易に
かなえていただきながら、礼の言葉さえ足りないことを。
ナヴァール王時の果てにある極端な瞬間は、激しく形を変える、
すべての事情を、その速度の目的へ合わせて。
そして、矢を放つ、その瞬間に、しばしば決めてしまう、
長い手続でも、裁けなかったことを。
たとえ、子として喪に服す額が、
恋の微笑む礼儀を禁じても、
恋が、かなえたいと願う神聖な訴えを禁じても、
恋の議論は、すでに歩み始めたのです。
悲しみの雲に、その目的から
押しのけさせてはなりません。失った友を嘆くことは、
新しく見つけた友を喜ぶことほど、
心身に益するものではありませんから。
フランス王女お言葉が分かりません。悲しみが、二重になりました。
ビローン悲しみの耳には、正直で平明な言葉が最もよく届きます。
この印を見て、王の心を、お分かりください。
美しい皆様のため、われらは時を忘れ、
誓いを相手に、卑怯な勝負をした。御婦人方、あなた方の美が
われらの姿を大きく崩し、心の癖を形づくった、
目指したものと、正反対の果てへ。
そして、われらの何かが、滑稽に見えたとしても。
恋には、似つかわしくない節回しが満ち、
子供のように奔放で、跳ね回り、虚しく、
目によって形づくられる。ゆえに、目と同じように、
奇妙な姿、衣装、形でいっぱいになり、
目が、ひと目のうちに、さまざまな物へ転がるたび、
その対象を、次々に変えるのです。
この、まだら衣装を着た、放埒な恋の姿を、
われらが身につけたことが、天なる皆様の瞳には、
われらの誓いと厳粛さに似合わなかったとしても、
その過ちを見つめる天なる瞳こそ、
われらへ、それをするよう、うながしたのです。だから、御婦人方、
われらの恋が、あなた方のものなら、恋が犯す過ちも
同じく、あなた方のもの。われらは自分自身へ偽り者となる、
一度、偽ることで、永遠に誠実となるため、
われらを二人にしてくれる方々へ。美しい御婦人方、あなた方へ。
そして、その偽りさえ、それ自体は罪であっても、
こうして、みずからを清め、恩寵へ変わるのです。
フランス王女恋に満ちた手紙は、受け取りました。
恋の使者である、贈り物も。
そして、乙女だけの評議で、その価値を決めました、
求愛、楽しい冗談、礼儀だと。
時を膨らませ、裏打ちする詰め物だと。
それ以上、信心深く重く受け止めはしませんでした。
だから、皆様の恋へも、その流儀どおり、
楽しい戯れとして、お会いしたのです。
デュメインわれらの手紙は、戯れ以上のものを示しました、王女。
ロンガヴィルわれらの目もです。
ロザラインわたしたちは、そういう値をつけませんでした。
ナヴァール王では、この時の最後の一分に、
われらへ、皆様の愛をください。
フランス王女永遠に終わらぬ契りを結ぶには、
あまりに短い時と思います。
いいえ、いいえ、陛下。陛下は何度も誓いを破り、
大きな罪を、身に満たしている。だから、こうしましょう。
わたしへの愛ゆえ、そんな理由はありませんが、
何かをなさるなら、わたしのため、これをしてください。
陛下の誓いは信じません。すぐに向かってください、
人も寄らず、飾りもない庵へ、
世のあらゆる喜びから離れた場所へ。
そこで、天の十二宮が
一年の勘定を巡り終えるまで、お過ごしください。
その厳しく、人と交わらぬ暮らしでも、
血の熱の中でなさった申し出が変わらず、
霜、断食、固い寝床、薄い衣が
陛下の恋の、華やかな花を摘み取らず、
その恋が試練に耐え、最後まで恋であるなら。
一年が満ちた時、
わたしを求めに来てください。この務めを証しに、求めてください。
そして、今、陛下の手へ口づける、この乙女の掌にかけて、
わたしは陛下のものになります。その時まで、
悲しむ我が身を、喪の館へ閉じ込め、
嘆きの涙を雨と降らせます、
父王の死を、忘れぬために。
これを拒むなら、手を離しましょう、
互いの心へ、何の権利も持たぬまま。
ナヴァール王これを、いや、これ以上のことを拒み、
わが力を、休息で甘やかそうとしたなら、
突然の死の手が、わが目を閉じよ。
今より、いつまでも、わが心は、あなたの胸にある。
ビローンわたしには何を、わが恋よ。わたしには、何を。
ロザラインあなたも清められねば。罪が高く積み上がり、
過ちと誓い破りに、汚染されている。
だから、わたしの好意を得たいと思うなら、
十二か月を、一日も休まず過ごし、
病に疲れた人々の寝床を、訪ね歩きなさい。
デュメインでは、わたしには何を、わが恋よ。わたしには、何を。
妻を。
キャサリン髭、健やかな体、そして正直さを。
三倍の愛で、その三つ全部を願ってあげます。
デュメインおお、ならば、「ありがとう、優しい妻よ」と言ってよい。
キャサリンまだです、殿方。十二か月と一日の間、
つるりと髭のない求婚者の言葉には、耳を留めません。
王が王女様のもとへ来る時、あなたも来なさい。
その時、愛がたくさんあれば、少し分けてあげます。
デュメインそれまで、真実に、誠実に、あなたへ仕えます。
キャサリンでも、誓わないで。また誓いを破るといけないから。
ロンガヴィルマライアは、何と言う。
マライア十二か月が終われば、
黒い喪服を、誠実な友へ着替えます。
ロンガヴィル辛抱して待とう。だが、時が長い。
マライア長いほど、あなたに似ます。そんなに若くて、もっと背の高い人は少ない。
ビローンわが御婦人は、考え込んでいる。恋人よ、わたしを見てくれ。
わが心の窓、この目を見て、
どれほど慎ましい願いが、あなたの返事を待つか。
あなたの愛のため、何か務めを課してくれ。
ロザラインビローン殿、お目にかかる前から、
あなたのことは、何度も聞きました。世間の大きな舌は、
あなたを、人を笑う言葉で満ちた男と触れ回る、
比喩と、人を傷つける嘲りで満ち、
その機知の慈悲へ身を委ねる、
あらゆる身分の人へ、それを振るう男だと。
実り豊かな頭から、この苦い苦艾を抜き、
同時に、わたしを得たいと思うなら、
それなしに、わたしを得ることはできません、
これから十二か月、毎日、
言葉を失った病人を訪ね、絶え間なく
呻く人々と語りなさい。そして務めは、
激しく働く機知を、すべて尽くし、
痛みに力尽きた人を、何とか笑顔にすること。
ビローン死の喉の中に、激しい笑いを起こせと。
できない。そんなことは不可能だ。
苦しみの中にある魂を、笑いは動かせない。
ロザラインだからこそ、人を嘲る心を、窒息させられる。
その力を生むのは、浅はかに笑う聞き手が
愚か者へ与える、だらしない拍手だから。
冗談が栄えるかは、聞く者の耳にあり、
冗談を言う者の舌には、決してない。ならば、病んだ耳が、
自分自身の、切実な呻きの叫びに聞こえなくなりながらも、
あなたの空しい嘲りを、聞こうとするなら、続けなさい。
わたしは、その欠点ごと、あなたを受け入れます。
でも、耳を傾けないなら、その心を投げ捨てなさい。
そうすれば、わたしは、あなたが、その欠点から空になったと知り、
心から喜ぶでしょう、
あなたが変わったことを。
ビローン十二か月。よし、何が起きようと、
病院で十二か月、冗談を言おう。
フランス王女はい、愛しい陛下。それでは、お別れします。
ナヴァール王いいえ、王女。道中、われらが、お送りします。
ビローンわれらの求愛は、古い芝居のようには終わらない。
ジャックは、ジルを手に入れぬ。御婦人たちが親切なら、
われらの余興も、喜劇になっただろうに。
ナヴァール王さあ、まだ十二か月と一日が欠けている。
それから、終わるのだ。
ビローン芝居にしては、長すぎます。
アーマード甘美なる陛下、どうかわたしへ。
フランス王女あれは、ヘクトールではなかったの。
デュメイントロイアの立派な騎士です。
アーマード王の指へ口づけし、お別れします。わたしは誓願者となった。ジャクネッタの甘い愛のため、三年間、あの人のために鋤を引くと誓った。だが、最も敬うべき陛下よ、二人の学者が、梟と郭公を讃えて編んだ対話を、お聞きになりますか。われらの見世物の最後に続くはずでした。
ナヴァール王すぐに呼び出せ。聞くことにしよう。
アーマードおおい、近くへ。
アーマードこちら側はヒエムス、冬。こちらはウェル、春。一方を梟が、もう一方を郭公が受け持つ。ウェル、春から始めよ。
春斑の雛菊、青い菫、
銀白に咲く、たねつけばな、
黄色に染まる、きんぽうげが、
野を楽しく彩る時、
郭公は、どの木でも、
角をかぶった亭主を笑う。こう歌うから、
カッコウ。
カッコウ、カッコウ。おお、恐ろしい言葉、
夫の耳には、嬉しくない。
羊飼いが、麦藁の笛を吹き、
陽気な雲雀が、畑仕事の時計となり、
雉鳩が交わり、深山烏と小烏も交わり、
娘たちが夏の肌着を日に晒す時、
郭公は、どの木でも、
角をかぶった亭主を笑う。こう歌うから、
カッコウ。
カッコウ、カッコウ。おお、恐ろしい言葉、
夫の耳には、嬉しくない。
冬壁に氷柱が垂れ下がり、
羊飼いディックが、爪へ息を吹き、
トムが丸太を広間へ運び、
桶の牛乳も凍って帰る時、
血は凍え、道はぬかるみ、
夜ごと、目を見開く梟が歌う、
トゥ・ウィット。
トゥ・ウー、陽気な声、
脂まみれのジョーンが、鍋を冷ます間に。
風が声高く吹き荒れ、
咳が、牧師の説教をかき消し、
鳥たちが雪の中へ座り込み、
マライアンの鼻が、赤く、ひりつく時、
焼いた酸っぱい林檎が、酒の椀で音を立て、
夜ごと、目を見開く梟が歌う、
トゥ・ウィット。
トゥ・ウー、陽気な声、
脂まみれのジョーンが、鍋を冷ます間に。
アーマードアポロの歌の後では、マーキュリーの言葉は厳しい。あなた方は、あちらへ。われらは、こちらへ。
