老人七十年の歳月を、わしはよう覚えとります。
そのあいだには、恐ろしい時も、
奇怪な出来事も見て参りましたが、ゆうべの凄まじさときたら、
これまで知ったことなど、みな児戯にしてしまいました。
ロスああ、ご老人、
見えるだろう、天も人間の仕業に胸を痛めて、
この血なまぐさい舞台を睨みつけている。時計の上では昼だというのに、
暗い夜が、空を旅する灯りの首を絞めているのだ。
夜の力が勝ったのか、それとも昼が恥じて隠れたのか——
命の光が口づけしてよいはずの大地の顔を、
闇が墓のように覆い包んでいるのは。
老人自然に背いておりますよ、
やってのけられた、あの仕業と同じにな。この前の火曜日には、
空の一番高いところを、誇らしげに舞っていた鷹が、
鼠取りの梟に襲われて、殺されましたわい。
ロスそれに、ダンカン王の馬たちが——奇怪きわまるが、確かな話だ——
美しく、駿足で、馬の中の選り抜きだったのが、
にわかに野生に返り、馬房を打ち破って飛び出し、
従うことを拒んで暴れ回った、まるで人間を相手に、
戦でも始めるかのようにな。
老人共食いをしたという話ですぞ。
ロスそのとおりだ。この目で見て、
わが目を疑ったよ。——マクダフどのが来られた。
ロス世の中は、その後、どんな具合です。
マクダフなに、見てのとおりだ。
ロス血なまぐさいどころではない、あの仕業をやったのが誰か、知れましたか。
マクダフマクベスが斬り捨てた、あの者たちだ。
ロスああ、なんという日だ。
あの者たちに、何の得があったというのです。
マクダフ金で雇われたのだ。
マルコムとドナルベイン、王のふたりの息子が、
こっそり抜け出して逃げた。それで、あの仕業の疑いが、
ふたりの上にかかっている。
ロスこれも自然に背く話だ。
浪費屋の野心め、おのれの命を養う元手まで、
貪り食うのか。すると、王位は、
まずマクベスに落ちるのでしょうな。
マクダフすでに指名は済んで、戴冠のために、
スクーンへ向かわれた。
ロスダンカン王の亡骸は。
マクダフコルムキルへ運ばれた、
代々の王たちの聖なる納骨所、
その骨を守る聖地へな。
ロススクーンへ行かれるか。
マクダフいや、私はファイフへ帰る。
ロスでは、私はスクーンへ。
マクダフあちらで万事めでたく運ぶのを見届けられるといい。では、ご機嫌よう。
古い衣のほうが、新しい衣より着心地がよかった、とならねばよいが。
ロスご老人、達者でな。
老人神の祝福が、あなた様に。そして、
悪を善に、敵を友に変えようとなさる方々の上にも。
