リア吹け、風よ、おまえの頬が裂けるまで。荒れ狂え、吹きすさべ。
滝なす雨よ、大竜巻よ、噴き上げろ、
尖塔を水びたしにし、天辺の風見鶏を溺れさせるまで。
硫黄の匂いのする、思考のように速い火よ、
樫の木を引き裂く雷の先駆けよ、
この白い頭を焼き焦がせ。そして、万物を揺るがす雷よ、
この分厚く丸い世界を、打ちのめして平らにしろ。
自然の鋳型を叩き割り、種子という種子をぶちまけてしまえ、
恩知らずの人間を作り出す種子を。
道化ねえおじちゃん、屋根のある家でおべっかの聖水を浴びるほうが、外でこの雨水を浴びるよりはましだよ。ねえおじちゃん、戻って、娘たちに祝福を願おうよ——今夜は、賢い者にも阿呆にも、情け容赦のない夜だ。
リア腹いっぱい轟くがいい。吐け、火よ。噴け、雨よ。
雨も、風も、雷も、火も、わが娘ではない——
おまえたち自然の力を、薄情者呼ばわりはせぬ。
おまえたちに王国をやったことも、わが子と呼んだこともない。
おまえたちには忠義の義理などないのだ——ならば存分に、
その恐ろしい気晴らしを降らせるがいい。ここに立っているのは、おまえたちの奴隷、
哀れな、病んだ、弱った、蔑まれた老人だ——
それでも言わせてもらうぞ、おまえたちは追従の手先だ、
性悪のふたりの娘と手を組んで、
天から生まれたその軍勢を、これほど老い、これほど白い
この頭ひとつに差し向けるとは。おお、おお、汚いぞ。
道化頭を入れる家を持ってる奴は、いい頭巾を持ってるってことさ。
宿を世話する男はね、
頭もあそこも虱だらけ——
そうやって乞食は嫁を何人ももらう。
足の指にくれてやる男は、
魚の目が痛いと泣きわめき、
眠りが覚めて夜明かしだ。
口をとがらせてみせない女は、いたためしがないんだから。
リアいや、わしはあらゆる忍耐の手本になってみせる。
何も言うまい。
ケントそこにいるのは誰だ。
道化これはこれは、王冠とあそこの袋のお揃いだよ。つまり、賢いお方と阿呆がひとりずつ。
ケントああ、陛下、こんなところにおいででしたか。夜を好むものでさえ、
このような夜は好みませぬ。怒れる空は、
闇を住処とする獣どもをも脅えさせ、
洞穴に閉じこもらせております。物心ついてこのかた、
このような火の帳、このような凄まじい雷鳴、
このように唸り狂う風と雨の呻きは、
ついぞ聞いた覚えがありませぬ。人の身には、この苦しみも
この恐ろしさも、担いきれるものではない。
リア偉大な神々よ、
われらの頭上でこの恐ろしい騒ぎを続けるものたちよ、
今こそ敵を見つけ出すがいい。震えろ、この惨めな者、
胸の内に、まだ明るみに出ぬ罪を抱え、
正義の鞭を逃れてきた者よ。隠れろ、血まみれの手よ。
偽誓者よ、そして貞淑の面を被った
近親相姦の徒よ。粉々になるまで震えるがいい、悪党、
人目を忍ぶ都合のよい見せかけの下で、
人の命を狙ってきた者よ。固く閉じ込めた罪の数々よ、
覆い隠すその器を引き裂いて、この恐ろしい
召喚の使者たちに慈悲を乞え。わしは、
おのれが犯した罪よりも、犯された罪のほうが重い人間だ。
ケントああ、御頭に何もお召しにならず。
陛下、すぐそこに掘っ立て小屋がございます。
この嵐をしのぐ情けくらいは貸してくれましょう——
そこでお休みください。その間に私は、あの薄情な館へ——
土台の石よりもなお固い館へ——
つい先ほども、陛下の御ことを尋ねただけで、
門前払いを食わせた館へ——立ち返り、力ずくでも、
あの出し渋りの礼節を絞り出して参ります。
リア気がおかしくなり始めた。
おいで、坊や。どうした、坊や、寒いか。
わしも寒い。その藁とやらはどこだ、おまえ。
必要というものの技は不思議なものだな、
卑しいものを宝に変えてしまう。さあ、おまえの掘っ立て小屋へ。
哀れな阿呆の悪戯者よ、わしの心にはまだひとつ、
おまえを気の毒に思う場所が残っている。
道化(歌う。)ちっぽけな知恵しか持たぬ者は——
ヘイ、ホー、風と雨——
身の丈に合った運で我慢おし、
だって雨は毎日降るんだもの。
リアそのとおりだ、坊や。さあ、その小屋へ連れて行ってくれ。
道化今夜は上等な夜だよ、浮かれ女の頭を冷やすにはね。
行く前に、ひとつ予言をしていこう——
ビール屋が麦芽を水で薄めたとき。
お貴族様が仕立て屋の先生になって、
異端者は焼かれず、女たらしだけが火あぶりのとき。
裁判の判決がどれも正しく、
借金持ちの従者も、貧乏騎士もいなくなったとき。
悪口が舌の上に住まなくなり、
巾着切りが人ごみに出てこなくなったとき。
金貸しが野っ原で堂々と金を数え、
女衒と売女が教会を建てるとき——
そのときこそアルビオンの王国は、
上を下への大混乱。
その時代まで生きた者は見るだろう、
歩くときには足を使うようになるってことを。
