公爵音楽を聴かせてくれ。——皆、おはよう。——
さあ、シザーリオ、あの歌の一節を頼む、
昨夜聴いた、あの古めかしい昔の歌だ。
あれを聴くと、わたしの恋の苦しみがずいぶん軽くなる気がした、
この目まぐるしく浮ついたご時世の、
軽薄な節回しや、気取って練り上げた文句などよりずっとな。
さあ、一節だけでいい。
キューリオ恐れながら、歌います者が、ここにおりません。
公爵誰だったのだ?
キューリオ道化のフェステでございます、公爵様。オリヴィア様の父君が、たいそうお気に召しておられた阿呆で。屋敷のどこかにおりましょう。
公爵探して参れ。その間、あの曲を弾いていてくれ。
公爵こちらへ来い、少年。おまえもいつか恋をしたら、
その甘い痛みの中で、わたしを思い出せ。
今のわたしの姿こそ、まことの恋人たちの姿なのだ——
何につけても落ち着かず、そわそわと定まらない、
ただひとつ、恋するその人の面影だけは、
変わらず心に据えたままでな。この曲をどう思う?
ヴァイオラ恋の神が玉座を構える、その場所そのものに、
こだまを返す調べです。
公爵見事な物言いをする。
命を賭けてもいい、おまえは若いが、その目はもう、
どこかの好い人の顔に、留まったことがあるはずだ。
そうであろう、少年?
ヴァイオラ少しばかり、恐れながら。
公爵どんな女だ?
ヴァイオラあなた様に似たお人です。
公爵それでは、おまえにはもったいなくないな。歳はいくつだ、正直なところ?
ヴァイオラあなた様ほどのお歳です、公爵様。
公爵それは、いくらなんでも年上すぎるぞ。女はいつでも、
自分より年上の男を選ぶものだ。そうしてこそ夫に馴染み、
夫の心の中で、釣り合いよく落ち着いていられる。
というのもな、少年、われら男は自分でどう自惚れようと、
その恋心は、女のものよりも浮ついて、定まらず、
焦がれやすく、揺れやすく、失せやすく、飽きやすいのだ。
ヴァイオラごもっともです、公爵様。
公爵だから、おまえの恋人は、おまえより若い女にしておけ。
さもないと、恋の弓は張りを保てんぞ。
女とは薔薇のようなもの。その美しい花は、
開いたと思えば、その同じ時に散り始めるのだからな。
ヴァイオラまことに、そのとおりのもの。ああ、そのとおりであることが悲しい——
完全へと花開く、まさにそのときに死んでいくとは!
公爵おお、来たか。さあ、昨夜の歌を頼む。
よく聴け、シザーリオ。古い、飾り気のない歌だ。
日なたで糸を紡ぐ女たちや、編み物をする女たち、
骨の梭でレースを編む、屈託のない娘たちが、
歌い慣わしてきた歌でな。他愛のない真実そのもので、
恋の無邪気さを歌い上げている、
古き良き時代さながらにな。
道化よろしゅうございますか?
公爵ああ、頼む、歌ってくれ。
道化来ておくれ、来ておくれ、死よ、
悲しみの糸杉の棺に、わたしを納めておくれ。
飛んでお行き、飛んでお行き、息よ。
わたしは美しくも残酷な娘に殺された身。
白い経帷子に、イチイの小枝を挿して、
おお、支度しておくれ!
この死の役回りを、わたしほどまことを尽くして
務めた者はないのだから。
花はいらない、甘い花は一輪も、
黒い柩の上に撒いてくれるな。
友もいらない、ひとりの友も、
骨を投げ込むこの哀れな亡骸に、挨拶してくれるな。
千々《ちぢ》のため息、万のため息を省くため、
おお、わたしを横たえておくれ、
悲しむまことの恋人が、決して墓を見つけられず、
そこで泣くこともない場所に!
公爵ほら、骨折り賃だ。
道化骨折りではございません、旦那様。歌うのは楽しみでございますから。
公爵それなら、楽しみの代金を払おう。
道化ごもっとも。楽しみの勘定は、遅かれ早かれ払わされるものでございますからな。
公爵もう下がってくれ、こちらも下がらせてもらう。
道化それでは、憂鬱の神様のご加護がありますように。それから、仕立屋にはあなた様の胴着を玉虫色のタフタで作らせなさいませ。あなた様のお心は、まさに蛋白石でございますからね。あなた様ほど心の据わったお方は、ぜひ船で海へお出しすべきで。そうすれば、商売の種はなんでもござれ、目当ての港はどこでもござれ。何もないところから上々の航海をこしらえるのは、いつだってそれと決まっておりますので。ごきげんよう。
公爵ほかの者も皆、下がってくれ。
公爵もう一度だ、シザーリオ、
あの至高の残酷なお方のところへ行ってくれ。
伝えるのだ——わたしの愛は、この世のなにより気高く、
薄汚れた土地の広さなど、値打ちに数えていない。
運命があの方に授けた財産などは、
運命と同じくらい軽いものと思っている。
わたしの魂を惹きつけるのは、あの奇跡——
自然があの方を飾り立てた、宝石の女王たるあの美しさなのだ、と。
ヴァイオラですが、あの方があなた様を愛せないとおっしゃったら?
公爵その答えは、受け取るわけにいかん。
ヴァイオラいいえ、受け取っていただかなくては。
たとえば、どこかの姫君が——実際いるかもしれませんが——
あなた様を恋い慕って、その胸の痛みは、
あなた様のオリヴィア様へのそれと同じだとします。あなた様は愛せない。
そうお告げになる。それなら姫君のほうも、その答えを受け取るほかないのでは?
公爵女の細腕に、
これほど強い激情の鼓動が耐えられるものか、
恋がわたしの心臓に打ちつけるこの鼓動が。女の心臓に、
これほどの量を納める大きさはない。保つ力がないのだ。
ああ、女の恋など、食欲と呼ぶがふさわしい——
肝ノ臓から起こる情ではなく、舌先だけの好みだから、
食べ飽きて、もたれて、嫌気がさす。
だがわたしの恋は、海そのもののように飢えていて、
海と同じだけ消化できる。比べてくれるな、
女がわたしに向けられる恋と、
わたしがオリヴィアに捧げる恋とを。
ヴァイオラええ、ですが、わたしは知っています——
公爵何を知っている?
ヴァイオラ女が男に捧げる恋の深さを、知りすぎるほどに。
まことのところ、女の心は、わたしたち男と同じだけ真実なのです。
わたしの父にひとりの娘がおりまして、ある男の方を愛しました——
ちょうど、たとえば、わたしが女でしたら、
あなた様をお慕いしたであろうほどに。
公爵それで、その娘の身の上は?
ヴァイオラ白紙です、公爵様。娘は想いを決して打ち明けず、
その秘め事に、つぼみに巣くう虫さながら、
薔薇色の頬を蝕むにまかせました。想いに痩せ細り、
青ざめた、黄ばんだ憂鬱を抱えて、
墓碑にすわる「忍耐」の像のように、
悲しみに微笑みかけて座っておりました。これがまことの恋でなくて何でしょう?
わたしたち男は、多くを語り、多くを誓います。ですが実のところ、
見せかけばかりが心を上回る。誓いはいつでも大きくて、
恋そのものは小さいと、決まっているのです。
公爵それで、おまえの妹は、その恋ゆえに死んだのか、少年?
ヴァイオラわたしの父の家の娘は、今やわたしがそのすべて、
息子たちのすべてでもあります——いえ、それも定かではないのですが。
公爵様、あの姫君のところへ参りましょうか?
公爵ああ、それが肝心だった。
急いで行ってくれ。この宝石をお渡しして、伝えるのだ——
わたしの恋は退きもせねば、拒みも受け付けん、とな。
