ヴェンティディアス最も誉れ高きタイモン様。
神々は、老いた父を思い出してくださり、
長い安らぎのもとへ、お召しになりました。
父は幸せに世を去り、わたしを裕福にしてくれました。
そこで、惜しみないお心へ、徳ある感謝を返す務めとして、
あのタラントンをお返しいたします。
感謝と奉仕を倍にして。あのお金の助けにより、
わたしは自由を得たのですから。
タイモンいや、決して受け取れない。
誠実なヴェンティディアス、わたしの愛を取り違えている。
わたしはいつでも、見返りなく与えた。受け取るのなら、
本当に「与えた」と言える者はいない。
われらより上の神々が、そんなやり取りをしているとしても、まねてはならぬ。
富める者の過ちは、美しく見えてしまうものだ。
ヴェンティディアス何と気高いお心だ。
タイモンいや、皆さま。
タイモン儀礼というものは、もともと、
心のこもらぬ行い、空虚な歓迎を、上塗りして光らせるために作られた。
見せる前から悔いている、取り消される善意を飾るために。
だが、真の友情があるところには、儀礼など要らない。
どうか、お座りください。わが財産にとって、皆さまは、
わたしにとっての財産より、はるかに大切な客なのです。
第一貴族殿、われらも常に、そのことを認めております。
アペマンタスほう、ほう、罪を認めたか。なら、もう首も吊っただろうな。
タイモンおお、アペマンタス、よく来てくれた。
アペマンタスいや。
おれを歓迎することなど、おまえにはできぬ。
おまえに戸口から放り出されるため、来たのだ。
タイモン何という無礼者だ。おまえには、妙な気質が染みついている。
人には似つかわしくない。まったく褒められぬぞ。
皆さま、「怒りは短い狂気」と言いますが、あの男はいつでも怒っている。さあ、一人だけの食卓を与えてやれ。仲間を好まぬし、実際、仲間にふさわしくもない。
アペマンタス危険を承知で、おれを置いておけ、タイモン。観察するために来た。先に警告しておくぞ。
タイモンおまえの言葉など気に留めぬ。アテネ人なのだから、歓迎しよう。わたし自身に、おまえを拒む力など持ちたくない。頼むから、料理で口を塞いでくれ。
アペマンタスおまえの料理など、まっぴらだ。喉に詰まる。おれは決して、おまえへお世辞を言わぬからな。ああ神々よ、これほど多くの男がタイモンを食っているのに、本人には見えない。これほど多くの者が、ただ一人の血へ肉を浸す姿は、見ていて胸が痛む。しかも狂気の極みは、タイモン自身が、もっと食えと励ましていることだ。
よく人は、人と一緒にいて、自分を信じていられるものだ。
客を招くなら、ナイフを持たせずに呼ぶべきだろう。
肉のためにもよく、命のためには、もっと安全だ。
実例はいくらでもある。今、隣に座る男が、パンを分け、同じ杯を分けて飲み、息まで誓いの担保にしている。それでいて、その男こそ、いち早く相手を殺す。すでに証明済みだ。おれが大物なら、食事で酒を飲むのが怖いだろう。
危険な音を立てる気管を、見つけられてしまうからな。
大物は、喉に甲冑をつけて飲むがよい。
タイモン心から、殿へ。皆にも、この乾杯を回してくれ。
第二貴族こちらへ流してください、善き殿。
アペマンタスこちらへ流せと。立派な男だ。潮の満ち引きを、よく心得ている。その乾杯が、おまえと財産を、ひどい顔色にするぞ、タイモン。ここにあるのは、罪を犯すにも弱すぎるもの。正直な水だ。人を泥沼へ置き去りにしたこともない。
この水と、おれの食べ物は、同じ身分。優劣はない。
宴は高慢すぎて、神々へ感謝しようともしない。
アペマンタス不死なる神々よ、金など求めぬ。
祈る相手は、わが身だけ。
どうか、おれが決して愚かにならぬよう。
誓いや証文を立てた人間を信じたり、
泣いてみせる娼婦を信じたり、
眠ったふりをする犬を信じたり、
自由を預けた看守を信じたり、
困った時の友を信じたりせぬように。
アーメン。さあ、食べよう。
金持ちは罪を食い、おれは根を食う。
アペマンタス善き心に、たっぷり滋養を、アペマンタスよ。
タイモンアルシバイアディーズ将軍、今も心は戦場にあるようだな。
アルシバイアディーズわが心は、いつでも殿にお仕えしております。
タイモン友との夕食より、敵を朝食にするほうが、好きなのだろう。
アルシバイアディーズ倒したばかりで、まだ血を流している敵なら、あれほど旨い肉はありません。親友にも、そんな宴へ来てもらいたいものです。
アペマンタスなら、あの太ったおべっか使いどもが、皆おまえの敵ならよかった。おまえが殺し、おれを食事に呼べるようにな。
第一貴族殿、いつか、われらの心をお使いいただく幸福に恵まれ、熱意の一端でも示せたなら、われらは永遠に、欠けるところのない者になれたと思うでしょう。
タイモンおお、善き友たちよ、疑うまでもない。神々自身が、わたしが皆から多くの助けを受けるよう、備えてくださった。そうでなければ、どうして皆が、わたしの友でありえよう。幾千もの人々の中から、なぜ皆だけが慈愛に満ちた名で呼ばれる。何より、わが心に属しているからではないか。皆が慎みを持って自らを語れる以上に、わたしは心の中で皆のことを語ってきた。そして今、ここまで確かめた。ああ神々よ、わたしは思う。友を必要とする時が決してないのなら、なぜ友など必要なのか。使うことがないなら、友は生きるものの中で、最も不要な存在になってしまう。箱の中へ吊るされ、自分だけに音を聞かせる、美しい楽器と同じだ。だからわたしは、皆へもっと近づけるよう、もっと貧しければよいと、幾度も願った。われらは、人へ恵みを与えるため生まれた。ならば友の富ほど、わが物と呼ぶにふさわしいものが、ほかにあるだろうか。ああ、兄弟のような大勢の友が、互いの財産を自由に使えるとは、何と尊い慰めだ。ああ、喜びよ、生まれる前から涙に溺れてしまうとは。どうやら、この目は水をこらえられぬ。皆の欠点を忘れるため、皆へ乾杯しよう。
アペマンタス皆に酒を飲ませるため、おまえが泣いているのだ、タイモン。
第二貴族われらの目にも、同じ喜びが宿り、
その瞬間、赤子のように生まれ出ました。
アペマンタスほう、ほう。その赤子が私生児だと思うと、笑えてくる。
第三貴族本当に、殿のお言葉には、ひどく胸を動かされました。
アペマンタスひどくだと。
タイモンあの喇叭は、何を知らせる。
タイモンどうした。
従者殿、何人かのご婦人方が、ぜひ中へ入りたいと願っております。
タイモンご婦人方が。何を望んでいるのだ。
従者先触れの者が一緒です、殿。その役目として、ご婦人方の趣向をお伝えします。
タイモンどうか、お通ししてくれ。
キューピッド誉れ高きタイモン、そしてその恵みを
味わうすべての者へ、祝福を。五つの優れた感覚が、
あなたを守護者と認め、その豊かな胸を、
心から祝いに来た。耳も、
味覚も、触覚も、嗅覚も、あなたの宴に満たされ、立ち上がった。
今度はただ、その目を楽しませるため、やって来た。
タイモン皆、歓迎しよう。親切に迎え入れてくれ。
音楽よ、歓迎の音を奏でよ。
第一貴族殿、どれほど広く愛されているか、おわかりでしょう。
アペマンタスおやおや、虚栄の大波が、こちらへ押し寄せてくるぞ。
踊っている。狂った女どもだ。
同じ狂気こそ、この世の栄華。
この華美な見世物と、わずかな油と根に、違いなどあるものか。
われらは楽しむため、自ら馬鹿になり、
お世辞を使い果たして、あの男たちへ酒を飲ませる。
やがて老いたそいつらの上へ、すべて吐き戻すのだ。
毒のある悪意と、妬みを込めて。
堕落させず、自らも堕落していない者など、どこにいる。
友から贈られた蹴りを、ひとつも墓へ持って行かず、
死ぬ者などいるのか。
今、おれの前で踊る者たちが、
いつか、この体を踏みつけそうで恐ろしい。前にもあったことだ。
沈みゆく太陽には、人は戸を閉ざす。
タイモン麗しいご婦人方、皆さまは、われらの楽しみを大いに飾り、
この宴へ、美しい形を与えてくださった。
もとは、その半分も美しく、優しいものではなかった。
皆さまが、価値と輝きを加えてくださり、
わたし自身が考えた趣向で、わたしを楽しませてくださった。
心から、お礼を申し上げます。
第一淑女殿は、わたくしたちを、いちばんよいところで受け取ってくださいました。
アペマンタスまったくだ。悪いところは汚らしくて、つかもうとしても、つかみきれまい。
タイモンご婦人方、何もせずに待っている宴が、皆さまをお待ちしています。
どうぞ、ご自由におくつろぎください。
淑女たち心から感謝いたします、殿。
タイモンフレヴィアス。
フレヴィアスはい、殿。
タイモン小さな宝石箱を、ここへ持って来てくれ。
フレヴィアスはい、殿。まだ宝石をお与えになるのか。
フレヴィアスあのお気持ちに、逆らうことはできない。
さもなければ、申し上げるのに。そうだ、本当に申し上げたい。
すべてを使い果たせば、逆らいたくとも、行く手を塞がれると。
気前よさにも、背中に目がついていればよいのに。
善い心のため、人が惨めにならずに済むように。
第一貴族われらの従者は、どこにいる。
従者こちらで、支度を整えております。
第二貴族馬を用意しろ。
タイモンおお、わが友たちよ。
一言だけ、申し上げたい。ご覧ください、善き殿。
ぜひお願いしたい。この宝石を身につけることで、
さらに値打ちを高め、わたしへ名誉を与えてください。受け取り、身につけてほしい。
親愛なる殿よ。
第一貴族すでに殿から、あまりに多くの贈り物をいただいております。
全員われら全員が、そうです。
従者殿、元老院の貴族の方々が、
たった今、馬を降り、訪ねていらっしゃいました。
タイモン心から歓迎しよう。
フレヴィアスお願いでございます、殿。
一言だけ、お聞きください。殿ご自身に深く関わることです。
タイモン深く関わるのか。ならば、別の時に聞こう。
頼むから、皆をもてなす支度をしてくれ。
フレヴィアス(傍白。)どうすればよいのか、わたしにも、ほとんどわからない。
第二従者恐れながら、殿。ルーシアス様が、
惜しみないご厚意から、殿へ贈り物をなさいました。
銀の馬具をつけた、乳のように白い馬を四頭です。
タイモン喜んで受け取ろう。贈り物を、
礼を尽くして、もてなしてくれ。
タイモンどうした。どんな知らせだ。
第三従者殿、誉れ高きルーカラス様が、明日、狩りへご同行くださるよう願っておられます。また殿へ、二つがいの猟犬をお贈りになりました。
タイモンともに狩りへ行こう。猟犬を受け取り、
必ず、立派な返礼をするように。
フレヴィアス(傍白。)この先、いったい、どうなるのだ。
殿は、もてなしを整え、高価な贈り物をせよと命じる。
だが、すべて空の金庫から出すのだ。
ご自分の財布を知ろうともせず、わたしに機会もくださらない。
その心が、どれほどの乞食になっているか、お見せする機会を。
願いをかなえる力など、何ひとつ残っていないのに。
約束は、財産のはるか先まで飛び去り、
口にすることは、すべて借金になっている。一言ごとに、
借りを作る。あまりに親切なため、今や、
その利息まで払っている。土地も、債権者の帳簿へ載せられた。
ああ、無理やり追い出される前に、
穏やかに、職を解いてもらえたなら。
養わねばならぬ友がいない者のほうが、幸せだ。
敵よりも、さらにひどい友を持つ者より。
殿を思い、胸の内で血を流している。
タイモン皆さまは、ご自分を
ひどく不当に扱っている。ご自身の価値を、あまりに低く見積もっている。
さあ、殿。われらの愛の、ささやかなしるしです。
第二貴族並々ならぬ感謝とともに、頂戴いたします。
第三貴族おお、まさに気前よさの魂そのものだ。
タイモンそうだ、今、思い出しました。殿は先日、
わたしが乗っていた栗毛の駿馬を、褒めてくださった。
お気に召したのだから、あの馬は殿のものです。
第二貴族おお、どうか、それだけはご容赦ください、殿。
タイモンわたしの言葉を信じてください。人が心から褒めるのは、
自ら愛するものだけだと知っています。
友の愛情は、わが愛情と同じ重さで量る。
本心です。いずれ、またお呼びしましょう。
貴族たちおお、これほど喜ばしいことはありません。
タイモン皆さまを、そして一人ひとりのご訪問を、
これほどありがたく胸へ受け止めると、贈るだけでは足りない。
王国でさえ、友へ分け与えられるように思う。
そして決して疲れない。アルシバイアディーズ、
おまえは軍人だ。だから、めったに裕福ではない。
これは慈善として、おまえへ届く。おまえの暮らしはすべて、
死者たちの間にあり、おまえが持つ土地はすべて、
陣を構えた戦場にあるのだから。
アルシバイアディーズはい、血で汚された土地です、殿。
第一貴族われらは、これほど徳高い恩で結ばれ。
タイモンそして同じく、
わたしも皆さまへ結ばれています。
第二貴族限りなく、大切にしていただき。
タイモンすべて皆さまのものです。明かりを、もっと明かりを。
第一貴族最上の幸福と、
名誉と幸運が、タイモン様とともにありますように。
タイモンいつでも、友のために用意しておこう。
アペマンタス何という騒ぎだ。
お辞儀へ仕え、尻を突き出している。
あの脚に、もらった金ほどの値打ちがあるかは疑わしい。
友情は、澱でいっぱいだ。偽りの心を持つ者に、
丈夫な脚など、決して与えるべきではない。
こうして正直な馬鹿は、礼儀作法へ財産を注ぎ込む。
タイモンさあ、アペマンタス。おまえが、むっつりしていなければ、
わたしも、おまえによくしてやるのだが。
アペマンタスいや、何もいらぬ。おれまで買収されたら、おまえを罵る者が一人もいなくなり、ますます速く罪を重ねるだろう。タイモン、おまえは長く与え続けすぎた。もうすぐ証文の中で、自分自身まで譲り渡すのではないか。この宴、華美、虚栄が、なぜ必要だ。
タイモンいや、おまえが一度でも世間を罵り始めたら、耳を貸さぬと誓っている。さらばだ。今度は、もっと美しい調べとともに来い。
アペマンタスそうか。
今、おまえは聞こうとしない。なら、その時には聞かせてやらぬ。
おまえの天国へ通じる戸を、閉ざしてやる。
ああ、人の耳というものは、
忠告には聞こえず、お世辞だけは聞こえるのか。
