グロスター王はどこにおられる。
ベッドフォード王御自らご出馬、敵の陣立てを見に行かれた。
ウェストモーランド敵の戦闘員は、まるまる六万。
エクセター五対一だ。そのうえ、向こうは全員疲れを知らん。
ソールズベリー神の御腕がわれらと共に振るわれんことを。恐るべき兵力差だ。
ご一同、神の御加護を。私は持ち場へ参る——
この次に会うのが天国だというのなら、
そのときは晴れやかに、ベッドフォード卿、
親愛なるグロスター卿、良きエクセター卿、
そして優しいわが縁者よ——武人の方々、ご機嫌よう。
ベッドフォードさらばだ、良きソールズベリー。武運がおまえと共にあるように。
エクセターさらば、優しい卿よ。今日は雄々しく戦ってくれ——
いや、それを言うのはかえって失礼というものだ、
おまえは武勇の固い真髄で、できている男だからな。
ベッドフォード勇気も、優しさも、満ちあふれた男だ。
そのどちらにおいても、王侯の器よ。
ウェストモーランドああ、今ここに、
今日は仕事もしていないイングランドの男たちを、
せめて一万、連れて来られたなら。
ヘンリー王そんな望みを口にするのは誰だ。
従弟のウェストモーランドか。いや、良き従弟よ——
死ぬ定めなら、国に損失を与えるには、
今のわれらで足りている。生きる定めなら、
人数が少ないほど、名誉の分け前は大きい。
神の御心のままに。頼む、ひとりたりとも増やしたいと願うな。
ジョーヴにかけて、私は黄金には目がくらまぬ。
誰が私の払いで飲み食いしようと、気にもかけぬ。
私の衣装を人が着ても、惜しいとは思わぬ。
そうした外側のものは、私の望みの内には住んでいない。
だが、名誉を欲しがることが罪だというのなら、
私はこの世で誰よりも罪深い魂だ。
いや、まことに、従弟よ、イングランドから一兵たりとも望むな。
神の平和にかけて。これほど大きな名誉を、
男ひとり増えたぶんだけ、私の取り分から
削られてなるものか、どれほどの望みと引き換えでもだ。ああ、ひとりも増やしたいと願うな。
それよりも、ウェストモーランド、全軍に触れを出せ、
この戦に胃の腑が向かぬ者は、
立ち去ってよい、と。通行証を作らせて、
路銀の金貨も財布に入れてやろう。
われらと共に死ぬことを恐れる男の道連れで、
死んでたまるか。
今日という日は、聖クリスピアヌスの祭日と呼ばれる。
今日を生き延びて、無事に故郷へ帰る者は、
この日の名が出るたびに、爪先立って胸を張り、
クリスピアヌスの名を聞いては、奮い立つだろう。
今日を生きて、老年まで見届ける者は、
毎年、祭りの前の晩には隣人をもてなして、
「明日は聖クリスピアヌスだ」と言うだろう。
そして袖をまくり上げ、傷跡を見せて、
「この傷は、クリスピアヌスの日に受けたのだ」と言うだろう。
老人は物忘れをする。だが、ほかの何もかもを忘れても、
その日おのれが立てた手柄だけは、
尾ひれをつけて思い出す。そのとき、われらの名は——
その口に、わが家の言葉のように馴染んで——
王ハリー、ベッドフォードにエクセター、
ウォリックにタルボット、ソールズベリーにグロスター、
なみなみと注がれた杯の中で、新しく思い出されるのだ。
この物語を、善良な男は息子に語り継ぐ。
そしてクリスピン・クリスピアヌスの日は、
今日この日から世界の終わりまで、一度たりとも巡り来ることはない、
その日の中で、われらが思い出されることなしには——
われら少数、われら幸福な少数、われら兄弟の一団。
今日、私と共に血を流す者は、
それだけで私の兄弟だ。どれほど卑しい身分の者も、
今日という日が、その身分を貴族に引き上げる。
そしてイングランドで、今ごろ寝床にいる殿方たちは、
ここにいなかったわが身を呪われた者と思い、
聖クリスピンの日にわれらと共に戦った者が語るたびに、
おのれの男ぶりを、安物と思い知るのだ。
ソールズベリー陛下、急ぎ御支度を。
フランス軍は堂々の陣を敷き終えて、
全速でわれらに突きかかって参ります。
ヘンリー王心の支度ができていれば、すべての支度はできている。
ウェストモーランド今さら心の退く者など、くたばってしまえ。
ヘンリー王イングランドからの加勢は、もう望まぬのだな、従弟よ。
ウェストモーランド神の御心のままに。わが君、あなたと私のふたりきりで、
加勢などなしに、この王者の戦を戦えたらよいものを。
ヘンリー王ほう、今度は五千人も願い下げにしたな。
ひとり増やせと願われるより、そのほうがずっと気に入った。
みな持ち場は心得ているな。神の御加護を、諸君すべてに。
モンジョイ今一度、確かめに参った、ハリー王よ、
身代金の談合をする気になったかどうかを、
確実きわまるそなたの敗北の前に。
そなたは今や、渦の淵にあまりに近い、
呑み込まれるのは必定だからだ。加えて、大元帥閣下は
慈悲の心から、そなたに望んでおられる、供の者たちに
悔悟の祈りを忘れさせぬように、と。彼らの魂が、
安らかに、穏やかに、この戦場から引き揚げられるように。
哀れな彼らの身体は、ここに横たわって
腐り果てるほかないのだからな。
ヘンリー王今度は誰の使いで来た。
モンジョイフランス大元帥の使いだ。
ヘンリー王頼むから、前と同じ答えを持ち帰ってくれ。
まず私を仕留めてから、私の骨を売れと伝えるがいい。
ああ、まったく。なぜ哀れな男たちを、そうも馬鹿にできるのだ。
かつて、獅子の皮を、獣がまだ生きているうちに
売った男がいたが、その獅子を狩っていて殺されたぞ。
われらの身体の多くは、疑いもなく、
故国の墓に眠るだろう。その上には、きっと、
今日の働きが、青銅に刻まれて生き続けるはずだ。
そして、勇敢な骨をフランスに残す者たちは、
男らしく死んだのだから、おまえたちの糞山に埋められようと、
名声を得る。太陽が彼らに挨拶をして、
彼らの名誉を、立ちのぼらせて天まで引き上げてくれるのだからな。
地上に残る亡骸は、おまえたちの風土を噎せ返らせ、
その臭いは、フランスに疫病を生むだろう。
見よ、わがイングランド兵の、あふれ返る勇気を。
死んでもなお、跳ね返る弾丸さながらに、
二度目の暴れ道へ躍り出て、
死の余波でまた敵を斃すのだ。
誇りを持って言わせてもらおう。大元帥に伝えろ、
われらは平日働きの武人にすぎぬ。
華やかさも、金箔も、みなすっかり汚れてしまった、
つらい野を、雨に打たれて行軍するうちにな。
この軍勢には、羽根飾りひとつ残っていない——
われらが飛んで逃げぬという、何よりの証拠だろうよ——
時の流れが、われらをむさ苦しい身なりに擦り切らせた。
だが、ミサにかけて、われらの心は正装だ。
それに、わが哀れな兵たちは言っている、夜になる前に、
もっと小ざっぱりした服に着替えてみせる、さもなければ、
フランス兵の頭から派手な新しい上着を引き剥がして、
奴らをお払い箱にしてやる、とな。彼らがそれをやってのけたら——
神の御心にかなえば、やってのけるだろうが——私の身代金も、
ほどなく取り立てられよう。使者よ、骨折りはやめておけ。
もう身代金のことで来るな、優しい使者どの。
奴らの手に入るものは、誓って何もない、この五体のほかにはな。
それも、私が残してやるつもりの姿で手に入れたところで、
奴らの実入りにはなるまいよ。そう大元帥に伝えろ。
モンジョイ確かに伝えよう、ハリー王。では、ご機嫌よう——
そなたが使者の声を聞くことは、もう二度とない。
ヘンリー王また身代金の催促に来るだろうと思うがな。
ヨーク陛下、伏してひざまずき、願い奉ります、
先陣の指揮を、それがしに。
ヘンリー王持って行け、勇敢なヨーク。——さあ、兵たちよ、進軍だ。
そして神よ、御心のままに、この日の勝敗を定めたまえ。
