ヨーク火刑を宣告された、あの魔女を引き出せ。
羊飼いああ、ジャンヌ、父さんの心臓は張り裂けそうだ!
遠い国も近い国も、くまなく捜し歩き、
こうして、ようやく、おまえを見つけたというのに、
時ならぬ無残な死を、見届けねばならんのか?
ああ、ジャンヌ、かわいい娘ジャンヌ、父さんも一緒に死のう!
ジャンヌ老いぼれの卑しい守銭奴め、下賤な、ろくでなし!
私は、もっと高貴な血筋の生まれだ。
おまえは父でもなければ、私の味方でもない。
羊飼いいや、いや! 皆様、お願いです、違います。
この娘は、私がこしらえました。村中が知っています。
母親も、まだ生きております。証言できます、
私が独身時代に結んだ、最初の実りが、この娘です。
ウォリック恩知らずめ! 自分の生まれを否定するのか?
ヨークこれで、どのような暮らしをしてきたかが知れる、
邪悪で下劣な暮らしだ。その結末にふさわしい死だ。
羊飼いひどいぞ、ジャンヌ、そこまで頑固になるとは!
神様がご存じだ、おまえは、私の肉を分けた子だ。
おまえのために、幾たび涙を流したことか。
父さんを否定しないでくれ。頼む、優しいジャンヌ。
ジャンヌ百姓、消え失せろ! この男を買収したな、
私の高貴な生まれを隠すため、わざと連れてきたのだ。
羊飼い高貴だと? 確かに、司祭へノーブル金貨を一枚渡しました、
おまえの母さんと結婚した、その朝にな。
ひざまずいて、父さんの祝福を受けろ、かわいい娘よ。
頭を下げないのか? ならば呪われろ、
おまえが生まれた、その時よ! 母さんが、
乳房から、おまえに飲ませた乳に、
ほんの少しでも、鼠殺しが入っていればよかった!
でなければ、野原で子羊の番をしていたとき、
飢えた狼が、おまえを食ってくれればよかった!
父親を否定するのか、この罰当たりな、あばずれ?
ああ、焼け、焼いてしまえ! 絞首刑では甘すぎる。
ヨーク連れていけ。こやつは長く生きすぎた、
世の中を、悪徳で満たすためにな。
ジャンヌまず、自分たちが誰を罪に定めたか、教えてやる。
私は、羊飼いの若者がもうけた子ではない、
代々の王から流れ出た、血を引く者。
徳高く、聖なる者。天より選ばれ、
神の恵みの霊感を受け、
地上で、比類ない奇跡を行う者だ。
邪悪な精霊と関わったことなど、一度もない。
だが、おまえたちは情欲で汚れ、
罪なき者の血にまみれ、
千もの悪徳で腐り、汚れ果てている。
ほかの者が持つ神の恵みを、持たぬから、
悪魔の助けなしに、奇跡を起こすことなど、
できるはずがないと、すぐに決めつける。
違う、思い違いをするな! ジャンヌ・ダルクは、
幼いころから、ずっと処女だった、
心の奥底まで清らかで、汚れを知らぬ。
その乙女の血を、こうも残酷に流すなら、
天国の門で、復讐を求めて叫ぶだろう。
ヨークよし、よし。さっさと、刑場へ連れていけ!
ウォリックそれから聞け、おまえたち。この女は処女だそうだ、
薪を惜しむな。たっぷり用意しろ。
命取りの火刑柱には、松脂の樽を積め、
そうすれば、苦しむ時間も短くなるだろう。
ジャンヌどうしても、その冷酷な心は変わらぬのか?
ならば、ジャンヌよ、弱みを打ち明けよ、
法のもとで、特別な権利を保証する弱みを。
私は身ごもっている、この血まみれの人殺しども!
ならば、胎内の命まで殺すな、
私を無残な死へ引きずってゆくとしても。
ヨークこれは神も驚く! 聖なる乙女が身ごもったと!
ウォリックおまえが起こした奇跡のなかでも、最大だ。
あれほど厳しく潔白を装った末が、これか?
ヨークこやつと王太子は、怪しい真似をしていた。
どう逃げるつもりか、見当はついていたぞ。
ウォリックよし、私生児を生かしてはおけぬ、
父親がシャルルなら、なおさらだ。
ジャンヌ勘違いするな。この子は、あの人の子ではない。
私の愛を受けたのは、アランソンだ。
ヨークアランソンだと! あの悪名高いマキャヴェリか!
命が千あろうと、その子は死ぬ。
ジャンヌおお、待ってくれ。おまえたちを欺いたのだ。
シャルルでも、今、名を挙げた公爵でもない、
私をものにしたのは、ナポリ王レニエだ。
ウォリック妻のある男だと! まったく許しがたい。
ヨーク何という娘だ! 誰を名指せばよいのか、
相手が多すぎて、自分でもわからぬらしい。
ウォリック誰にでも気前よく、身を任せた証拠だ。
ヨークそれでも、何と、清らかな処女だそうだ。
売女め、おまえの言葉が、おまえと腹の子を罪に定めた。
命乞いはするな。すべて無駄だ。
ジャンヌならば、ここから連れていけ。おまえたちに呪いを残す。
輝かしい太陽が、二度とその光を、
おまえたちの住む国へ、照り返さぬように!
ただ闇と、陰鬱な死の影が、おまえたちを包み、
災いと絶望に追い立てられ、
首を折るか、自ら首を吊るまで、離さぬように!
ヨーク粉々に砕け、灰となって焼け尽きろ、
地獄に仕える、汚らわしく呪われた手先め!
枢機卿摂政閣下、王より委任状を預かり、
ご挨拶に参りました。
諸卿、知っていただきたい。キリスト教世界の諸国は、
この度を越した争いを痛ましく思い、
わが国と、野心に燃えるフランスとのあいだに、
全面的な和平を結ぶよう、強く求めています。
王太子と、その一行が、すぐそこまで来ており、
ある件について協議するため、こちらへ近づいています。
ヨークわれらの苦労が、ことごとく、この結末か?
これほど多くの貴族が殺され、
これほど多くの隊長、紳士、兵士が、
この争いに倒れ、
祖国のために命を売り渡したというのに、
最後に、女々しい和平を結ぶのか?
偉大な先祖たちが征服した町の大半を、
裏切りと虚偽と不実によって、
われらは、すでに失ったではないか。
おお、ウォリック、ウォリック! 悲しみとともに見えるぞ、
フランス全土を、完全に失う時が。
ウォリック耐えろ、ヨーク。和平を結ぶにしても、
厳格で過酷な条件を課し、
フランスに、ほとんど利益を与えぬものにしよう。
シャルルイングランドの諸卿、フランスにおいて、
平和な休戦を宣言すると合意したからには、
その盟約に、どのような条件がつくのか、
あなた方自身の口から聞くため、参上した。
ヨーク話せ、ウィンチェスター。この破滅をもたらす敵どもを見ては、
煮えたぎる怒りに喉元を締めつけられ、
毒に侵された声の通り道が、塞がってしまう。
枢機卿シャルル、ならびに一同、定めはこうだ。
ヘンリー王が、ただ哀れみと寛大さから、
そなたたちの国を、苦しい戦争から解放し、
実りある平和のうちに、息をさせようと、
同意してくださることへの見返りとして、
そなたたちは、王冠に忠実な臣下となる。
そしてシャルル、ヘンリー王へ貢ぎ物を納め、
服従すると誓うなら、
王のもとで、副王の座に就け、
これまでどおり、王者の威厳を保つことを許そう。
アランソンでは、王太子は、自分自身の影になれと?
こめかみに、小さな王冠を飾りながら、
実権と権威においては、
一私人の権利しか持てぬというのか?
この提案は不条理で、道理に合わぬ。
シャルルすでに知られているとおり、私は、
ガリア領土の半分以上を手にし、
そこで、正統な王として敬われている。
まだ征服していない残りを欲するあまり、
その大権を、大幅に手放し、
全土の副王としか呼ばれぬ身になるのか?
断る、大使殿。さらに欲張って、
すべてを得る可能性まで失うより、
今、持っているものを守る。
ヨーク高慢なシャルルめ! 秘密裏に仲介を頼み、
盟約を結ばせようとしたのは、おまえだろう。
いざ話が、譲り合いとなった途端、
身分を比べて、もったいぶるのか?
今、そなたが勝手に名乗る称号を受け入れよ、
それは、わが王の恩恵から授かるもので、
そなたの功績による権利ではない。
さもなくば、絶え間ない戦で、苦しめてやる。
レニエ殿下、この契約のさなかに頑固になり、
言いがかりをつけるのは、得策ではありません。
今、この機会を逃せば、十に一つも、
同じ好機は、二度と見つかりますまい。
アランソン正直に申し上げれば、この休戦は、
戦を続ければ、日々、目にすることになる、
虐殺や、情け容赦ない殺戮から、
民を救うための、殿下の方策です。
ゆえに、休戦の盟約を受け入れなさい、
都合のよい時に、破ればよいのです。
ウォリックどうする、シャルル? こちらの条件を受け入れるか?
シャルル受け入れよう。
ただし、わが守備隊が置かれた町には、
そちらが、いかなる権利も主張しないこと。
ヨークならば、騎士として陛下への忠誠を誓え、
決して命に背かず、
イングランド王権に、反旗を翻さぬと、
そなたも、そなたの貴族たちも、イングランド王権に。
よし、望む時に、軍を解散せよ。
軍旗を収め、太鼓を黙らせろ、
ここに、厳かな和平を受け入れる。
