ヘンリー王子もう手遅れだ。父上の血に宿る命はすべて
すでに腐敗に侵され、清らかな頭脳も、
魂の脆い住まいだと考える者もいるが、
今そこに浮かぶ取り留めのない妄想によって、
死すべき命の終わりを予告している。
ペンブルック伯陛下はまだお話しになり、外気の中へ
お運びすれば、ご自身を襲う
あの恐ろしい毒の燃える力も
鎮まるだろうと信じておられます。
ヘンリー王子では、この果樹園へお運びしろ。
まだ苦しみ荒れておられるのか?
ペンブルック伯殿下がお離れになった時より穏やかです。
つい先ほどは歌っておられました。
ヘンリー王子ああ、病の空しさよ! 激しい苦痛も
続き果てれば、自らの苦しみを感じなくなる。
死は外なる肉体を食い尽くすと、
その傷を見えなくし、今度は心を包囲して、
幾軍団もの奇怪な幻で
心を突き刺し、傷つける。
幻どもは最後の砦へひしめき押し寄せ、
互いに入り乱れて自滅する。死が歌うとは奇妙だ。
私は、この青白く弱り果てた白鳥の雛。
父は自らの死へ悲しみの賛歌を唱え、
脆い喉というオルガンの管から歌って、
魂と肉体を永遠の安息へ送ろうとしている。
ソールズベリー伯お気を強く、王子。あなたは、陛下が
形もなく荒れたまま残されたこの混乱を
整えるためにお生まれになったのです。
ジョン王うむ、これでわしの魂にも身動きする隙間ができた。
窓からも扉からも出てゆこうとしなかったのだ。
胸の内にはあまりに灼熱の夏があり、
はらわたはすべて崩れて塵になる。
わしは羊皮紙にペンで描かれた
書き殴りの人の姿、この炎を前に
縮み上がってゆく。
ヘンリー王子ご気分はいかがですか、陛下?
ジョン王毒を盛られた――具合は最悪――死ぬ、見捨てられ、投げ出された。
おまえたちは誰ひとり、冬よ来いと命じ、
その氷の指をわしの腹へ突き入れさせようともしない。
王国の川をこの焼けた胸に流し込もうともせず、
北風に頼んで、その冷えきった風に
乾いた唇へ口づけさせ、
冷気で慰めてくれようともしない。多くは望まぬ。
せめて冷たい慰めを乞うのに、おまえたちは狭量で
恩知らずだ、それすら拒むのか。
ヘンリー王子ああ、私の涙に何か力があって、
陛下をお救いできたなら!
ジョン王その塩気さえ熱い。
わしの中には地獄がある。そこに毒が
悪魔のように閉じ込められ、赦されることのない
死刑囚の血を暴虐に責めさいなんでいる。
私生児ああ、激しく駆け続けた熱と、
陛下にお目にかかろうと急いだ焦りで、全身が煮え立つ!
ジョン王おお従兄弟、目を閉じさせてくれるために来たか。
心臓を操る綱は裂け、焼き切れ、
命の船を走らせるはずの索具はすべて
ただ一本の糸、か細い髪の毛一本になった。
心臓は、その哀れな一本の綱だけに支えられ、
おまえの知らせが語り終わるまでしか持たぬ。
その後は、おまえの目に映るこの身も、ただの土塊、
打ち砕かれた王権の小さな模型にすぎぬ。
私生児王太子はこちらへ進軍する支度をしています。
どう迎え撃てばよいかは、天の神のみがご存じです。
好機を求めて兵を移動させたところ、
一夜のうちに、私の軍勢の精鋭の大半が
ウォッシュ湾の湿地で不意を襲われ、
思いもよらぬ洪水に呑まれてしまいました。
ソールズベリー伯その死の知らせを、すでに死んだ耳へ吹き込まれた。
陛下! わが君! つい今しがたまで王、今はこのお姿に。
ヘンリー王子私も同じように走り続け、同じように止まらねばならぬ。
世にどんな確かさ、どんな望み、どんな支えがあろう、
今しがた王だった方が、今は土になるのなら?
私生児このように逝かれたか? 私はただ後に残り、
あなたに代わって復讐の務めを果たします。
それが済めば、地上でいつも僕として仕えたように、
私の魂は天まであなたのお供をいたしましょう。
さあ、さあ、正しい天球を巡る星々よ、
その力はどこにある? 今こそ改めた誠を示し、
直ちに私とともに引き返して、
衰えゆく祖国の脆い扉から、破滅と
永久の恥を押し出そう。
すぐに敵を探さねば、すぐにも敵に探し出される。
王太子がまさに我らの踵まで迫っている。
ソールズベリー伯では、我らの知ることをご存じないようだ。
パンドルフ枢機卿が中で休んでおられる。
半刻ほど前に王太子のもとから戻り、
名誉も体面も損なわず受け入れられる
和平の条件を持ち帰られた。
王太子はただちに戦をやめるつもりだ。
私生児我らの防備がしっかり筋骨を備えていると見れば、
なおさら戦をやめるだろう。
ソールズベリー伯いや、すでにほぼ決着したも同然だ。
王太子は多くの荷車を
海辺へ送り出し、自らの主張と争いを
枢機卿の裁定に委ねた。
よろしいと思われるなら、あなたと私、ほかの諸侯で、
今日の午後、枢機卿のもとへ馬を飛ばし、
この件をめでたく完了させよう。
私生児そうしよう。そして気高い王子よ、あなたは
手の空けられるほかの諸侯とともに、
父君の葬儀にお付き添いください。
ヘンリー王子亡骸はウスターに葬らねばならぬ。
父上がそう遺言なされた。
私生児では、そこへお運びしましょう。
そして願わくは、優しき殿下がこの国の
正統なる王位と栄光をおまといになりますように!
その御方へ、私はひざまずき、深い服従のうちに
忠実な奉仕と
変わらぬ忠誠を永遠にお捧げします。
ソールズベリー伯我らも同じく愛と忠誠を捧げ、
永遠に汚点なく保ち続けます。
ヘンリー王子私にも皆へ感謝を返したい心はあるが、
涙のほかに返す術を知らないのだ。
私生児ああ、今はただ必要なだけの悲しみを時に支払おう。
時のほうが先回りして、我らへ悲しみを負わせたのだから。
このイングランドはこれまでも、これからも決して、
征服者の高慢な足もとに屈しはしない。
ただし、自らを傷つける手助けをした時を除いては。
今、この国の諸侯は再び帰ってきた。
世界の三隅すべてが武装して攻め来ようとも、
我らは激突してみせる。何ものも我らを悔やませはしない、
イングランドが自らに対して誠実でありさえすれば。
