第一の貴族閣下は負けが込んでも誰よりご辛抱強い。賽の目で一を出しても、あんなに冷静な方はおりません。
クロートン負ければ誰だって冷や汗をかく。
第一の貴族しかし誰しも閣下のように気高くご辛抱強くはありません。閣下が最も熱く、激しくなられるのはお勝ちの時ですから。
クロートン勝てば誰だって気が大きくなる。あの愚かなイモージェンさえ手に入れば、金はいくらでも手に入るんだ。もう夜明けだな。
第一の貴族夜は明けております、閣下。
クロートン早く音楽が来ればいいんだが。朝のうちは音楽を聴かせてやれと言われてな、それが胸に染みるのだそうだ。
クロートンさあ、調弦だ。お前たちの指使いであいつの胸に染み入るならよし、口でも試してみるさ。どれも駄目なら放っておくまでだ、だが俺は絶対に諦めないぞ。まずは極上の趣向を凝らした曲を一つ、次は見事な名文句をつけたこの上なく甘い調べだ。それからあいつに考えさせよう。
楽師たち聴け、聴け、ひばりが天の門で歌い、
輝く太陽が昇り始める。
盃のような花に溜まった泉で、
引く馬に水を飲ませようと。
そしてまどろむ金盞花の蕾が、
その黄金の目を開き始める。
あらゆる愛らしいものと共に、
甘美な我が姫よ、目覚めたまえ。
目覚めたまえ、目覚めたまえ。
クロートンよし、下がっていいぞ。これで胸に染み入るなら、お前たちの音楽の腕を評価してやろう。もし駄目なら、あいつの耳に欠陥があるのだ。馬の尻尾や子牛の腸で作った弦でも、去勢された男の声でも、絶対に治せない欠陥にな。
第二の貴族王のお出ましです。
クロートン夜更かしをしておいてよかった。おかげでこんなに早起きできたのだから。これほどの労を取ったと知れば、父親として喜ばずにはいられまい。
クロートン陛下、そして慈悲深き母上、おはようございます。
シンベリンあのかたくなな娘の扉の前にいたのか?
まだ外に出てこないか?
クロートン音楽で攻め立ててみたのですが、いっこうに気にも留めません。
シンベリンあの寵臣が追放されてまだ日が浅いのだ、
娘はまだあいつを忘れておらん。もう少し時間が経てば、
あいつの記憶の刻印もすり減って消えよう、
そうすれば娘はお前のものだ。
王妃王に深く感謝するのですよ、
娘の気を引く機会があれば、陛下は
決して逃さずにいてくださるのですから。あなたは
正攻法で口説くように努め、時機を
うまく味方につけなさい。拒まれたら
ますます尽くして見せるのです。娘に捧げる
あらゆる義務に、心から触発されているかのように
振る舞うのです。娘の命令にはすべて従うこと、
ただ、あなたを遠ざけようとする命令の時だけは別、
その時だけは、何も聞こえないふりをするのです。
クロートン聞こえないふり! そんなことはしませんよ。
使者恐れながら申し上げます、ローマからの使節が参りました、
一人はカイアス・ルーシアスです。
シンベリン立派な男だ、
今回は腹に据えかねて来ているようだが。
それも彼のせいではない。差し向けた者の
威信に相応しいもてなしで迎えねばならん。
また彼自身にも、かつて我々に尽くしてくれた善意に対し、
敬意を表さねばな。愛する息子よ、
意中の姫に朝の挨拶を済ませたら、
王妃と私のところへ来なさい。このローマ人への
応対で、お前に頼みたいことがある。さあ、王妃よ。
クロートン起きていれば、言葉を交わそう。まだなら、
寝かせたまま夢を見させておくさ。
クロートン失礼するぞ!
侍女たちが周りにいるはずだ。どうだ、
その一人の手に握らせてやるか? 面会を買うには
金がものを言う。よくあることだ。そうだ、金の力なら
貞潔なるダイアナの森番にさえ背信させ、獲物の鹿を
密猟者の待ち伏せる場所へ明け渡させる。金の力なら
真っ当な男を殺し、泥棒を救うこともできる。
いや、時には泥棒も真っ当な男も両方とも縛り首にできる。金に
できぬこと、覆せぬことなどあるものか? あいつの
侍女の一人を俺の弁護士に仕立てよう。
この訴訟は、俺自身まだよく分かっていないからな。
クロートン失礼する。
侍女戸を叩くのはどなたですか?
クロートン紳士だ。
侍女それだけですか?
クロートンああ、そして立派なご婦人の息子だ。
侍女それでしたら
あなた様と同じくらいお高い仕立屋を使う方々よりも、
正当なご自慢の種でございますね。閣下、どのようなご用件でしょうか?
クロートンお前の姫君のご尊顔を拝したい。お支度はできているか?
侍女はい、
お部屋に籠もられるお支度が。
クロートンこれはお前にやる金だ。
お前の良い報告を売ってくれ。
侍女なんですって! 私の良い評判をですって? それともあなた様のことを、
私が良いと思うように報告しろと?——お姫様がいらっしゃいました!
クロートンおはよう、世にも美しい人よ。妹よ、その甘美な手を。
イモージェンおはようございます。ご苦労なさっても
厄介事を買い込むだけです。私がお返しできる感謝は、
持ち合わせる感謝の念が乏しくて
お分けすることがほとんどできない、とお伝えすることだけです。
クロートンそれでも、私はお前を愛していると誓うぞ。
イモージェン言葉でそうおっしゃるだけでも、私にとっては深く重いのです。
それでも誓うとおっしゃるなら、その報いもやはり、
私がそれを意に介さない、ということになります。
クロートンそれは答えになっていない。
イモージェン黙っているのを承諾したと言われないように、
口を開いただけです。お願いします、もう構わないでください。誓って、
あなた様がどんなにご親切にしてくださっても、
同じだけの無礼でお返しすることになりますから。あなた様のように知恵のある方は、
教えられたなら、身を引くことを学ぶべきです。
クロートン狂気にとり憑かれたお前を放っておくなど、私の罪になる。
私は立ち去らない。
イモージェン愚か者は狂人ではありません。
クロートン私のことを愚か者と言うのか?
イモージェン私が狂人なら、そう言います。
もしあなたが辛抱してくださるなら、私ももう狂人にはなりません、
それで私たちは二人とも治るのです。大変申し訳ありませんが、
あなたがそれほどしつこく言葉を重ねるため、
私は淑女の作法を忘れてしまいました。今、きっぱりと学んでください、
私自身の心を知る私が、ここで宣言します、
その真実にかけて、私はあなた様を何とも思っていません。
そして、あまりにも慈愛に欠けているあまり——
自分自身を責めることになりますが——あなたを憎んでさえいます。それを口にして自慢するより、
あなたご自身に感じ取っていただきたかったのですが。
クロートンお前は父親に従うという
服従の義務に背く罪を犯している。そもそも、
あの卑しい下郎との間に交わしたというお前の結婚の誓いだが、
あんな施しで育ち、冷や飯や、
宮廷の残り物で養われたような奴との誓いなど、誓いでも何でもない。
身分の低い者同士なら許されるとしても——
いや、あいつより身分の低い者などいるか?——心を一つに結び合わせ、
そんな連中にすがるものなど何もないのだ、
餓鬼と乞食の運命以外は、勝手に結んだ絆のせいでな。
だがお前は、王冠の後継者という立場ゆえに、
そのような自由は縛られているのだ。決して、
その尊い名誉を卑しい奴隷で汚してはならない。
奴隷の服を着た下僕、従者の布を纏った、
食料係以下の、取るに足らぬ奴め。
イモージェン神をも恐れぬ無礼者。
たとえお前がジュピターの息子であったとしても、そして
それ以外は今のままの男であるなら、あの方の馬丁となるにも
お前は卑しすぎる。お前の美徳に比べて、
あの方の王国の下働きの死刑執行人という肩書きを
与えられただけでも、誰もが羨むほど
十分に名誉なことであり、それほど厚遇されることで
人から憎まれることだろう。
クロートン南の霧に腐らされちまえ!
イモージェンあの方にとって、お前の口から名前を呼ばれること以上の
不幸はあり得ない。あの方の体を包んだことのある、
一番みすぼらしい衣服でさえ、私の目から見れば、
お前の頭の毛を一本残らずお前のような人間に変えたものより、
ずっと愛おしいのです。どうしたの、ピザーニオ!
クロートン「衣服でさえ」だと! 悪魔め——
イモージェン侍女のドロシーのところへすぐに行って——
クロートン「衣服でさえ」だと!
イモージェン馬鹿な悪霊に取り憑かれてしまった。
怯えるというより、怒りでいっぱいよ。行って侍女に、
うっかり腕から外してしまった宝石を
探すよう言ってちょうだい。あなたの主人のものよ。ああ、
ヨーロッパのどの王の全財産と引き換えにしても、
あれを失いたくはないのに。今朝は確かに
見たと思うの。間違いなく、昨日の夜には
腕にはめていて、口づけもしたわ。
私があの方以外のものに口づけしたと、あの方に
告げ口しに行ったのではないといいけれど。
ピザーニオ決して失くなったりはいたしません。
イモージェンそう願うわ。行って探してちょうだい。
クロートンお前は私を侮辱した。
「一番みすぼらしい衣服でさえ」だと!
イモージェンええ、そう言いました。
訴訟になさるなら、証人を呼んでくださいな。
クロートンお前の父親に知らせてやる。
イモージェンあなたの母親にもね。
あの方は私の立派な後見人ですから、私のことを
最悪にしか受け取らないでしょう。では、失礼します、
最悪の不満のまま、お取り残しして。
クロートン復讐してやる。
「一番みすぼらしい衣服でさえ」だと! 覚えておけ。
