ジャンヌこれが町の門、ルーアンの門だ。
われらの策は、ここを突破口とせねばならない。
気をつけろ。言葉の選び方には用心するのだ。
穀物を売って金を得ようとやって来た、
ありふれた市場の商人らしく話せ。
うまく中へ入れたなら、きっと入れるはずだ、
しかも、怠けた見張りの守りが手薄なら、
合図を送って味方に知らせよう、
王太子シャルルが襲いかかれるように。
第一の兵士この穀物袋が、町を袋の鼠にして略奪する手立てとなる。
そうなれば、俺たちがルーアンの殿様、支配者だ。
よし、門を叩こう。
見張り(中から。)誰だ、そこにいるのは?
ジャンヌフランスの貧しい百姓です。
穀物を売りに来た、しがない市場の者たちで。
見張り入れ、通れ。市の鐘は、もう鳴った。
ジャンヌさあ、ルーアン、おまえの城壁を地まで揺さぶってやる。
シャルル聖ドニよ、この見事な計略を祝福したまえ!
これで再び、ルーアンで枕を高くして眠れる。
オルレアンの私生児ここから、ジャンヌと手引きの者たちが入った。
今や中にいる彼女は、どうやって示すのだ、
どこが最もよく、最も安全な侵入口かを?
レニエあの塔から、松明を突き出すのです。
それがひとたび見えれば、彼女の意図がわかります。
彼女が入った道ほど手薄な入口はない、と。
ジャンヌ見よ、これこそ、めでたい婚礼の松明。
ルーアンを祖国の民と結び合わせる火だ。
だが、タルボット一派には、燃え盛る死の炎となる!
オルレアンの私生児ご覧あれ、高貴なシャルル、味方の合図を。
あの小塔に、燃える松明が立っております。
シャルル今こそ輝け、復讐の彗星のごとく、
すべての敵の没落を告げる予言者となれ!
レニエ一刻も延ばすな。遅れは、危険な結末を招く。
突入し、すぐさま「王太子!」と叫べ。
それから、見張りを皆殺しにせよ。
タルボットフランスよ、この裏切りを、涙で悔いることになるぞ、
このたくらみから、タルボットが生き延びさえすれば。
ジャンヌ、あの魔女、呪われた妖術使いめ、
われらの知らぬ間に、この地獄の悪事を仕組み、
危うく逃れたのだ、フランスの猛威から。
ジャンヌおはよう、勇士の皆さん! パンにする麦が欲しいか?
ブルゴーニュ公爵は、今度あの値段で買うくらいなら、
腹を空かせるほうを選ぶだろうね。
毒麦だらけだったが、お味はいかが?
ブルゴーニュ好きなだけ嘲れ、下劣な悪魔、恥知らずの売女め!
ほどなく、その麦をおまえ自身の喉へ詰め込み、
あの実りを呪わせてやる。
シャルルそれまでに、閣下のほうが飢え死にするかもしれぬぞ。
ベッドフォードああ、言葉ではなく行いで、この裏切りに報復せよ!
ジャンヌご立派な白髭どの、何をなさる? 槍を折り、
椅子に座ったまま、死神と馬上試合でも?
タルボットフランスの汚らわしい悪魔、悪意の塊の鬼婆め、
好色な情夫どもを、周りにはべらせて!
勇敢に老いたこの方をあざけり、
半死半生の男を臆病者となじるのが、おまえに似合いか?
小娘、もう一度、おまえと一戦交えてやる。
さもなくば、タルボットは、この恥とともに滅びよう。
ジャンヌまあ、ずいぶん熱くおなりだね? だがジャンヌよ、口を閉じろ。
タルボットが雷を鳴らせば、あとから雨が降ってくる。
ジャンヌ神よ、議会に幸いを! さて、議長はどなた?
タルボット城から出て、野でわれらと戦う勇気はあるか?
ジャンヌすると閣下は、われらを愚か者と思っておいでらしい。
自分のものが本当に自分のものか、試しに出ろと?
タルボットその罵る魔女ヘカテに言っているのではない。
おまえだ、アランソン、そして、ほかの者たち。
兵士らしく出て、決着をつける気はあるか?
アランソン旦那様、御免だね。
タルボット旦那様だと、くたばれ! フランスの卑しい騾馬引きども!
百姓の小僧のように、城壁へへばりつき、
紳士らしく武器を取る勇気もない。
ジャンヌ行こう、隊長たち! 城壁を離れるよ。
タルボットの顔つきからして、ろくな考えではない。
では、ご機嫌よう、閣下! われらは、ただ、
ここにいると、お知らせに来ただけだ。
タルボットこちらも、ほどなくそこへ行くぞ。
さもなければ、不名誉こそ、タルボット最大の名声となれ!
誓え、ブルゴーニュ、そなたの家の名誉にかけ、
フランスで受けた、国を挙げての屈辱に駆り立てられ、
この町を奪い返すか、さもなくば死ぬと。
そして私は、イングランド王ヘンリーが生きているほど確かに、
その父君が、この地の征服者であったほど確かに、
この裏切られたばかりの町に、
偉大なる獅子心王の心臓が葬られたほど確かに、
この町を奪い返すか、死ぬと誓う。
ブルゴーニュわが誓いも、そなたの誓いと、等しく運命をともにする。
タルボットだが、行く前に、この死に瀕した殿下をおいたわりしよう。
勇猛なるベッドフォード公爵を。さあ、閣下、
もっとよい場所へ、お運びしましょう。
病と衰えたお年に、ふさわしい場所へ。
ベッドフォードタルボット卿、そのように、私の名誉を傷つけるな。
私はここ、ルーアンの城壁を前に座り、
そなたたちの幸も不幸も、ともにする。
ブルゴーニュ勇ましきベッドフォード、どうか説得をお聞きください。
ベッドフォードここを去れという説得なら、聞かぬ。かつて読んだことがある、
勇猛なペンドラゴンは、病を得て輿に横たわりながら、
戦場へ出て、敵を打ち破ったと。
私も、兵士たちの心をよみがえらせられよう、
いつも彼らに、私と同じ心を見てきたのだから。
タルボット死にゆく胸に、なお挫けぬ魂!
ならば、そうなされよ。天よ、老ベッドフォードを守りたまえ!
さあ、もう言葉は要らぬ、勇敢なるブルゴーニュ。
ただちに軍勢を集め、
大口を叩く敵に襲いかかろう。
隊長どちらへ、ジョン・ファストルフ卿、そんなに急いで?
ファストルフどちらへだと! 逃げて、わが身を救うのだ。
またしても、こちらが打ち破られそうだ。
隊長何だ! 逃げて、タルボット卿を見捨てるのか?
ファストルフそうだ。
命が助かるなら、世界中のタルボットを見捨ててな!
隊長卑怯な騎士め! 不運がおまえにつきまとえ!
ベッドフォードさあ、静かな魂よ、天の望むときに旅立て。
私は、敵が打ち破られるのを見届けた。
愚かな人間の信頼や力など、何ほどのものか?
つい先ほどまで、あれほど大胆に嘲っていた者たちが、
今は喜んで逃げ、己の命を救っている。
タルボット一日のうちに失い、また奪い返した!
これは二重の名誉だ、ブルゴーニュ。
だが、この勝利の栄光は、天にこそあれ!
ブルゴーニュ戦に猛きタルボットよ、ブルゴーニュは、
そなたを胸の聖堂に祭り、そこに、
そなたの高貴な武勲を、勇気の記念碑として建てよう。
タルボットかたじけない、心優しき公爵。だが、ジャンヌは今どこだ?
あの女の年老いた使い魔は、眠っているらしい。
私生児の大言はどこだ、シャルルの嘲りは?
何だ、みな意気消沈か? ルーアンも悲しみにうなだれている、
あれほど勇敢な一団が逃げたのが、悲しいと。
さあ、町の秩序を、いくらか整えよう。
腕の立つ役人を、ここに置き、
それから、パリの国王のもとへ出発する。
若きヘンリーが、諸侯とともにおられるからだ。
ブルゴーニュタルボット卿のお望みは、ブルゴーニュの喜びです。
タルボットだが、行く前に忘れてはならぬ、
亡くなったばかりの、高貴なベッドフォード公爵を。
ルーアンで、その葬儀を滞りなく執り行おう。
これほど勇敢に槍を構えた兵士はなく、
これほど優しい心で宮廷を導いた者もいない。
だが、王も、最も力ある君主も、死なねばならぬ。
それが、人の苦しみの行き着くところだからだ。
