フランス王さらばだ、若き諸卿。この戦の心得を
手放すな。諸卿も、さらばだ。
今の忠告は分け合え。二人とも会得すれば、すべて
贈り物は受け取るそばから広がって、
二人に余るほどになる。
第一貴族陛下、私どもの望みは、
歴戦の兵となって帰り、
ご壮健な陛下にお目にかかることです。
フランス王いや、いや、それはかなうまい。それでもこの心は、
自らその病を抱えているとは認めようとせぬ、
この命を包囲する病を。さらばだ、若き諸卿。
余が生きようと死のうと、立派な
フランス男の息子であれ。北イタリアに——
かつての帝国の没落しか継がぬ者どもは除いて——
見せつけよ、おまえたちが来たのは
名誉に言い寄るためでなく、娶るためだと。最も勇敢な
探求者さえひるむとき、求めるものを見つけ出せ、
名声がおまえたちの名を高らかに叫ぶように。では、さらばだ。
第二貴族陛下のお言いつけどおり、健やかさが陛下にお仕えしますように!
フランス王イタリアの娘たちには、気をつけろ。
あちらにせがまれると、われらフランス男は嫌と言う言葉を
知らぬそうだ。兵役に就く前に、
捕虜にならぬようにな。
二人そのご忠告、胸に刻みます。
フランス王さらばだ。こちらへ来てくれ。
第一貴族ああ、いとしい殿、あなたを残して行くとは!
パローレス若殿のせいではない、まだ火花だからな。
第二貴族ああ、胸の躍る戦だ!
パローレスまことに壮観だ。私はあの戦をこの目で見た。
バートラム私はここにいろとのご命令だ、さんざん聞かされるのは
「若すぎる」「来年だ」「まだ早い」。
パローレス腹が決まっているなら、坊や、堂々と抜け出せ。
バートラムここに残れば、女の裾に繋がれた先頭馬、
磨いた石床で靴をきゅっきゅっと鳴らすだけ、
名誉はすっかり売り切れ、誰も剣を帯びなくなる、
舞踏用の一本を除いては! 天にかけて、抜け出してやる。
第一貴族その盗みには名誉がある。
パローレスやってしまえ、伯爵。
第二貴族私も共犯だ。では、さらば。
バートラムもう君たちと一つ身だ、別れるのは手足を引き裂かれる拷問だ。
第一貴族さらば、隊長。
第二貴族麗しのムッシュー・パローレス!
パローレス気高き英雄諸君、私の剣と君らの剣は同族だ。見事な火花、見事な輝き、ひと言、鋼の心を持つ名剣諸君。スピニー連隊にスプリオ隊長という男がいる、左の頬には戦の紋章たる傷痕がある。この剣がまさにそこへ塹壕を掘ったのだ。やつに、私は生きていると言え。そして私についてやつがどう語るか、よく見届けてくれ。
第一貴族承知しました、気高き隊長。
パローレス軍神マルスよ、初陣の若者たちを溺愛したまえ! さて、君はどうする?
バートラム待て。王がおいでだ。
パローレス(バートラムに。)あの気高い諸君には、もっとたっぷり儀礼を尽くせ。君の別れは、冷たすぎる挨拶の枠内に縮こまっていた。もっと思いを見せるのだ。連中は時代の帽子をかぶる流行の先端、そこには本物の歩き方が勢揃いし、食べるも、話すも、動くも、今いちばんもてはやされる星の影響下にある。たとえ悪魔が踊りの先頭に立とうと、ああいう連中にはついて行くものだ。追いかけて、もっと引き延ばした別れをしてこい。
バートラムそうしよう。
パローレス立派な若者たちだ。筋骨たくましい剣士になるだろう。
ラフュー(跪いて。)お許しを、陛下、私にも、私の知らせにも。
フランス王立ち上がるなら褒美を取らせよう。
ラフューではここに、立ち上がった男がおります、自分の赦しを持参して。
陛下が私にお慈悲を乞うため跪いてくださればよかった、
そして私のひと言で、こうしてお立ちになれれば。
フランス王そうできればよかった。ならばおまえの頭をかち割って、
その件で慈悲を乞うてやったものを。
ラフューいやはや、横から一本取られました。ですが陛下、話はこうです。
ご病気を治してみるお気はおありですか?
フランス王ない。
ラフューおや、王家の狐は葡萄を召し上がらない?
いえ、私の気高い葡萄ならお望みでしょう、もしも
王家の狐の手が届くなら。私はある薬を見ました、
石に命を吹き込み、
岩を生き返らせ、陽気な炎と動きでもって
カナリー舞踏を踊らせる薬を。その指が触れるだけで、
ピピン王を墓から起こす、いや、
大帝シャルルマーニュの手にペンを握らせ、
彼女へ恋文を一筆書かせるほどの力がある。
フランス王その「彼女」とは誰だ?
ラフューむろん、女医殿です。陛下、ある娘が到着しております、
お会いになるなら。さて、信義と名誉にかけて、
この軽口に乗せた私の思いを
真面目にお伝えしてよいなら、私はある娘と
話しました。その性、年齢、称する技、
知恵と揺るがぬ心ゆえ、私の弱さのせいにするのも憚られるほど
驚かされた。お会いになりますか?
それが娘の願いです、用向きもお聞きください。
済んだら、存分に私をお笑いなさい。
フランス王では、善良なラフュー、
その驚異の娘を連れてこい。余もおまえとともに
驚きを使い果たすか、おまえの驚きを取り除こう、
どうしておまえが驚いたのかと驚くことでな。
ラフューいや、ぴたりとお気に召しましょう、
それに一日じゅうはかかりません。
フランス王こうしてやつはいつも、格別な無を大仰に前口上する。
ラフューさあ、こちらへ。
フランス王この素早さには、まことに翼がある。
ラフューさあ、こちらへ。
こちらが国王陛下だ。思うところを申し上げなさい。
見たところ謀反人だな。だが陛下は、そんな謀反人など
めったに恐れぬ。私はクレシダの叔父パンダロス、
二人きりにしても平気な男だ。では、ごきげんよう。
フランス王さて、美しい娘、その用向きは余に関わるのか?
ヘレナはい、陛下。
ジェラール・ド・ナルボンは私の父でした。
父が生業とした医術では、名の知れた者でした。
フランス王知っていた。
ヘレナならば、父を褒めそやすのは控えましょう。
ご存じなら、それで十分です。死の床で
父は多くの処方を私に授けました。なかでも一つ、
医業が生んだ最愛の子、
長年の経験がこよなく慈しんだ一つを、
第三の目として蓄えよ、と父は申しました、
私の二つの目より頼りになり、いっそう尊い目として。仰せどおりにしました。
そして至尊なる陛下が、悪性の病に
冒されたと聞きました、その病にこそ、
父の贈り物の誉れある力が最もよく及びます。
そこで薬と、私の施術をお差し出しするため参りました、
身に負うかぎりの謙虚さをもって。
フランス王礼を言う、娘よ。
だが治るという話を、そうたやすく信じるわけにはいかぬ、
最も博学な医師たちが余を見放し、
集まった医学院の一同が、
どれほど技を尽くそうと、もはや治療不能となった自然の身を
買い戻すことはできぬ、と結論したのだ。つまり余は、
判断をそこまで汚し、希望をそこまで腐らせてはならぬ、
治療の域を越えた病を
藪医者に身売りさせるほど。また、
国王たるわが身と名誉を切り離してまで、
理にかなわぬ救いを重んじるわけにはいかぬ、救いは理を越えたと見切った今。
ヘレナでは、務めを果たしたことを、骨折りへの報いといたします。
これ以上、私の技を陛下に押しつけはいたしません。
ただ陛下のお心から、つつましい思いやりを
一つ賜り、それを抱いて帰らせてください。
フランス王恩を知る者と呼ばれるには、それより少なくはできぬ。
余を救おうとしてくれた。その礼を言おう、
死に瀕した者が、生きよと願う者に言うほどの礼を。
だが余が隅々まで知ることを、おまえは何一つ知らぬ、
余は危険のすべてを知り、おまえには技がない。
ヘレナ私にできることを試しても、害にはなりません、
陛下は治療なしに一切を賭けておいでなのですから。
最も偉大な御業を成し遂げるお方は、
しばしば最も弱い使い手によって、それをなさいます。
聖書では幼子が裁きを示しました、
裁く者が幼子であったとき。大河は
ささやかな泉から流れ出し、大海も干上がりました、
最も偉い者たちが奇跡を否んだときに。
期待はしばしば外れます、そして最もよく外れるのは、
最も大きな約束をするところ。けれど、しばしば的を射るのは、
希望が最も冷え、絶望こそふさわしく見えるところです。
フランス王これ以上は聞けぬ。さらばだ、心優しい娘。
用いられぬ骨折りには、おまえ自身が報いるほかない。
受け取られぬ申し出は、礼の言葉を褒美に刈り取るのだ。
ヘレナ霊感を受けた功徳が、こうして一息の言葉に阻まれるのですね。
すべてをご存じのお方は、目に映る姿で推量を測る
私どもとは違います。
ですが何より、思い上がりとなるのは、
天の助けを、人の行いとしか見ないときです。
陛下、どうか私の試みにお許しを。
私でなく、天をお試しください。
私は、狙う的をはるかに越えて
自分を吹聴する偽者ではありません。
ただ、知っていると思い、思うところを確かに知っています、
私の技は力の及ばぬものではなく、陛下も治療の及ばぬお方ではないと。
フランス王それほど自信があるのか? どれほどの時のうちに
余を治せると望む?
ヘレナ最も偉大な恩寵が、恵みを貸してくだされば、
太陽の馬が二度、その燃える松明持ちを
日ごとの輪へ運び入れる前に、
湿った宵の明星が、暗い西の靄のなかで二度、
眠たげな灯を消す前に。
あるいは水先案内人の砂時計が二十四度、
盗人のような時の刻が過ぎるさまを告げる前に、
病めるものは陛下の健やかな部分から逃げ去り、
健康は自由に生き、病は惜しみなく死ぬでしょう。
フランス王その確信と自信を担保に、
おまえは何を賭ける?
ヘレナ厚顔とのそしり、
淫売の大胆さ、憎らしい戯れ歌によって
世間に晒され、貶められる恥。乙女としての名を
別の名に焼き潰されること。いや、それより悪いものがあるなら——
最もむごい拷問を長く受け、この命を終わらせましょう。
フランス王おまえの中で、祝福された霊が語っているように思える、
か弱い楽器の内から、力強い音を響かせて。
常識なら不可能として殺すものを、
別の道では、その常識が救い上げる。
おまえの命は尊い。なぜなら命が値踏みできる、
生きるに値するものすべてが、おまえの中に値を持つ、
若さ、美しさ、知恵、勇気、そのすべて、
幸福と青春の盛りが幸せと呼べるものすべてが。
それを危険に晒すというからには、示しているのだ、
限りない腕前か、途方もない自暴自棄かを。
優しき施術者よ、おまえの薬を試そう、
余が死ねば、おまえ自身の死を処方する薬を。
ヘレナ時限を破り、あるいは申し上げたことの
どの一つにでも怯んだなら、憐れみなく死なせてください、
当然の報いです。お救いできなければ、死が私の代価。
ですが、お救いできれば、何をお約束くださいます?
フランス王望みを申せ。
ヘレナきっと約束どおりにしてくださいますか?
フランス王ああ、王笏と、天国への望みにかけて。
ヘレナでは陛下の王たる御手で、私が夫にと命じる
お方を、陛下の力で私にお与えください。
フランス王家の血筋から選び取り、
卑しく低い私の名を、
陛下の王統の枝や似姿と結び広めるなど、
そのような傲慢は私には無縁です。
ただ陛下の臣下のうち、私が求めてもよく、
陛下がお与えになれると知る方を一人。
フランス王この手を取れ。先ほどの条件が守られれば、
おまえの望みは、余が実行して叶えよう。
だから時は自分で選べ、余は
覚悟を決めた患者として、すべておまえを頼みとする。
さらに尋ねるべきだし、尋ねねばならぬ、
もっと知ったところで、信頼が増すわけではないが、
どこから来たか、誰が付き添っているかを。だがよい、
問わずとも歓迎する、疑いなく祝福された娘として。
誰か、余を支えてくれ! おまえの行いが
言葉の高さに届くなら、余の行いもおまえの功に届かせよう。
