スピード旦那、手袋です。
ヴァレンタイン私のではない。私の手袋は両方はめている。
スピードでは、これは旦那のかもしれません、こいつは片方きりですから。
ヴァレンタインおっ! 見せろ——そうだ、よこせ、私のだ——
神々しいものを飾る、愛らしい装い!
ああ、シルヴィア、シルヴィア!
スピードシルヴィア様! シルヴィア様!
ヴァレンタイン何だ、おい?
スピードお声の届くところにはおられません、旦那。
ヴァレンタインおい、誰があの方を呼べと言った?
スピード旦那様ですよ。でなけりゃ、私の聞き違いで。
ヴァレンタインまったく、おまえはいつも先走りすぎる。
スピードこの前は、遅すぎると叱られましたがね。
ヴァレンタインもういい。教えろ、シルヴィア様を知っているか?
スピード旦那がお惚れになってる方ですか?
ヴァレンタインなぜ、私が恋をしていると分かる?
スピードそりゃ、こういう目印です。まず、プローテュース様同様、ふさぎ屋のように腕を組むことを覚えた。コマドリのように恋歌を味わう。疫病持ちのように一人で歩く。読み書きの初歩をなくした学童のように溜息をつく。婆さんを葬った小娘のように泣く。療養中の病人のように断食する。泥棒を恐れる男のように寝ずの番をする。万聖節の物乞いのように、めそめそしゃべる。昔の旦那は、笑えば雄鶏のように時を告げ、歩けば獅子のように堂々と歩き、断食するのは決まって食事の直後、悲しい顔をするのは金がない時でした。それが今では、女主人を得てすっかり変身したもので、こうして見ても、私の主人だとはほとんど思えません。
ヴァレンタインそのすべてが、私に見て取れるのか?
スピード旦那の外から、全部見て取れます。
ヴァレンタイン私の外から? 見えるはずがない。
スピード外から? ええ、確かです。旦那があれほど単純でなければ、誰にも見えないでしょう。だが、こうした愚かさは外にあるどころか、旦那の内に詰まっていて、検尿瓶の水のように体を透かして輝いている。旦那を目にする者は誰もが医者になって、その病状にひと言つけずにはいられません。
ヴァレンタインそれより教えろ、私の愛するシルヴィア様を知っているか?
スピード夕食の席に着くと、旦那が穴の開くほど見つめる方ですか?
ヴァレンタインそれに気づいたか? そう、その方だ。
スピードいや、旦那、あの方は知りません。
ヴァレンタイン私が見つめるのを見て、あの方だと知っているのに、知らないだと?
スピードあの方は、不器量ではありませんか?
ヴァレンタイン美しいというより、顔立ちがよいのだ。
スピード旦那、それなら十分よく知ってます。
ヴァレンタイン何を知っている?
スピードあの方は、旦那にひいきされるほどには美しくない、と。
ヴァレンタイン私が言うのは、美しさは絶品、恩情は無限ということだ。
スピードそりゃ、一方は絵の具で描いたもの、もう一方は数にも入らぬものだからです。
ヴァレンタインどう描いた? どう数にも入らぬ?
スピードそりゃ旦那、美しく見せるため、あれほど塗り描いてるので、誰もあの方の美しさを数に入れません。
ヴァレンタインでは私はどうなる? 私はあの方の美しさを高く買っている。
スピード旦那は、あの方が醜く崩れてからの姿を、一度も見てませんから。
ヴァレンタインいつから醜く崩れた?
スピード旦那が惚れた時からです。
ヴァレンタイン初めて見た時から愛している。それでも今なお、美しく見える。
スピード愛してるなら、見ることはできません。
ヴァレンタインなぜだ?
スピード恋は盲目ですから。ああ、旦那に私の目があれば! せめて、プローテュース様が靴下留めもせず歩いているのを叱った頃の、あの光がご自分の目に戻れば!
ヴァレンタインそうしたら、何が見える?
スピード今の旦那ご自身の愚かさと、あの方の並外れた醜さが。プローテュース様は恋のせいで、靴下を留める目がなくなった。旦那は恋のせいで、靴下を履く目さえなくなってます。
ヴァレンタインすると、おまえも恋をしているらしいな。この前の朝、私の靴を拭く目がなかった。
スピードそのとおり。私は寝床に恋してました。おかげさまで旦那には、その恋を鞭打たれましたから、私も大胆に、旦那の恋を叱れるというものです。
ヴァレンタイン結論を言えば、私はあの人へ思いが立っている。
スピードなら、座っていただきたい。そうすりゃ、立った思いも止みます。
ヴァレンタイン昨夜、あの方が愛するある人へ、詩を何行か書けと頼まれた。
スピード書いたんですか?
ヴァレンタイン書いた。
スピード足を引きずるような、ひどい出来では?
ヴァレンタインいや、私にできるかぎり、よく書いた。静かに! あの方が来る。
スピード(傍白。)おお、見事な人形芝居! とびきりの操り人形! さあ、旦那がこの人形に台詞を当てるぞ。
ヴァレンタインわが姫、わが女主人、千回のおはようを。
スピード(傍白。)おお、こりゃ、おやすみなさいだ! ここには礼儀が百万もある。
シルヴィア騎士ヴァレンタイン、そしてわが従者、あなたには二千回を。
スピード(傍白。)利息をつけて返すべきは旦那なのに、あちらが倍にして返したぞ。
ヴァレンタインお言いつけどおり、あなたのお手紙を書きました、
人知れぬ、名も明かされぬ、ご友人へ。
本当は、ひどく気が進まぬ仕事でした、
あなたにお仕えする務めでなければ。
シルヴィアありがとう、優しい従者。たいそう見事な書記ぶりです。
ヴァレンタイン本当に、姫君、ずいぶん苦労して仕上げました。
誰のもとへ行く手紙か、分からなかったので、
当てずっぽうに、迷いながら書きました。
シルヴィアひょっとして、それほどの骨折りを、重荷にお思いですか?
ヴァレンタインいいえ。お役に立つなら、お書きします、
ご命令なら、この千倍でも。
ですが——
シルヴィア見事な終止符! ええ、その続きを当ててみましょう。
「ですが」、私は口にしません。「ですが」、気にも留めません。
「ですが」、これをお返しします。「ですが」、ありがとう。
これからはもう、あなたを煩わせないつもりです。
スピード(傍白。)ですが、また煩わせる。「ですが」が、もう一つ。
ヴァレンタイン姫君、どういうおつもりです? お気に召しませんか?
シルヴィアええ、ええ——詩句はたいそう気が利いています。
でも、気が進まなかったのなら、お返しします。
さあ、お取りになって。
ヴァレンタイン姫君、これはあなたのためのものです。
シルヴィアええ、ええ——私が頼んで、あなたがお書きになった。
でも私は要りません。あなたのものです。
もっと心を動かすように、書いてほしかったわ。
ヴァレンタインよろしければ、姫君、もう一通お書きします。
シルヴィア書き上げたら、私のために、ご自分で読み返して。
お気に召したなら、それでよし。駄目なら、まあ、それもよし。
ヴァレンタイン私が気に入ったなら、姫君、その時は?
シルヴィアそうね、気に入ったなら、骨折り賃としてお取りなさい。
では、ご機嫌よう、わが従者。
スピードおお、目には見えず、解きようもなく、姿なき冗談、
人の顔の鼻や、尖塔の風見鶏と同じほど、丸見えなのに!
旦那があの方を口説けば、あの方は求婚者の旦那に教えた、
自分の弟子を、自分の師匠に仕立てるすべを。
おお、見事な仕掛け! これ以上のものを聞いたことがあるか、
書記の旦那が、自分自身へ恋文を書くなんて?
ヴァレンタインどうした、おい? 自分相手に何を論じている?
スピードいえ、論じず、韻を踏んでました。わけがあるのは旦那です。
ヴァレンタイン何をするわけだ?
スピードシルヴィア様からの、言葉の使いになるわけです。
ヴァレンタイン誰への?
スピード旦那ご自身へ。つまり、あの方は比喩を使って、旦那を口説いてます。
ヴァレンタインどんな比喩だ?
スピード文字を使って、と言うべきでした。
ヴァレンタインだが、あの方は私に何も書いていないぞ?
スピード旦那に、旦那宛の手紙を書かせたんだから、ご自分で書く必要がどこに? この冗談が分からないんですか?
ヴァレンタイン分からない、本当に。
スピード本当、旦那の物分かりは信じられませんね。では、あの方が渡した本気のしるしには気づきました?
ヴァレンタイン何も渡されていない、腹立ちまぎれの一言以外は。
スピードいや、手紙を渡されたでしょう。
ヴァレンタインあれは、あの方の友人へ私が書いた手紙だ。
スピードそしてその手紙を、あの方は届けた。それで話はおしまい。
ヴァレンタインそれ以上、悪い話でなければよいが。
スピード保証します、これ以上なくうまくいってます。
何度も旦那は手紙を書いたのに、あの方は慎みゆえ、
あるいは暇な時間がなく、返事を書けなかった。
あるいは使者に胸の内を暴かれるのを恐れて、
恋する本人に、恋人宛の手紙を自分で書かせた。
これは活字どおり申し上げる、活字でそう読みましたから。
なぜぼんやりしてるんです、旦那? 昼飯の時間です。
ヴァレンタイン私はもう食べた。
スピードええ、でも聞いてください、旦那。恋というカメレオンは空気を食べて生きられても、私は食い物で養われる人間、肉が食べたい。ああ、あの方みたいに動かぬふりはやめて、心を動かし、足を動かしてください。
