伯爵夫人何もかも私の願ったとおりになりました、あの子がヘレナと一緒に戻らないことだけを除けば。
道化誓って、若殿はよほど憂鬱なお方だとお見受けします。
伯爵夫人何を見てそう思うのです、聞かせておくれ。
道化なに、長靴を見つめて歌う。襞襟を直して歌う。人に尋ねて歌う。歯をほじって歌う。私の知っている男など、この憂鬱の癖のおかげで、立派な荘園をたった一曲分の安値で売りましたよ。
伯爵夫人何と書いてあるか、いつ帰るつもりか見せておくれ。
道化宮廷へ行ってから、イザベルには気がなくなりました。田舎の古鱈もイザベルも、宮廷の古鱈やイザベルとはまるで違う。私のキューピッドは脳味噌を殴り出され、今じゃ老人が金を愛すように、食い気も色気もなく愛し始めましたよ。
伯爵夫人これは何です?
道化そこにある、そのものですよ。
伯爵夫人(手紙を読む。)お母上に嫁を送り届けました。あの女は王を救い、私を破滅させました。私はあれと結婚はしたが、床入りはしていません。そして、その「していない」を永遠にすると誓いました。私が逃げたとやがてお耳に入るでしょう。噂が届く前にお知りおきください。この世に横幅がある限り、私はどこまでも長い距離を置きます。ご恩は忘れません。
不運な息子、
バートラム。
これはいけない、向こう見ずで手綱の利かぬ子。
あれほど善い王のご厚意から逃げ、
その御怒りをみずから頭に引き寄せるとは、
一国の帝王さえ侮れぬほど貞淑な娘を、
侮り値踏みしたばかりに。
道化奥方様、大変です、中で二人の兵士が若奥様に、重たい知らせを!
伯爵夫人何があったのです?
道化いや、知らせには救いもございます、少しは救いも。ご子息は私が思ったほど早く殺されそうにありません。
伯爵夫人なぜ、あの子が殺されるのです?
道化私もそう申します、奥方様、逃げておいでなら。そうだと聞きました。危ないのは立ち続けること。戦なら男を失い、女相手なら子を得ます。ほら、あの方々が詳しく話します。私が聞いたのは、ご子息が逃げたということだけ。
第一紳士ご機嫌うるわしゅう、奥方様。
ヘレナ奥方様、旦那様は行ってしまわれました、永遠に。
第二紳士そう言ってはいけません。
伯爵夫人辛抱をお考え。お二人、どうか、
私は喜びと悲しみの気まぐれをあまりに味わったので、
どちらも最初の顔を不意に見せたくらいでは、
取り乱す女にはされません。息子はどこです、教えてください。
第二紳士奥方様、若殿はフィレンツェ公爵に仕えに行かれました。
その道すがらお会いしました。私どもはそこから参り、
宮廷で手早く用事をいくつか済ませましたら、
またフィレンツェへ向かいます。
ヘレナ奥方様、この手紙をご覧ください。これが私の通行証です。
ヘレナ決して外れぬこの指輪をそなたが私の指から手に入れ、そなたの腹から生まれ、私が父親である子を私に見せられたとき、そのときは私を夫と呼べ。だが、その「とき」には「決してない」と書き添えておく。
何という恐ろしい宣告。
伯爵夫人この手紙を届けたのは、あなた方ですか?
第一紳士さようでございます。
中身を思えば、お届けした苦労が悲しゅうございます。
伯爵夫人お願い、ヘレナ、もう少し顔を上げておくれ。
お前が自分の悲しみを残らず一人占めにしたら、
私の半分を盗むことになる。あれは私の息子だった。
だが今、私はその名を自分の血から洗い落とす、
そしてお前だけをわが子とする。あれはフィレンツェへ向かったのですか?
第二紳士はい、奥方様。
伯爵夫人兵士になるために?
第二紳士それが若殿の気高いお志です。どうか信じてください、
公爵は若殿にあらゆる栄誉を授けましょう、
その働きと機会にふさわしいだけのものを。
伯爵夫人あなた方もそこへ戻るのですか?
第一紳士はい、奥方様、速さの翼を限りなく急がせて。
ヘレナ(手紙を読む。)妻がいなくなるまで、フランスには私の持ち物は何もない。
胸をえぐる言葉。
伯爵夫人そこにそう書いてあるの?
ヘレナはい、奥方様。
第一紳士おそらく、手だけが思い切って書いたのでしょう、心までは同意していなかった。
伯爵夫人妻がいなくなるまで、フランスには何もないですって!
ここには、あの子にもったいないものなど一つもない、
ただ、あの娘を除いては。あの娘なら
あんな無礼な若造を二十人従え、
時ごとに奥方様と呼ばせても足りない。誰が一緒でした?
第一紳士ただ一人の従者、紳士でございます、
私も以前見知ったことのある男です。
伯爵夫人パローレス、そうでしょう?
第一紳士はい、奥方様、あの男です。
伯爵夫人ひどく腐った男、悪意が詰まっている。
息子は由緒正しいその性根を
あの男の唆しで腐らせている。
第一紳士まことに、奥方様、
あの男には、あり余るほど、あり余るものがございます、
それで大したものをお持ちだと思わせるのでしょう。
伯爵夫人ようこそ、お二人とも。
息子に会ったら、お願いがあります、
剣では決して勝ち取れぬと伝えてください、
自分が失っている名誉は。さらにお願いを
手紙にして、お持たせします。
第二紳士お力になります、奥方様、
そのことも、ほかのどんな大切なご用も。
伯爵夫人いいえ、お互いに礼を交わすだけのこと。
さあ、こちらへ!
ヘレナ「妻がいなくなるまで、フランスには私の持ち物は何もない」
フランスには何もない、妻がいるうちは!
ならば妻をなくしましょう、ルシヨン、フランスから消えましょう。
そうすれば、すべてがあなたに戻る。かわいそうな旦那様! 私なの、
あなたを国から追い、
その柔らかな手足を、誰も容赦せぬ
戦の成り行きにさらしたのは? 私なの、
あなたを華やぐ宮廷から追いやったのは、そこでは
美しい目の矢に射られていたあなたを、今度は
煙吐く銃の的にしたのは? ああ、鉛の使者たち、
炎の荒々しい速さに乗って飛ぶ弾よ、
狙いを外して飛べ。静かに澄んだ空気をかき乱し、
貫く鋭い歌を歌わせても、旦那様には触れないで。
あの人を撃つ者がいるなら、そこへ立たせたのは私。
あの人の進み出た胸へ銃を構える者がいるなら、
その場に縛りつけている悪党は私。
私が手を下さなくとも、私こそが
あの人の死を引き起こす。ならばいっそ、
飢えに締めつけられ、鋭く
吼える、獲物を貪る獅子に出会うほうがいい。
自然が人に負わせるあらゆる苦しみを
一度に私が受けるほうがいい。だめ、帰って、ルシヨン、
危険から名誉が勝ち取るものは傷跡だけ、
その名誉もすべて失うことが多い。私は去る。
私がここにいるから、あなたは帰れない。
そのために居残るの? いいえ、いいえ、たとえ
楽園の風がこの館をあおぎ、
天使がすべての務めを果たしてくれようと、私は去る、
哀れを誘う噂に、私の旅立ちを告げさせ、
あなたの耳を慰めるため。来て、夜。終われ、昼!
闇に紛れ、哀れな盗人となって、そっと消えよう。
