イノバーバスだめだ、だめだ、何もかもだめだ! もう見ていられぬ。
アントニアド号、エジプトの旗艦が、
六十隻すべてを引き連れて、舵を返して逃げていく。
それを見て俺の目は焼け爛れた。
スケーラス神々よ、女神たちよ、
その全会議よ!
イノバーバス何をそう嘆いている!
スケーラス世界の大きいほうの半分が、
まったくの愚かさゆえに失われた。我らは口づけひとつで
王国も属州も投げ捨てたのだ。
イノバーバス戦の様子はどうだ?
スケーラスこちら側は、斑点の出た疫病のようだ、
死が確実な。あのエジプトの汚らわしい牝馬が——
業病にでも取りつかれるがいい!——戦の真っ最中に、
勝ち目が双子のようにどちらにも等しく見えたとき、
いや、むしろこちらのほうが兄のようだったのに、
六月の牛のように虻に刺されて、
帆を上げて逃げ出したのだ。
イノバーバスそれは俺も見た。
その光景に俺の目は病んで、
それ以上見ていられなかった。
スケーラスあの女がいったん風上へ舵を切ると、
その魔力が生んだ気高い廃墟、アントニーが、
海の翼を打ちつけて、恋に狂った鴨のように、
戦を最高潮のさなかに捨てて、あの女を追って飛んでいった。
あれほど恥ずべき振る舞いは見たことがない。
経験も、男らしさも、名誉も、かつてあれほど
自らを汚したことはなかった。
イノバーバスああ、なんということだ!
キャニディアス我らの海での運は息が切れ、
なんとも嘆かわしく沈んでいく。我らの将軍が
自ら知っていたご自身のままであったなら、うまくいっていたものを。
おお、あの方はご自身で、これ以上ないほど無様に、
我らの敗走の手本を示してしまわれた!
イノバーバスああ、そこまで来ているのか。
ならば、まことにこれでおしまいだ。
キャニディアスペロポネソスの方へ逃げていった。
スケーラスそちらへは行きやすい。俺はそこで
この先どうなるかを待つとしよう。
キャニディアス俺はシーザーに
我が軍団と騎兵を引き渡す。すでに六人の王が
降伏の道を示してくれている。
イノバーバス俺はまだアントニー様の
傷ついた運に従おう、理性は
風に逆らう向きに座っているとしてもな。
