ファビアンなあ、わたしを好いていてくれるなら、あの男の手紙を見せてくれ。
道化ファビアンどの、それなら、こちらの願いもひとつ聞いてくださいな。
ファビアン何なりと。
道化この手紙を見たいと望まないでいただきたい。
ファビアンそれはあれだ、犬をくれてやって、お返しに、その犬を返してくれとねだる話だな。
公爵おまえたちはオリヴィア姫の家の者か?
道化さようで。あの方の飾り紐の端くれでございます。
公爵おまえの顔はよく知っているぞ。息災か、良い阿呆どの?
道化正直なところ、敵のおかげで息災、友のおかげで難儀しております。
公爵あべこべであろう。友のおかげで息災、だ。
道化いいえ、旦那様、難儀のもとで。
公爵どうしてそうなる?
道化それはですね、旦那様、友はわたしを誉めそやして、わたしを驢馬に仕立てます。ところが敵は、おまえは驢馬だと、ずばり言ってくれます。つまり敵のおかげで、旦那様、わたしは自分を知る勉強が進み、友のおかげで、丸め込まれるという次第。で、結論というものが口づけと同じ仕組みなら、四つの「否」は二つの「応」になりますわけで、そうなると、友のおかげで難儀、敵のおかげで息災、と相成ります。
公爵いや、これは見事だ。
道化いえいえ、誓ってそんなことは——もっとも、あなた様がわたしの友のおひとりにおなりくださるのは、結構なことでございますが。
公爵わたしのせいで難儀はさせんぞ。ほら、金貨だ。
道化二枚舌にさえならなければ、旦那様、もう一枚くださってもよろしいのですがねえ。
公爵おお、悪い忠告をしてくれる。
道化そのお上品は今回だけポケットにお納めになって、血と肉には、忠告のままに従わせておやりなさいませ。
公爵よかろう、二枚舌の罪人になってやろう。ほら、もう一枚だ。
道化プリモ、セクンド、テルツィオ——一、二、三と参るのが良い勝負。三度目が全部の払いを持つ、と古い諺にもございます。三拍子は、旦那様、踊りに良い拍子。聖ベネットの鐘の音も、よい思い出させ役でございましょう——一つ、二つ、三つ、とね。
公爵その手この手でも、この回はもう金は釣り出せんぞ。だが、おまえの女主人に、わたしが話しに来たと伝えて、こちらへお連れしてくれれば、わたしの気前もまた目を覚ますかもしれん。
道化それでは旦那様、そのお気前に子守唄を、わたしが戻りますまで。行って参ります。ですが、わたしの頂きたがりを、強欲の罪とはお考えになりませんように。仰せのとおり、お気前にはひと眠りしていただいて、すぐに起こしに参りますから。
ヴァイオラ公爵様、あそこに参りますのが、わたしを助けてくださった方です。
公爵あの男の顔は、よく覚えている。
もっとも、この前見たときは、戦の煙にまみれて、
鍛冶の神ヴァルカンのように真っ黒だったがな。
あの男が船長を務めていたのは、喫水の浅い、
図体も取るに足らん、おもちゃのような船だった。
それであの男は、わが艦隊の誇る旗艦に、
手ひどい痛手の白兵戦を挑みおって、
損害を数える負け方の舌も、妬みそのものまでもが、
あの男の名誉と誉れを叫んだものだ。——何の騒ぎだ?
役人一オーシーノ公爵様、この男があのアントーニオ、
カンディア帰りのフェニックス号を、積み荷ごと奪った男でございます。
また、タイガー号に切り込んだのもこの男で、
そのとき公爵様の若い甥御のタイタス様が、脚を失われました。
この町の往来で、恥も身の危険も顧みず、
私闘のさなかにいたのを召し捕りました。
ヴァイオラこの方はわたしに親切にしてくださり、わたしの側に立って剣を抜いてくださいました。
ですが最後には、わけの分からないことをおっしゃいました。
乱心でないとしたら、何だったのか分かりません。
公爵名うての海賊め! 塩水暮らしの盗人め!
どんな阿呆な命知らずに駆られて、おまえは、
あれほど血なまぐさく、高くついた喧嘩で敵に回した相手の、
慈悲の手の中へ飛び込んできたのだ?
アントーニオオーシーノ公爵、
その頂いた名前は、振り払わせていただきましょう。
アントーニオは、盗人や海賊であったことは一度もない。
もっとも、十分な根拠あってのオーシーノの敵であることは、
認めますがね。わたしをここへ引き寄せたのは、魔法です。
そちらの、あなたの脇にいる恩知らずきわまる若造を、
荒海の怒り狂う泡立つ口から、
わたしは救い上げました。望みも絶えた難破人でした。
命を与えてやり、それに加えて、
わたしの愛を——出し惜しみも、区切りもない愛を——
そっくりあの男に捧げました。あの男のために、
ただただ愛ゆえに、わたしはこの身をさらしたのです、
この敵地の町の危険の中に。
取り囲まれたあの男を守るために、剣を抜きました。
そこでわたしが召し捕られると、あの男の不実な悪知恵は、
危険をわたしと分け合うのが嫌さに、
面と向かって知らぬ顔を決め込むことを教えおった。
瞬きひとつの間に、二十年も会わなかった他人になりすまし、
わたしの財布さえ知らぬと言った——
ほんの半時間前に、使ってくれと
渡しておいた財布をですぞ。
ヴァイオラどうしてそんなことが?
公爵その男がこの町に着いたのはいつだ?
アントーニオ今日でございます。しかもその前の三か月は、
切れ目もなく、一分の空きもなく、
昼も夜も、われらは一緒に過ごしました。
公爵伯爵令嬢のお出ましだ。天が地上を歩いておられる。——
だがおまえ、おまえの言うことは狂気の沙汰だぞ。
この三か月、この若者はわたしに仕えてきたのだ。
だがその話は後だ。あの男を脇へ。
オリヴィア公爵様のお望みは何でしょう——叶えられないもののほかで、
このオリヴィアがお役に立てますことは?——
シザーリオ、あなたは約束を守ってくださいませんのね。
ヴァイオラ姫君!
公爵麗しのオリヴィア——
オリヴィア何とおっしゃるの、シザーリオ?——公爵様、しばらく——
ヴァイオラ主君がお話しになります。わたしの務めは、口を閉じることです。
オリヴィア昔ながらの節回しの続きでございましたら、公爵様、
わたしの耳には、音楽のあとの遠吠えと同じくらい、
脂っこくて胸にもたれますわ。
公爵相も変わらず、それほどに残酷か?
オリヴィア相も変わらず、それだけ心変わりがないのです、公爵様。
公爵何にだ、その意固地にか? 無情な姫よ、
あなたの恩知らずで縁起でもない祭壇に、
わたしの魂は、信心が捧げたためしのないほど
忠実な捧げものを、息も絶え絶えに供えてきたのだ! わたしはどうすればよい?
オリヴィア何なりと、公爵様のお気の召すままに、お似合いのことをなさいませ。
公爵やってやれない道理があるか、その心さえあれば——
死の間際のエジプトの盗賊さながら、
愛するものをこの手で殺すことが?——野蛮な嫉妬とはいえ、
時に気高い味わいもするものだ。だが、これだけは聞いてもらう。
あなたがわたしの真心を、一顧だにせず捨て去った以上、
そして、あなたの寵愛のわたしの正当な席から、
わたしをねじり出した道具が何者か、おおよそ見当がついている以上、
あなたは大理石の胸の暴君のまま、生きているがいい。
だが、あなたのこのお気に入り——あなたが愛しているのは知っている、
そして、天に誓って、わたし自身も心底可愛く思っているこの小姓——
こやつだけは、あの残酷な目の中から引きむしってやる、
主人のわたしを尻目に、その目の中で王冠を頂いて座っているこやつをな。
来い、小僧、一緒に来い。わたしの心は悪事のほうへ熟れきった。
可愛くてならんこの仔羊を、生贄に捧げてやる、
鳩の姿に巣くう、鴉の心臓への面当てにな。
ヴァイオラそしてわたしは、喜んで、いそいそと、進んで、
あなた様の心の安らぎのためなら、千回の死でも死にましょう。
オリヴィアどこへ行くの、シザーリオ?
ヴァイオラ愛するお方の後を追って参ります。
この両の目より、わたしの命より愛しく、
この先わたしが妻を愛しうる、そのすべての「愛しさ」よりも、なお愛しいお方の後を。
これが偽りでしたら、天の証人がた、
愛を汚した罰として、わたしの命をお取りください!
オリヴィアああ、なんという、見捨てられて! なんという騙され方!
ヴァイオラ誰があなたを騙しました? 誰がひどい仕打ちを?
オリヴィア自分を忘れたの? それほど時が経ったかしら?
神父様をお呼びして。
公爵来い、行くぞ!
オリヴィアどちらへです、公爵様?——シザーリオ、夫よ、お待ち。
公爵夫だと!
オリヴィアええ、夫です。当人に否とは言わせません。
公爵この方の夫か、小僧!
ヴァイオラいいえ、公爵様、違います。
オリヴィアああ、それはあなたの怯えの卑しさ、
そのせいで、自分の身分を絞め殺そうというのね。
恐れないで、シザーリオ。あなたの幸運をつかみ取りなさい。
あなたが知っているとおりのあなたにおなりなさい。そうすれば、
あなたの恐れているあのお方と、同じ高さになれるのです。
オリヴィアおお、ようこそ、神父様!
神父様、その聖職の徳にかけてお願いします、
ここで明かしてくださいまし——つい先ほどまでは、
機の熟すまで隠しておくつもりでしたが、事情が変わり、
早くも公にせねばならなくなりました——あなたのご存じの、
この若い方とわたしの間で、先ほど交わされたことを。
司祭永遠の愛の絆の契りでございます。
お互いの手を取り交わして確かめられ、
唇の聖なる口づけによって証を立てられ、
指輪の交換によって固められました。
そしてこの契りの式のすべては、
わたしの職をもって封印し、わたしが立会人となりました。
あれから、わたしの時計の教えるところでは、わたしは墓に向かって
二時間分を旅したにすぎません。
公爵おお、この化けの皮をかぶった狐の仔め! その毛皮に
時が白いごま塩を振りまくころには、おまえはどんな悪党になっている?
それとも、その悪知恵の育ちがあまりに早く、
自分で仕掛けた足払いで、自分がひっくり返るか?
さらばだ、あの方はもらっていくがいい。だが、その足の向け先は、
おまえとわたしが二度と出会わぬ場所にしろ。
ヴァイオラ公爵様、誓って申し上げます——
オリヴィアああ、誓わないで!
怖くてたまらないでしょうけど、せめて信義のかけらだけはお守りなさい。
サー・アンドルー後生だから、外科の先生を! 今すぐサー・トービーのところへ、どなたか差し向けてくだされ。
オリヴィアどうしたのです?
サー・アンドルーやつはわたしの頭をまっぷたつにかち割って、サー・トービーの脳天にも血まみれの傷をこしらえてくれました。後生ですから、お助けを! 四十ポンド出しても、家にいたかったですよ。
オリヴィア誰がそんなことを、サー・アンドルー?
サー・アンドルー伯爵お付きの若い衆で、シザーリオとかいうやつです。腰抜けだと思っていたら、とんだ悪魔の権化……いや、権外でしたよ。
公爵わたしの小姓の、シザーリオが?
サー・アンドルーひえっ、命拾いの神様、当人がここに! あなたはわけもなくわたしの頭を割りましたな。わたしのしたことは、サー・トービーにけしかけられてしたことですぞ。
ヴァイオラなぜわたしに言うのです? わたしはあなたを傷つけてなどいません。
あなたがわけもなく、わたしに剣を抜いたのでしょう。
わたしは丁寧にお話をして、傷ひとつつけませんでした。
サー・アンドルー血まみれの脳天が傷のうちなら、あなたはわたしを傷つけましたぞ。あなたには血まみれの脳天なんぞ、屁でもないとお見えだがね。
サー・アンドルーほら、サー・トービーが足を引きずってやって来た。もっと聞けますぞ。あの人が酒さえ入っていなければ、あなたなんぞ、あんなものでは済まされずに、くすぐり倒されていたはずだ。
公爵どうなさった、騎士どの! ご様子は?
サー・トービーどうもこうもあるか。斬られたよ、それで話は終わりだ。——飲んだくれどの、外科のディック先生を見なかったか、飲んだくれどの?
道化それが、あの先生、酔い潰れておいでで、サー・トービー、一時間も前から。朝の八時には、もう目が据わっておられましたよ。
サー・トービーそれなら、あの男はごろつきの、のろまな異教徒踊りだ。飲んだくれのごろつきは大嫌いよ。
オリヴィア連れてお行き! 誰がこの人たちを、こんなずたずたにしたのです?
サー・アンドルーお助けしましょう、サー・トービー。傷の手当ては、ご一緒にしてもらいましょうぞ。
サー・トービーおまえが助けるだと? この驢馬頭の、まぬけの、悪党め。顔の削げた悪党、この間抜け鳥め!
オリヴィア床に運んで、傷の手当てをしてやりなさい。
セバスチャン申し訳ありません、姫、あなたのご親族を傷つけてしまいました。
ですが、たとえ血を分けた兄弟であったとしても、
分別と身の安全のためには、ああするほかなかったのです。
見知らぬ人を見る目で、わたしをご覧になっている。それで分かります、
気を悪くなさったのですね。
お赦しください、いとしい人、つい先ほど交わし合った、
あの誓いに免じて。
公爵同じ顔、同じ声、同じ装いで、人間はふたり——
天然の魔法の鏡だ、実在して、実在しない!
セバスチャンアントーニオ、おお、なつかしいアントーニオ!
あなたを見失ってからの時間の、なんという責め苦、
なんという拷問だったことか!
アントーニオあなたは、セバスチャンか?
セバスチャンそれを疑われるのですか、アントーニオ?
アントーニオどうやって、自分をふたつに割りなさった?
林檎をまっぷたつに割っても、このふたりほど
瓜ふたつにはなりますまい。どちらがセバスチャンです?
オリヴィアなんという不思議!
セバスチャンわたしが、あそこに立っているのか? わたしに兄弟はいなかった。
それに、わたしの性分には、ここにも、どこにでも同時にいるという
神通力は具わっていない。妹はいたが、
盲た波と逆巻くうねりが、呑み込んでしまった。
お慈悲だ、教えてくれ、あなたはわたしの何にあたる方です?
お国は? 名前は? ご両親は?
ヴァイオラ国はメサリン。父はセバスチャン。
兄も、そういうセバスチャンでした。
そういう装いのまま、兄は水の墓へ参りました。
もし霊魂が、姿も衣服もそっくり借りられるものなら、
あなたは、わたしたちを怖がらせに来た霊です。
セバスチャン霊であることは確かだが、
母の胎から持って出た、この生身の肉を
着たままの霊だよ。
あなたが女なら——ほかは何もかもぴたり合うのだから——
その頬にわたしの涙を落として、言うところだ、
「三重にようこそ、溺れたはずのヴァイオラ!」と。
ヴァイオラわたしの父は、額に黒子がありました。
セバスチャンわたしの父にもあった。
ヴァイオラそして亡くなったのは、ヴァイオラが生まれてから
十三年を数えた、その日でした。
セバスチャンおお、その記憶なら、わたしの魂に生き生きと残っている!
父がこの世の勤めを終えたのは、確かに、
妹が十三歳になった、その日だった。
ヴァイオラわたしたちふたりの幸せを妨げるものが、
わたしのこの、男を装った借り着だけでしたら、
抱きしめるのは待ってください——場所、時、巡り合わせの
事情のひとつひとつが、ぴたりと重なり合って、
わたしがヴァイオラだと証明されるまでは。その証拠立てには、
この町のある船長のところへお連れします。
そこにわたしの乙女の衣装が預けてあるのです。あの方の親切な助けで、
わたしは命を救われ、この気高い公爵様にお仕えする身となりました。
それからのわたしの身の上に起こったことはすべて、
この姫君と、この公爵様の間のことでした。
セバスチャン(オリヴィアに)そういうわけだったのです、姫、あなたは人違いをなさった。
だが、自然はその歪みを、あるべき筋へ引き戻してくれました。
あなたは危うく、生娘と契りを結ぶところだった。
いや、その点では、命に懸けて、騙されてはおられませんよ。
あなたが婚約なさった相手は、生娘にして男ですからね。
公爵呆気に取られなさるな。この男の血筋は、まことに高貴だ。
これが本当なら——どうやら、この魔法の鏡は真実らしい——
わたしにも、このめでたい難破の分け前があるはずだな。
公爵少年、おまえは千回もわたしに言ったな、
わたしを愛するほどには、どんな女も決して愛せません、と。
ヴァイオラその言葉のすべてを、もう一度、重ねて誓います。
そしてその誓いのすべてを、魂の中で真実に守ります——
あの天球が、昼と夜を分かつ火を
守り抱いているのと同じほど、確かに。
公爵その手をわたしに。
そして、女の衣装のおまえを見せてくれ。
ヴァイオラわたしを最初に岸へ上げてくださった船長が、
わたしの乙女の衣を預かっています。その方は今、ある訴えのかどで
牢に入れられています。訴え主はマルヴォーリオという、
姫君にお仕えする、身分ある家来の方です。
オリヴィアすぐに釈放させましょう。マルヴォーリオをこれへ。
——ああ、でも、今思い出しました、
気の毒に、あの者は、ひどく乱心しているそうでした。
オリヴィアわたし自身の気も遠くなるような騒ぎのおかげで、
あの者の乱心のことを、記憶からすっかり追い出していました。
あの者の様子はどうです?
道化実のところ、お嬢様、あの男、ベルゼブブの悪魔を棒の先で突っ張っておりますよ、あの身の上の男にできるかぎりの奮闘ぶりで。ここにお嬢様宛ての手紙を書きました。今朝お渡しすべきところでしたが、狂人の書簡は福音書ではございませんからね、いつお届けしようと大差はないというわけで。
オリヴィア開けて、読んでおやり。
道化それでは、たっぷり教化していただきましょう、阿呆が狂人の言葉を朗読つかまつります。
道化「神かけて、お嬢様」——
オリヴィアどうしたの! 気でも違ったの?
道化いいえ、お嬢様、狂気を読み上げているだけで。お嬢様が、あるべき姿でお聞きになりたければ、この声色をお許しくださいませんと。
オリヴィアお願いだから、正気のまともな読み方でお読み。
道化そうしておりますとも、マドンナ。あの男の正気をまともに読めば、こう読むほかないのでございます。ですから、ご斟酌の上、わが姫君、お耳をお貸しなされ。
オリヴィア(ファビアンに)おまえが読みなさい。
ファビアン(読む)「神かけて、お嬢様、あなたはわたしに不当な仕打ちをなさいました。世間はそれを知ることになりましょう。あなたはわたしを暗闇に閉じ込め、酔いどれのご親族に監督をお任せになりましたが、わたしの五感は、あなた様と同じだけ健在です。わたしの手元には、あの装いをせよとわたしをそそのかした、あなた様ご自身のお手紙がございます。それがあれば、わたしの正しさを立てるか、あなた様に大恥をおかかせするか、どちらでもできること疑いなし。わたしをどうお思いくださろうとご勝手に。臣下の礼をいささか脇に置いて、受けた傷に物を言わせております。
狂人あつかいされたマルヴォーリオ」
オリヴィアこれを書いたのは、あの者ですか?
道化さようで、お嬢様。
公爵これは、あまり乱心の味がせんな。
オリヴィア釈放しておやり、ファビアン。ここへ連れてきなさい。
オリヴィア公爵様、よろしければ、この一件をとくとお考え直しの上、
わたしを妻ならぬ、義理の姉妹とお思いくださいますなら、
同じ日にふたつの縁組みの式を挙げましょう——お許しくださるなら、
ここ、わたしの家で、費用もわたし持ちで。
公爵姫、そのお申し出、喜んでお受けしよう。
公爵おまえの主人は、おまえに暇を出すぞ。これまでの奉公ぶり——
女の身にはあまりに不似合いな、
柔らかく優しい育ちには、あまりに不釣り合いな奉公の礼に、
そして、長らくわたしを主人と呼び続けてくれた誼みに、
さあ、わたしの手を。今この時からおまえは、
主人の女主人だ。
オリヴィア妹ですって!——ええ、あなたがその人だわ。
公爵これが、あの狂人か?
オリヴィアええ、公爵様、この者です。
どうしたのです、マルヴォーリオ!
マルヴォーリオお嬢様、あなたはわたしに、ひどい仕打ちをなさいました、
世間に知れ渡るほどの仕打ちを。
オリヴィアわたしが、マルヴォーリオ? いいえ。
マルヴォーリオなさいました、お嬢様。どうか、この手紙をとくとご覧ください。
これがあなた様のお手でないとは、よもや言わせません。
書けるものなら、この筆跡と、この言い回しを外して書いてご覧なさい。
これはわたしの封印でも、わたしの趣向でもないと言ってご覧なさい。
どれひとつ、おっしゃれないはず。ならば、お認めの上、
慎みある名誉にかけて、お聞かせください、
なぜあれほど、あからさまなご寵愛のしるしをくださったのです——
微笑みを絶やさず、十字の靴下留めで参上せよ、
黄色の靴下をはき、サー・トービーと
軽輩の者どもには、しかめ面で当たれ、と。
そして、従順な望みを抱いて、その言いつけどおりにしたわたしを、
なぜ、監禁されるにまかせたのです——
暗い部屋に閉じ込められ、司祭の見舞いを受けさせられ、
かつて悪ふざけの餌食になった中でも、飛び切りの
物笑いの間抜けに仕立てられて? なぜです、お聞かせください。
オリヴィアああ、マルヴォーリオ、これはわたしの筆跡ではありません。
確かに、よく似た文字であることは認めますけれど、
どこからどう見ても、これはマライアの手です。
それに、今にして思えば、おまえが乱心したと
最初に言ってきたのも、あの者でした。そこへおまえが、にこにこ顔で、
この手紙の中であらかじめおまえに割り振られた、
その形で現れたという次第。どうか、気を鎮めておくれ。
この悪だくみは、あまりにもむごく、おまえをやり込めました。
けれど、その筋書きと仕掛け人が分かった暁には、
おまえ自身の訴えの、原告と裁判官を、
おまえひとりで務めさせてあげましょう。
ファビアンお嬢様、わたしに言わせてください。
そして、いさかいも喧嘩沙汰も、これから先、
この幸せなひとときの調べを汚しませんように——
わたしはただただ驚き入っております。その願いを込めて、
包み隠さず白状いたします。わたしとトービー様が、
このマルヴォーリオへの仕掛けをこしらえました。
かねてより、頑固で無礼な振る舞いの数々を、
この男に含むところがあったからです。手紙はマライアが、
サー・トービーのたっての望みで書きました。
その褒美に、トービー様はマライアと結婚なさいました。
その後の仕打ちの、悪ふざけ半分の意地悪ぶりは、
仕返しよりも、むしろ笑いを誘うのが道理でしょう——
双方の受けた痛手を、公平な秤で
量っていただけますなら。
オリヴィアああ、気の毒に、なんという担がれようだったの!
道化なあに、「あるものは偉大に生まれ、あるものは偉大を勝ち取り、そしてあるものは偉大を投げつけられる」というわけで。わたしもこの幕間劇のひと役でございましたよ——サー・トパスという役をね。だが、それはどうでもよろしい。「神かけて、阿呆、わたしは狂ってなどおらん」——ですが、覚えておいでですかな? 「お嬢様が、なぜあのような知恵の涸れたごろつきをお喜びになります? お笑いにならなければ、猿ぐつわも同然の男」——こうして時のぐるぐる回る独楽が、めいめいの報いを運んでくるという寸法で。
マルヴォーリオおまえたち一味の全員に、必ず仕返しをしてやるぞ。
オリヴィアあの者は、本当に、あまりにもひどくコケにされました。
公爵追いかけて、仲直りを頼み込んでくれ。
あの男から、まだ船長の話を聞いておらんのだ。
それが分かって、黄金の時が寄り合うたら、
われらのいとしい魂たちの、厳かな結びの式を挙げよう。
それまでの間、優しい義妹どの、われらはここを離れませんぞ。
シザーリオ、来い——
おまえが男である間は、その名で呼ぼう。
だが、別の衣装のおまえを見たそのときは、
オーシーノの妻にして、その恋心の女王だ。
道化(歌う。)
道化わたしがほんの小僧っ子だったころ、
ヘイ、ホー、風と雨、
馬鹿をやっても、おもちゃで済んだ、
雨は毎日降るのだから。
ヘイ、ホー、風と雨、
悪党、盗人には門を閉ざされた、
雨は毎日降るのだから。
ヘイ、ホー、風と雨、
空威張りでは食えなかった、
雨は毎日降るのだから。
ヘイ、ホー、風と雨、
飲み仲間との酔いどれ頭、
雨は毎日降るのだから。
ヘイ、ホー、風と雨、
だが、それはどうでもよいことで、芝居はこれでおしまいです、
明日からも毎日、皆様のお気に召すよう努めます。
